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ZEH(ゼッチ)とは? 定義や種類、メリット、補助金などを解説

ZEH(ゼッチ)とは? 定義や種類、メリット、補助金などを解説
ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギーハウス)とは?(デザイン:吉田咲雪)
エコビジネスライター/名古屋悟

2050年脱炭素(ゼロカーボン)化が国の目標とされるなか、これからの時代の住宅のあり方を示すものとして「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)、通称ゼッチ」が注目を集めています。この記事では、「ZEH」の定義やメリット、実現するための手法、利用できる補助金などをご紹介します。

著者_名古屋悟さん
名古屋悟(なごや・さとる)
2000年から2015年まで環境新聞社編集部に在籍。2016年に独立し、ECO SEED(屋号)を個人開業。オリジナルの電子版環境専門紙を配信しているほか、エコビジネスライターを肩書に各種媒体への執筆も行っている。

1.ZEHとは

「ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギーハウス)」とは、住宅で使う一次エネルギー(電気に変換される前の石炭や天然ガスなどのエネルギー資源)の年間消費量が、おおむねゼロの住宅のことです。

実際に一次エネルギーをまったく消費していないのではなく、断熱性能と省エネ性能を高めて消費量を減らしつつ、創エネ性能を高めて再生可能エネルギーを生み出し、それらを合わせることで消費量が実質ゼロ以下になっている住宅を指します。

ごく簡単に言えば、省エネ住宅の仲間ですが、「ZEH」と呼ばれるには厳しい基準をクリアする必要があることから、省エネ住宅の最上位モデルと考えるといいでしょう。

「ZEH」は、2008年ごろから、アメリカで「新しい省エネの形」として注目されています。

また、日本でも政府が2014年の第4次エネルギー基本計画で「2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」と打ち出しました。2018年の第5次エネルギー基本計画では、「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」と、より具体的な目標が掲げられました(参照:ZEHの普及促進に向けた政策動向と平成31年度の関連予算案 p.6│資源エネルギー庁)。

資源エネルギー庁によれば、こうした取り組みによって、2020年にハウスメーカーが新築した注文戸建住宅のうち、約56%が「ZEH」となっています(参照:ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について│資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」)。

(1)ZEHの基準

「ZEH」として認められるためには、国が寒冷地や温暖地などの地域に応じて定めている強化外皮基準を満たす(※)ほか、基準一次エネルギー消費量から20%以上の消費量を削減することが最低限求められています(参照:ZEHの定義(改定版)<戸建住宅>|資源エネルギー庁)。

※強化外皮基準を満たすには……
国内を1~8に区分して設定している地域の省エネルギー基準を満たした上で、住宅の内部から床、外壁、屋根、開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値であるUA値(外皮平均熱貫流率)を以下の値にする必要がある

● 1・2地域:0.4[W/m2K]以下
● 3地域:0.5[W/m2K] 以下
● 4~7地域:0.6[W/m2K]以下

これに再生可能エネルギーの導入(容量は問われません)や基準一次エネルギー消費量から削減したエネルギー消費量に応じて、「ZEH」の種類が区分されます。

(2)ZEHの種類

「ZEH」は、エネルギー消費量の削減割合などに応じて複数の種類があります。戸建て住宅に使われる「ZEH」、集合住宅に使われる「ZEH-M」が基本になりますが、ここでは戸建て住宅に焦点を絞って紹介します。

戸建て住宅で用意されている種類は、「ZEH」のほか、「ZEH Oriented」「Nearly ZEH」「ZEH +」「Nearly ZEH +」の四つです。

「ZEH Oriented(ゼッチ オリエンテッド)」とは、都市部など土地が狭く太陽光発電などによる創エネが十分にできない場所を対象としたもので、断熱+省エネで20%以上の一次エネルギー消費量を削減した住宅に与えられる名称です。「ZEH」化に向いていない地域でも「ZEH」を指向して作られた住宅を指し、再生可能エネルギーによる発電設備を導入していなくても良い点がポイントになります。

「Nearly ZEH(ニアリー ゼッチ)」とは、「ZEH Oriented」の条件を満たした上で、太陽光発電など再生可能エネルギーによる創エネ設備を導入し、75%以上100%未満の一次エネルギー消費量を削減した住宅に与えられる名称です。

「ZEH」は、「ZEH Oriented」の条件を満たした上で、太陽光発電など再生可能エネルギーによる創エネ設備を導入し、100%以上の一次エネルギー消費量を削減した住宅に与えられるもので、完成形にあたります。

「ZEH +(ゼッチ プラス)」とは、「ZEH」の最上位モデルです。断熱と省エネによる省エネルギー率が25%以上、および創エネを含んだ省エネ率が100%以上であることに加え、以下の項目のうち、2項目以上クリアした住宅に与えられるものをいいます。

● 外皮性能のさらなる強化(外皮平均熱貫流率0.3~0.5[W/m2K])
● 住宅エネルギーマネジメントシステム(HEMS)で住宅内の冷暖房、給湯システムを制御する
● 電気自動車への充電設備を設置し、電気自動車でさらなる省エネを行う

「Nearly ZEH +(ニアリー ゼッチ プラス)」とは、太陽光発電などによる創エネが十分にできない寒冷地や日照率が低い地域、降雪量が多い地域を対象としたものです。断熱と省エネによる省エネルギー率が25%以上、および創エネを含んだ省エネ率が75%以上100%未満となっている住宅に与えられます。

2.ZEHのメリット・デメリット

「ZEH」にすると、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。順にご紹介します。

(1)ZEHのメリット

①日常生活での光熱費の削減

エネルギー使用量を極めて低く抑えているので、光熱費を安くできます。発電所の燃料となっている石油や天然ガスの価格が高騰する状況においては、電気料金の値上げも進みますが、「ZEH」ならそもそも電気の使用量を抑えているので、通常の住宅に比べると影響は少なくなります。

②快適性の維持

「ZEH」はエネルギー消費量を抑えながら室温を一定に保ちやすい構造になっているので、冷暖房を過剰に使うことなく快適な空間を作れます。

また、冬季には風呂場でヒートショック(急激な温度変化で起こる血圧の変動)による心臓発作が起きるなどの問題がありますが、「ZEH」は住宅全体を暖めているので、その防止効果も期待できます。

③非常時の備え

近年、大型化する台風や線状降水帯による記録的豪雨などの気象災害、規模の大きな地震などによる被害が頻発しています。こうした災害時には停電が発生することがありますが、太陽光発電などの創エネ設備や蓄電池を活用すれば、災害時でも電気が使える安心な生活を送れます。

④脱炭素化への貢献

「ZEH」には、社会全体として目指している脱炭素化に個人として貢献できるメリットもあります。これは個人では体感しにくいものですが、気象災害や、いずれは枯渇する石油やガスなどの化石燃料の問題を考えると、たとえ「大海の一滴」に思えたとしても、その役割は決して小さなものではないでしょう。

積水ハウスのZEH
積水ハウスのZEH。サッシも断熱効果が高いという=2016年、東京都渋谷区(撮影・朝日新聞)

(2)ZEHのデメリット

①初期費用はどうしても高くなる

建設の際にさまざまな省エネ設備、創エネ設備を導入する必要があることから、「ZEH」ではない住宅に比べると、設備導入費が高くなります。

②デザイン性などに制限

「ZEH」の基準を満たすため、外観や間取りが思い通りにならない場合があります。例えば、エネルギー消費効率を高めるために吹き抜けの空間が設けられない、太陽光発電パネルの発電効率を高めるために屋根の形状が希望通りにならない、などです。

3.ZEH関連の補助金

2021年10月に閣議決定されたエネルギー基本計画や地球温暖化対策計画で設定された政策目標に基づき、経済産業省、国土交通省、環境省が連携して住宅の省エネ化、省CO2化を図るため、補助金を用意しています。

新築でも改修でも申請でき、「ZEH」を新築する個人、購入する個人、既存戸建て住宅を「ZEH」改修する個人、建売住宅を販売するために「ZEH」を建設する法人が対象です。主な事業をご紹介します。

(1)戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業(環境省)

注文・建売住宅における「ZEH」や「ZEH +」を対象にした補助金ですが、寒冷地や低日射、多雪地域では「Nearly ZEH」での申請、都市部狭小地や多雪地域では「ZEH Oriented」での申請が可能です。また、寒冷、低日射、多雪地域では、「Nearly ZEH +」での申請もできます。「ZEH +」の場合、住宅エネルギーマネジメントシステム(HEMS)や電気自動車への充電など、二つ以上の要件を満たす必要があります。

補助額は「ZEH」で1戸あたり定額55万円、「ZEH +」で1戸あたり定額100万円です。2022年度の公募は、2022年5月13日(金)10:00から6月17日(金)17:00までとなっています。

詳細は、執行団体である一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)ウェブサイトをご覧ください。

(2)次世代ZEH+実証事業(経済産業省)

再エネなどの自家消費のさらなる拡大を目指した次世代「ZEH +」が対象の補助金です。住宅エネルギーマネジメントシステムや電気自動車への充電など二つ以上の要件に加え、蓄電システムや燃料電池などのシステムを加える必要があります。寒冷、低日射、多雪地域では、「Nearly ZEH +」での申請も可能です。

補助額は1戸あたり定額100万円。2022年度の公募は、2022年5月20日(金)から2022年8月12日(金)17:00までとなっています。

詳細は、執行団体である一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)ウェブサイトをご覧ください。

(3)地域型住宅グリーン化事業(国土交通省)

中小工務店などによる木造住宅の「ZEH」が対象の補助金です。寒冷地や低日射、多雪地域では「Nearly ZEH」での申請、都市部狭小地や多雪地域などでは「ZEH Oritented」での申請も可能です。

補助額は1戸あたり上限140万円で、2022年度の公募は6月6日まで受け付けています。

なお、上記3事業の概要がわかる3省連携事業パンフレットは、以下からダウンロード可能です。

(4)補助金を申請するときの留意点

補助金は「ZEH」を進める上で活用したい制度ですが、いくつか留意点があります。

①設計・建築業者が限定されている

補助金を受けるには、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)に登録されている「ZEHビルダー」あるいは「ZEHプランナー」が設計や建築、改修や販売を行うZEHである必要があります。

②補助金の交付は先着順

ZEH補助金は、先着順となっており、予算額に到達した時点で受け付け終了となるため、申請を希望する人は早めの対応が必要になります。

③補助金交付決定前に着手・購入してはいけない

新築注文住宅の場合は事前着手、新築建売住宅の場合は事前購入をしてしまうと、補助金の交付は受けられないので注意が必要です。

④完成後も注意が必要

補助金の交付要件として、補助金を受けてZEHを建設したり購入したりした場合、完成後にアンケートに定期的に回答することが含まれます。面倒だからといって回答しないと、補助金の返還を求められる場合があるので注意しましょう。

4.上乗せ補助も活用してZEH化を進めよう!

「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」および「次世代ZEH+実証事業」では、補助金の項目で紹介した定額補助に加え、次のようなシステムを導入すると上乗せでもらうことができます。

システム 補助金
蓄電システム(定置型) 2万円/kWh
(補助対象経費の1/3、または20万円のいずれか低い額を加算)
直交集成板(CLT) 90万円/戸
地中熱ヒートポンプ・システム 90万円/戸
PVTシステム(太陽光発電と太陽熱利用を組み合わせたシステム) 【液体式】65万円/戸もしくは80万円/戸
【空気式】90万円/戸
液体集熱式太陽熱利用温水システム 12万円/戸もしくは15万円/戸

例えば、土地があれば、ほぼ全国どこでも導入可能な地中熱を利用した冷暖房設備(地中熱ヒートポンプ・システム)は、夏は外気よりもかなり冷たく、冬は外気よりもかなり温かい地中の熱を冷暖房の熱源として利用して部屋を冷やしたり、暖めたりするので、冷暖房でのエネルギー使用量を大幅に削減することができます。

上乗せ補助を受けられるこれらの資材や設備は、単独で導入しようとすればそれなりに導入コストがかかるものですので、「ZEH」を目指すなら上乗せ補助を上手に活用して導入する価値があると思います。

地球温暖化に伴う気象災害が刻々と深刻化しつつあるなか、脱炭素化が喫緊の課題であることは間違いありません。それは住宅にも求められているものです。住宅を「ZEH」にするためには必要な設備に対する投資が避けられず、その分、費用が高くなってしまうため、収入に余裕がある人以外は選択しにくい部分があることは否めません。しかし、国は脱炭素化を促進するために「ZEH」化を支える充実した内容の補助金を用意しています。

戸建て住宅の建築や購入、改築を考えている人は、この補助金を活用できる今こそ、「ZEH」を手に入れる大きなチャンスですので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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