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【生物多様性】ライチョウを絶滅から救う「繁殖大作戦」を支えませんか 4月16日からクラファン開始

【生物多様性】ライチョウを絶滅から救う「繁殖大作戦」を支えませんか 4月16日からクラファン開始
日中、ボランティアに見守られながらケージの外で過ごすライチョウの親子=2021年7月11日、長野県の中央アルプス木曽駒ケ岳山頂付近
文:山岳ジャーナリスト/近藤幸夫 撮影:朝日新聞映像報道部次長/杉本康弘

近藤幸夫さん
近藤 幸夫(こんどう・ゆきお)
1959年生まれ。信州大学農学部を卒業後86年、朝日新聞に入社。初任地の富山支局で山岳取材をスタートし、南極や北極、ヒマラヤなど海外取材を多数経験。2022年1月、退社してフリーランスに。長野市在住。日本山岳会、日本ヒマラヤ協会に所属。
杉本康弘さん
杉本 康弘(すぎもと・やすひろ)
1975年生まれ。2003年、朝日新聞社に写真記者として入社。東京、大阪、札幌を経て2021年9月から現職。サッカー南アフリカW杯や東京五輪のほか、イラク・シリアで紛争や難民取材も経験した。現在は中央アルプスでのライチョウ復活事業を追いかける。

絶滅の恐れが高まっている国の特別天然記念物・ライチョウ。2019年から中央アルプス(長野県)で環境省による繁殖・復活作戦が進行中です。調査や保護には多額の費用がかかります。このため、指揮をとる中村浩志・信州大学名誉教授らがクラウドファンディング(CF)に踏み切ることになりました。シリーズ「ライチョウ復活大作戦」の番外編としてご紹介します。

増えた野生個体 費用も増大

2019年からスタートした環境省の「繁殖個体群復活作戦」。最終章となる2022年度は、動物園で繁殖したライチョウの野生復帰にチャレンジします。

4年目を迎えた取り組みは途中、波風こそ立ったものの順調に展開してきました。2021年は現地・中央アルプスでの自然繁殖に成功して野生個体が増え、生息域が広がりました。ですが、安定した繁殖集団をつくるには、一気に生息数を増やす必要があります。

CFで集めた資金は、現地でのケージ保護の拡大、広範囲な生息状況の調査などに使われます。ライチョウを守り復活させるために、多くの方の協力が必要です。どんな意義があるのか、あらためて解説します。

ライチョウの生態調査をする環境省の小林篤さん
ライチョウの生態調査をする環境省信越自然環境事務所の小林篤・生息地保護連携専門官(右=2021年4月21日、左=2020年10月31日、いずれも木曽駒ケ岳山頂付近)

CFを実施するのは、「一般財団法人 中村浩志国際鳥類研究所」(長野市)です。世界的なライチョウ研究者で、復活作戦の指揮を執る信州大名誉教授の中村浩志さんが理事長を務める組織です。復活作戦では、環境省から委託されてケージ保護や生息状況調査などの業務に取り組んでいます。

中村さんは、ライチョウに足輪を着けて個体識別をする調査で、生存率や寿命、社会構造などを次々と解明しました。また、木枠と金網で作ったケージで家族ごと保護する方法を編みだし、南アルプス・北岳周辺のライチョウを絶滅寸前から復活させました。中央アルプスの復活作戦でも、2021年に自然繁殖した5家族をケージ保護して守り抜きました。

2022年度は、現地で6家族のケージ保護を予定しています。また、8月上旬、茶臼山動物園(長野市)と那須どうぶつ王国(栃木県)の2施設で繁殖させた計5家族を、ヘリコプターで中央アルプスに移送。自然繁殖組の6家族を放鳥した後のケージに収容して、現地の環境に慣らしてから放鳥します。

ケージ保護は、雨風や天敵から守るため、夜間を中心にケージ内に家族を収容する方法ですが、日中は悪天でも家族をケージ外に出して自然環境の中で過ごさせます。この際、人がつきっきりで家族を見守ります。ケージが増えるごとに、人の数も予算も多くが必要になります。

夜間、ライチョウを保護するケージ
夜間、ライチョウを保護するケージ=2021年7月11日、木曽駒ケ岳山頂付近

ライチョウ関係の募金、過去に2件

これまで北アルプス・乗鞍岳から移送した3家族から増えた個体の生息地は、放鳥した木曽駒ヶ岳周辺(中央アルプス北部)にとどまっていました。しかし自然繁殖した個体は現在、より良いなわばりを求めて分散し、さらに生息域を広げているとみられます。

中村さんは「中央アルプス中部の空木岳周辺まで生息域が広がったのではないか」と考えており、春の大型連休以降に予定している生息状況調査を空木岳周辺まで実施したいとしています。

3000mに近い高山が連なる中央アルプスは、5月も残雪が残る厳しい自然環境です。空木岳周辺まで調査を広げれば、こちらの予算も増えます。中村さんは「環境省が組んだ予算だけでは十分ではない」と考え、CFによる資金調達を募ることにしました。

ライチョウの保護活動では、前例があります。2015年から動物園がライチョウの保護をする生息域外保全に取り組む富山市ファミリーパークが、CFで2000万円以上を集めて「ライチョウ基金」を設立しました。人工飼育のほか、シンポジウム開催などの資金に充てています。

また、長野県は2020年度、中村さんたちの復活作戦を支援する「ライチョウ保護スクラムプロジェクト」を立ち上げ、目標額270万円を大きく上回る482万円が集まりました。

日中、ボランティアに見守られながらケージの外で過ごすライチョウの親子
日中、ボランティアに見守られながらケージの外で過ごすライチョウの親子=2021年7月11日、木曽駒ケ岳山頂(撮影・朝日新聞)

返礼品には解説付き観察ツアーも

今回のCFは、募集期間が4月16日~7月5日、目標額は500万円です。信州の地域活性化につながる活動を支援する「CF信州」を利用します(会員登録が必要です)。

集まった資金に余裕が出た場合は、これまで保護・繁殖を実施していた南アルプスの北岳周辺と仙丈岳、北アルプスの乗鞍岳と焼岳、ライチョウの北限生息地の火打山と焼山(いずれも新潟県)の調査費などに充てる予定です。

このほか、温暖化の影響が著しい火打山で実施しているイネ科の植物の除去作業で不足する資金にも使いたいとしています。資金の使い道については、第三者を含めた検討会を設置して決めていく方針です。

返礼品は金額ごとに異なり、①5000円=ライチョウポストカードセット16枚②1万円=CF限定色☆MOKUタオル③3万円=CF限定デザイン☆mont-bell WIC.Tシャツなどです。

クラウドファンディングを募集するチラシ(画像をクリックすると拡大します)

クラウドファンディングを募集するチラシ

ユニークな返礼品としては、中村さんの「出張講演会」(法人・団体向け、50万円)、「中村浩志引率 プライベートライチョウ観察会」(100万円)が用意されています。観察会は、中央アルプス・木曽駒ケ岳か北アルプス・乗鞍岳で、中村さんと一緒にライチョウを観察するプライベートツアー。「登山の技術と体力のある方」という条件付きです。

寄付は、コンビニでの支払い、銀行振り込み(3万円まで)、クレジット決済から選べます。現金での支援も受け付けています。

プロジェクトの詳細や返礼品の写真などは、CF信州申し込みページ(募集期間中のみ)か、同研究所のウェブサイトでも確認できます。

問い合わせ
一般財団法人 中村浩志国際鳥類研究所
〒380-0934長野市中御所4-2第2中御所ビル3階
メール:lagous@hnbirdlabo.org
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