SDGs ACTION!

「ひと」と「地球」の未来を描くレストラン<KIGI> 東京のサステナブルな和食を味わう【3】

「ひと」と「地球」の未来を描くレストラン<KIGI> 東京のサステナブルな和食を味わう【3】
千葉・印西の契約農家さん(右)を畑に訪ねたKIGIの中神則幸調理長=Innovation Design提供
フードジャーナリスト/佐々木ひろこ

食を通じてサステナブル(持続可能)な未来を目指すレストランが、東京にも着実に増えてきています。和食の世界にも広がるこの動きを、フードジャーナリストの佐々木ひろこさんが3回シリーズで紹介します。

art_00358_著者_佐々木ひろこさん
佐々木ひろこ(ささき・ひろこ)
食やサステナビリティなどをテーマに長く執筆を続けるフードジャーナリスト。また東京・京都のトップシェフたちと共にサステナブルシーフードの啓発活動に取り組み、水産資源を維持し食文化を未来につなぐことをミッションに様々なプロジェクトを推進中。一般社団法人Chefs for the Blue代表理事。水産庁・水産政策審議会特別委員。

農家との出会いで食品ロスを意識

レストランのサステナビリティへの取り組みを考えるうえで、言うまでもなく中核となるのは、食材の選び方や調達方法です。しかしそれにとどまらない多様なアクションを通じ、企業や事業としての「あり方」について考えを深めているレストランも生まれています。

東京・永田町のオフィス街に暖簾(のれん)を掲げる「KIGI」。運営企業である株式会社Innovation Designでは、社員全員が所属する「サステナブルデザイン室」が設けられています。こちらの室長を務める表秀明さんと、マネージャーの和田奈央さんのお二人を中心に、全社員一丸となって会社全体のサステナビリティを高めるためのさまざまな取り組みが2020年1月ごろから進められてきました。

それまで環境問題への志向はそれほど高くなかったというお二人ですが、あるとき市場に出せない野菜や果物をドライ加工する取り組みを行う農家さんと出会い、食品ロスという大きな社会問題を意識することになります。そしてその後、SDGsの開発目標をじっくり読んでみると、その中に食に関わる多くの社会問題が存在すると気づいたのだそうです。

全社員でSDGs勉強会

そこで店休日に、全社員で行う勉強会をスタートさせました。SDGsの17の目標を念頭に問いを多数設定し、スタッフ全員にリサーチとプレゼンテーションを課したのです。たとえば料理長には「なぜ森林破壊が問題なのか」、ウェディング担当者には「海洋プラスチック問題とは何か」。他のスタッフには「牛肉生産はどうして環境負荷が高いのか」や「再生可能エネルギーを使うべき理由は」など。

「さまざまな社会課題を自分ごととして考えられなければ、お客さまに自らの言葉で伝えることができません。発信がなければ社会課題の解決にもつながらないと思ったんです。スタッフは皆、私たちが思った以上に楽しみながら課題に取り組んでくれました」(表さん)

art_00360_本文_01
KIGIの店休日に、ダイニングルームを使って社員全員で取り組んだSDGs勉強会の様子=Innovation Design提供

新メニューの条件は「社会課題解決」

平均30歳というKIGIのチームには、その後大きな変化が見られたといいます。たとえばキッチンのスタッフはニンジンや大根の皮を捨てるのをやめると言い出し、ベジブロス(野菜の皮や切れ端、ヘタなどを使って作るだし)や漬物などに応用するレシピをつくりました。別のスタッフは社内のペットボトル使用禁止を呼びかけ、その後全員がマイボトルを持参するようになりました。

またKIGIの新メニュー提案は、必ず「社会課題解決につながっていること」が承認の条件だといいます。たとえば野菜がたっぷり使われた「規格外野菜のおばんざいセット」。契約農家には、自然が生む形だからと仕分けせず、とれた野菜は全部送ってもらいます。特に「規格外の野菜」をオーダーすることはないものの、あえてネーミングに組み込み、形など関係なくおいしいと食べ手に理解してもらうことで、食品ロス問題への気付きを促す狙いがあるそうです。

Innovation Designが掲げるビジョンは、「ひとと地球の未来を描く」。表さんは、「飲食業なのでやっぱり『おいしい』からスタートして、共感と対話を通じて思いを広げていきたいと思っています。この地球の未来をともに描く仲間を、ひとりでも多く増やせれば」と笑顔を見せました。

art_00360_本文_02
「規格外野菜のおばんざいセット」(3600円)。このような取り組みが認められ、持続可能なフードシステムを実現するための飲食店格付けプログラム「FOOD MADE GOOD」で2021年、三つ星を取得しています=Innovation Design提供

(※KIGIは2022年4月現在、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により休業中で、営業再開は2022年7月を予定しています)

この記事をシェア
関連記事