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代替肉とは? 注目の理由やメリット、具体的事例、今後の展望を解説

代替肉とは? 注目の理由やメリット、具体的事例、今後の展望を解説
代替肉のメリット・デメリットや今後の影響(デザイン:増渕舞)
環境活動家/後藤美里

代替肉とは、豆や小麦たんぱくなどの植物性原料から作る、肉のような食べ物です。二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス削減、人々の多様性への対応にも役立ち、世界中が注目しています。この記事では、なぜ代替肉が注目されているのかを整理しつつ、メリット・デメリット、事例などを紹介していきます。

art_00345_著者_後藤美里さん
後藤美里(ごとう・みさと)
環境活動家。環境問題を解決すべく2013年に啓蒙(けいもう)活動をスタート。国内外をノマドしながら、ゼロウェイストなイベントやワークショップを開催。環境問題やヴィーガニズムについての記事を中心に執筆している。

1.代替肉とは

代替肉とは、植物性原料から作られた「肉のような食べ物」のことです。

最近では食品加工技術が発達してきており、豆類や小麦たんぱくなどを主原料としたものが次々誕生しています。アレンジ無限大なひき肉タイプや、育ち盛りも大満足なハンバーグなど、その種類は多種多様です。

世界各地で商品開発に乗り出す企業が出てきており、今、最も目が離せない分野の一つとなっています。

(1)代替肉の市場規模

代替肉の歴史は古く、その多くは無益な殺生を禁ずる宗教の戒律と関係があります。日本でも、禅宗の教えとともに精進料理が広まり、お麩(ふ)やがんもどきなどが昔から食べられてきました。近頃では健康や環境問題の改善を理由に菜食メニューを選択する人が増えており、市場は右肩上がりで成長しています。

調査会社シード・プランニングが2020年に公表した調査によると、2030年までに世界の市場規模は2020年の8倍の886億ドルに達し、日本でも同じ頃には2倍超の780億円に成長すると予測されています。

身近なものと比較すると、音楽配信のサブスクの現在の市場規模が744億円、レトルトご飯で800億円前後とされていますから、今後「身の回りの全員ではないが、利用する人は頻繁に利用する」くらいの規模感になっていくでしょう。

(2)代替肉はなぜ注目されているのか

このように代替肉が注目されているのは、主に次の理由からです。

①畜産起因の温室効果ガスが削減できるため

家畜を育成するには、餌となる豆や穀物なども育てなければいけません。しかし、餌用の畑を際限なく拡大したり、個体の数をニーズに合わせて増やしたりしてしまうと、地球に大きな負担がかかります。

世界の温室効果ガス排出量のうち、およそ5.9%は家畜や堆肥(たいひ)が原因です(参考:4 Charts Explain Greenhouse Gas Emissions by Countries and Sectors│World Resources Institute)。

牛や羊などから出るげっぷやおならにはメタンガスが含まれ、その温室効果は二酸化炭素(CO2)の25倍とも言われています。温暖化の人為的原因を取り除くには、メタンガスの発生量を減らすことも視野に入れなくてはいけません。そのため、そもそも家畜を飼うことなく生産できる代替肉が注目されているのです。

②人々の健康志向が高まっているため

昨今のパンデミックを受け、日々の生活や食事の内容を見つめ直すケースが増えてきました。在宅勤務で運動不足気味にもかかわらず、普段と同じ食べ方を続け、体調や体型に変化が表れた人が増えたからでしょう。

そこで注目されている食材の一つが代替肉です。後ほど詳しく説明しますが、大豆が原料のものなら、コレステロールがゼロな上、豚肉と比べてカロリーが約半分です。

多くの大手カフェチェーンやファストフードショップでは、すでにプラントベースドメニューを取り入れています。ささっと食べられて健康管理にも役立つことから、人気は上々です。

2.代替肉のメリット・デメリット

食品業界をにぎわす話題の代替肉ですが、普段の食事やビジネスに採り入れることに、何か利点や注意点はあるのでしょうか。メリット・デメリットをそれぞれご紹介します。

(1)代替肉のメリット

①健康管理に役立つ

代替肉は、大豆が原料のものなら、コレステロールがゼロです。また、豚肉と比べてカロリーが約半分となっています。豚ミンチでしたら100gで235kcal近くありますが、プラントベースドのものであれば100kcal程度に抑えられます。もし、その差の130kcalを運動で燃焼するなら、体重50kgの人で30分ジョギングする必要があります。

トレーニングを習慣づけるのは容易ではありません。ですが、食事は毎日するものです。カロリーコントロールを簡単に日常に採り入れられるのが、代替肉のメリットのひとつです。

②持続可能な食料供給につながる

代替肉の主な原料である大豆やエンドウ豆は、北海道から沖縄まで全国至る所で栽培可能です。耕作放棄地で無農薬栽培したり、今まで規格外品として廃棄していた豆を活用したりすれば、サステイナブルな食料供給につながります。

③今まで逃していた顧客にリーチできる

代替肉は、企業に対してもメリットがあります。特に大きいのが潜在顧客へのリーチです。動物の肉が好きだったけれど、年齢とともに脂っこいものが苦手になってしまった人は少なくありません。植物性の肉をアピールすることで、そうした人たちをファンとして取り込むことも可能です。

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モスバーガーが2021年9月に売り出した「グリーンバーガー<テリヤキ>」。大豆由来の植物性たんぱくをベースとした「ソイパティ」を使っている=2021年11月29日、東京都新宿区

(2)代替肉のデメリット

①ビタミンB12を摂取できない場合がある

ほとんどの植物にはビタミンB12が含まれていません。これは菜食主義者にとって永遠の悩みです。多くの海外製品にはビタミンB12が添加されていますが、栄養のためにサプリメントを飲み続けるのは、正直言って面倒です。

もちろん、添加物の摂取は絶対に避けたいという人たちも大勢います。毎日の食事から自然に摂取できるようになれば、代替肉を選ばない理由は減っていくでしょう。

②製造プロセス次第では余計なCO2が発生する

中国で育てたエンドウ豆をアメリカに送って加工し、それを日本に輸入すると、輸送ごとにCO2が排出されてしまいます。そのため、今、代替肉の商品開発をするときは、温室効果ガスの排出を抑えるために、国産ないし近隣諸国の材料を用いることが求められています。

3.代替肉の具体的事例

大手メーカーからローカルのお豆腐屋さんに至るまで、すでに多くの企業が代替肉の開発を始めています。発展度合いは目を見張るものがあり、投資家たちも情報集めに意欲的です。ここでは、参考になる国内外の先例を二つずつ紹介します。

(1)海外の事例

①Odd Burger

Odd Burgerは、世界で初めてヴィーガンファストフードチェーンとして上場を果たしました。

同社は、2017年にカナダのオンタリオ州にヴィーガンファストフードレストランを立ち上げ、ヘルシーなハンバーガーにかぶりつきたい顧客の心をつかみ、急成長しています。パティはひよこ豆やセイタン(グルテンミート)を使用。余計な材料を使わず、シンプルさにこだわっています。

今後は西海岸のブリティッシュコロンビア州、内陸部にあるアルバータ州に36店舗を展開していく予定です。

②IKEA

スウェーデン発大手家具チェーン「IKEA」のレストランでは、たくさんのプラントベースドメニューを取りそろえています。ミートボールやホットドッグなど、大人も子供も楽しめる品ぞろえが人気です。筆者も食べたことがありますが、しっかり味がついていてボリュームも十分あり、巨大な店舗の中を歩き回ってもおなかはそこまで減りませんでした。

日本の店舗でも購入できますので、味わってみてはいかがでしょうか(商品によっては乳・卵などが含まれています)。

(2)日本の事例

①Good Good Mart

Good Good Martは、えりすぐりのプラントベースドフードが購入できるオンラインショップです。パスタソース「たかきびと香味野菜が出会ったドキドキボロネーゼ」には、ぷちっとした弾力のたかきびがぜいたくに使われており、ひき肉さながらの食べ応えが好評です。

たかきびはソルガムとも呼ばれ、マクロビレストランでよく見かけられます。満腹感を味わえるレトルト食品は、忙しい現代人の強い味方です。買いだめしておけば、いざという時も安心ですね。

②株式会社タナカショク

高知県のお豆腐屋さんタナカショクは、素材にこだわった豆腐ジャーキーを販売しています。グルテンフリーのしょうゆや、ヴィーガン対応の砂糖を使ったものもあり、個々のニーズに合わせて買うことができます。

山椒(さんしょう)やハバネロ味などのおつまみ系や、業務用サイズの非常食バージョンも取り扱っているので、色々なシーンで活躍しそうです。日持ちもしますから、食事に制限がある人のためにストックしておくと喜ばれるでしょう。

4.代替肉は今後どんな影響をもたらすか

すでにさまざまな場所で取り扱われている代替肉ですが、今後はどのような影響をもたらすでしょうか。個人・企業の場合にわけて、筆者の考えをご紹介します。

(1)個人の場合

代替肉の開発が進んでいくと食のバリアフリー化が加速し、個人個人の体調やバックグラウンドに合わせた食事が可能になります。

例えば、夏バテで脂っこいものがのどを通らなくても、植物性の肉ならあっさりしていて食べやすいです。それに、宗教により特定の食べ物を禁じられている方は、選べるメニューが増えて食生活が豊かになります。

「せっかく作ってくれたから」「断れないから」と言って、食べたくないものを無理やり口に詰め込む時代はもう終わりです。友達や家族の中で疎外感を感じることも減るでしょう。

代替肉があれば、自分を大事にしながら、皆と「ほぼ」同じメニューを食べられるようになるのです。

(2)企業の場合

代替肉の市場規模が大きくなっていることを見ると、とくに食品を扱う企業や飲食店などは、代替肉を使うか否か、という選択を迫られるときが来ることが予想されます。

その際、「うちは、これから動物性の肉を一切使わない、ヴィーガン専門店になる」と判断するお店もあるかもしれません。しかし、そんな英断はできない、と考えているお店が大半ではないでしょうか。

アメリカ発の菜食向け飲食店検索サイトHappyCowは、2007年の掲載数が545件だったのに対し、2022年4月時点では17万件超に達しました(参考:The Latest Stats│HappyCow)。このなかには「専門店じゃないけど、菜食にも対応している」というお店が多数含まれています。本格的なヴィーガンレストランに転換しなくても、十分時代についていけるということです。

ロンドンの中心部にあるバーガーキングの店舗でも、2022年4月上旬までの1ヶ月間、25種類ものプラントベースドメニューを試験導入しました。

選択肢が増えれば、より幅広い層の顧客に足を運んでもらえます。持続可能な経営をしていくために、まずは簡単なメニューから試してみてはいかがでしょうか。

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フードテックベンチャー・ネクストミーツの焼き肉用代替肉「NEXTカルビ2.0」=2021年11月29日、東京都新宿区

5.まだまだ代替肉の開発はこれから

代替肉には、メリットがある一方、デメリットもあります。とくに個人の場合、必要な栄養素がきちんと取れない可能性があることに注意しなければいけません。

言い換えれば、今後は、そうした個人のデメリットを解決する代替肉の開発が求められるでしょう。まだまだ成長途中の分野ですから、参入障壁は高くありません。市場がレッド・オーシャンになる前の今が、飛び込むチャンスなのではないでしょうか。

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