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日本の菜食文化を現代の視点でアップデートする<菜道> 東京のサステナブルな和食を味わう【2】

日本の菜食文化を現代の視点でアップデートする<菜道> 東京のサステナブルな和食を味わう【2】
4800円(税抜き)のディナーコース。ヴィーガンチーズのカプレーゼやバターナッツかぼちゃのロースト、畑のうな重、プリンなど、華やかな懐石風のコース仕立て=東京都目黒区、仙波理撮影
フードジャーナリスト/佐々木ひろこ

食を通じてサステナブル(持続可能)な未来を目指すレストランが、東京にも着実に増えてきています。和食の世界にも広がるこの動きを、フードジャーナリストの佐々木ひろこさんが3回シリーズで紹介します。

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佐々木ひろこ(ささき・ひろこ)
食やサステナビリティなどをテーマに長く執筆を続けるフードジャーナリスト。また東京・京都のトップシェフたちと共にサステナブルシーフードの啓発活動に取り組み、水産資源を維持し食文化を未来につなぐことをミッションに様々なプロジェクトを推進中。一般社団法人Chefs for the Blue代表理事。水産庁・水産政策審議会特別委員。

自由が丘に「世界1位」の名店

国連食糧農業機関(FAO)の2013年報告書によると、世界の温室効果ガス総排出量のうち、なんと約14.5%が畜産業に由来するのだそうです。水質汚染や森林伐採など、他にも工業型畜産が引き起こすさまざまな環境問題が指摘されていますが、では肉の消費をやめて魚に移行すればいいかというと、水産物も世界で94%(2017年)が限界まで利用されており簡単ではありません。

そうしたなか、宗教上の禁忌や動物愛護の目的だけでなく、サステナビリティの見地からプラントベース(植物性由来食材)の食を選ぶ人が世界中で増えています。

「HappyCow(ハッピーカウ)」は、世界180カ国から約17万軒のプラントベースレストランを紹介する著名なオンラインレストランガイドです。植物性の食を求める世界中の旅行者が、競ってアクセスするというこのガイドで2019年、東京・自由が丘の住宅街にひっそりと店を構える「菜道(さいどう)」が、ベスト・ヴィーガン・レストランとして世界1位を獲得しました。

「皆が同じものを食べて満足してもらえる店に」

シェフの楠本勝三さんは、フランス料理店での修業ののち、日本料理店などでさらに研鑽(けんさん)を重ねた料理人です。ご本人は菜食主義ではありませんが、宗教やライフスタイル、アレルギーなどさまざまな理由から食事に制限がある人も、一緒に食事を楽しむ場をつくりたい、と2018年にチーフシェフとして菜道を立ち上げました。

「普通食の方とベジタリアンのカップルが来ても、アレルギーや宗教上の禁忌がある人がグループに混じっていても、皆が同じものを食べて満足してもらえる店にしたかったんです。そういった食をつきつめていくと、結果的に環境負荷の低い穀物や野菜、きのこ類を使った料理になりました」

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菜道の楠本勝三シェフ。メニュー開発のため、営業時間以外もずっとキッチンにこもる日々ですが、「可能性が大きい分野。工夫が楽しい」と笑います=東京都目黒区、仙波理撮影

プラントベース志向といっても卵や乳製品は食べる人、それも食べない完全植物性食(ヴィーガン食)を求める人、さらにニンニクやニラ、タマネギなども避ける人など制約内容はさまざまですが、菜道の料理はそのすべてをクリアしています。「誰ひとり取り残さない」というSDGsの基本理念に通底しつつ、環境の面でもサステナブルな取り組みを実現しているのです。

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メインディッシュが選べるランチメニュー(2200円)。写真はヴィーガン玉子とうまみたっぷりのスープが人気のみそ齋麺。新作のヴィーガンチーズケーキも好評だそう=東京都目黒区、仙波理撮影

コクとうまみがポイント

肉や魚、乳製品などを使わずに満足感を生む料理に仕立てるには、さまざまなプラントベース素材を組み合わせ、ベースにコクとうまみをのせていくことが重要です。楠本さんは、シイタケをはじめさまざまな乾燥きのこの加工場に足を運び、細かい粉やクズなどそれまでは捨てられていた部分を商品化してもらい、たっぷりと料理に使うことで、食品ロスを減らしながら味わいに厚みのあるスープを生みだしました。

「他にも炒(い)り大豆を燻製(くんせい)にかけてみたり、いろんな干し野菜にひと手間かけたり。日本には古くからの菜食文化と始末の知恵があり、プラントベースのすばらしい素材や加工品がたくさんあります。僕たち料理人の仕事は、その宝物を見いだすことと、それを現代に見合うよう使い方をアップデートすることなんです」

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