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難民とは?意味や世界・日本の取り組み、問題解決に向けてできること

難民とは?意味や世界・日本の取り組み、問題解決に向けてできること
難民の現状と課題、解決に向けてできること(デザイン:増渕舞)
qaraq代表/大橋希

ロシアのウクライナ侵攻により、「難民」という言葉をニュースで目にすることが多くなりました。しかし、難民問題は、決して今に始まったことではありません。難民とは誰のことを指すのか、難民問題に対して国内外でどのような取り組みが行われているのか紹介しながら、私たちができることを考えます。

大橋希さん
大橋希(おおはし・のぞみ)
2011年シリア内戦をきっかけに難民問題に関心を持つ。パソコンのリサイクルを通して日本の難民に仕事を生むピープルポート株式会社に2年間所属。2021年、中東ヨルダンに住む難民に仕事と生きがいを作ることを目的に、オリーブ食器の製造販売事業(MUUT/ミュート)と難民家庭へのホームステイ事業(MICHI STAY/ミチステイ)を運営する株式会社qaraq(カラク)を起業。

1.難民とは

難民とは、主に戦争被害や、宗教・政治的意見・性的指向などを理由とする迫害を避け、自分の身を守るために自国から逃れた人々です。

国際社会では、1951年に国連で採択された「難民条約」により難民の定義と各国の保護義務が定められていて、要約すると難民とは「人種、宗教、国籍、政治的意見などを理由に迫害を受けるおそれがあり、自国から逃げることを余儀なくされた人々」とされています。

難民条約の締約国は、この定義に沿って自国に逃げてきた難民を保護する義務があります。対して民間の難民支援団体は、難民の意味をより広く捉える傾向にあり、それぞれの解釈に沿って活動をしています。

(1)難民と国内避難民の違い

上述の通り難民は自国から出ていることが条件ですが、同じように紛争や迫害により自国の中で安全な地域に逃げた「国内避難民」も存在します。国内避難民のなかには国外への脱出を考えているものの、さまざまな理由で国境を越えることができない人たちも含まれます。

世界には国内避難民は難民の倍以上いるとされており、他国の支援が届きにくいなかで深刻な問題を抱えて暮らしています。

(2)難民の数と難民の受け入れ国

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所:United Nations High Commissioner for Refugees)が2021年6月に発表した年間統計報告書『UNHCRグローバル・トレンズ・レポート2020』によれば、世界には2000万人超の、故郷を追われた難民(UNHCR支援対象者)がいます(参照:数字で見る難民情勢(2020年)|UNHCR)。

また、難民の主要な出身国で一番多いのがシリア(670万人)で、ベネズエラ(400万人)、アフガニスタン(260万人)、南スーダン(220万人)と続き、上位5カ国が難民の約70%を占めています。また、受け入れ国の上位はトルコ(370万人)、コロンビア(170万人)、パキスタン(140万人)、ウガンダ(140万人)であり、それぞれ難民出身国の隣国です(参照:同上)。

難民はヨーロッパや北米で受け入れられているイメージが強いかも知れませんが、ウクライナとロシアの戦争が起こるまでは、8割以上の難民は途上国で受け入れられていました。

そのウクライナでは、2022年4月末現在、550万人以上が自国を逃れ、さまざまな国に避難しています。最も多くの方が避難しているのが隣国のポーランドで、人数は300万人以上に上ります(参照:Ukraine Refugee Situation|UNHCR)。

2.難民を支援するための具体的な取り組み

難民支援は、次の二つに分けられます。

緊急人道支援
避難したばかりの難民がまず生きていけることを目的とした支援です。主に難民が最初に逃げた国(隣国であることが多い)で仮設テントの設置や最低限の物資支援が行われます。

生活支援や法的支援など
長期的な滞在を目的とした支援です。ビザの取得や就労、教育へのアクセスなど、長期的に安定した生活を送れるような支援を行います。

これらを前提に、世界・日本では具体的にどのような取り組みが行われているのか、一緒に見ていきましょう。

(1)世界の取り組み

世界をみると、難民問題への取り組みを行うのは国連機関だけではなく、各国政府、NGOやソーシャルビジネス、民間企業、大学など多岐にわたります。それぞれの強みを生かして難民問題に取り組んでいます。

①緊急人道支援

ニュースでも取り上げられることの多い難民キャンプでの支援や国境での難民保護は、緊急人道支援にあたります。急な紛争や災害によって1日に何千人と押し寄せる難民の人たちをサポートする必要があるため、スピードと潤沢な資金が求められる支援です。よって、多くのケースでUNHCRの主導によって行われます。それを補う形でNGOなどの民間団体が細やかなサポートを提供します。

例えば、ウクライナ難民を1日2万人ほどのペースで受け入れているポーランドでは、首都ワルシャワにNRC(ノルウェー難民評議会)が難民受け入れセンターを開設し、地域の団体や民間企業と連携しながら食事や医療のサポートをしています(参照:New refugee reception centre opens in overwhelmed Poland|NRC)。

また、シリア内戦が起きたときはヨルダンに広大な難民キャンプが緊急で設置され、最低限の衣食住を送れるように、多くの国際団体が物資やインフラ整備の支援を行いました。

<span>国境を越えてポーランド・メディカに入るウクライナ難民</span>
国境を越えてポーランド・メディカに入るウクライナ難民(The Norwegian Refugee Council提供)

②生活支援

生活支援は難民を受け入れるどこの国でも行われている支援です。ドイツやカナダなど政府が率先して難民の社会統合に取り組む国もあれば、NGOなどの民間団体や難民雇用を目的とするソーシャルビジネスが盛んな国もあります。また、先進国では大企業が率先して難民雇用を行うケースもあります。

例えば、難民受け入れの先進国であるドイツでは、ビザを取得する難民に対して、ドイツ語とドイツの文化や生活様式を学ぶ授業の受講を義務づけています。さらに政府が難民に対して働く場所を提案するなど、難民の就労支援にも積極的です(参照:Asylum and refugee protection|Federal Office for Migration and Refugees)。

ソーシャルビジネスが盛んなイギリスでは、言語や文化の壁から既存の企業に就職することが難しい難民のために、個人起業をサポートするTERNや、パン職人として難民を雇うことを目的としたベーカリーのBreadwinnersなど、難民の就労をビジネスでサポートする民間団体もあります。

(2)日本の取り組み

日本政府がアフガニスタン難民やウクライナ難民の受け入れを決めたというニュースもありましたが、北米やヨーロッパに比べて難民の受け入れ総数が少ないため、日本の難民問題に対する取り組みは限られています。それでも、近年難民問題への関心の高まりを受けて、生活支援を行う団体や企業は少しずつですが増えてきています。

①法的支援と生活支援

難民は避難先の国の政府に対して難民申請を行い、それが政府から認定されることでその国で永住できる権利を得ることができます(難民認定)。日本の難民申請手続きは数年かかる複雑な手続きのため、専門家のサポートが必要ですが、難民支援協会などの民間団体が行政書士による難民申請のサポートを提供しています。

また、仕事を見つけるまで生活できるように、所持金がほとんど無い難民に対して仮の住居を提供したり、最低限の衣服や食料を提供したりする生活支援団体もあります。

②就労支援

難民が長期的に住むにあたって就労は必須です。日本での就労には一定程度の日本語能力が求められることが多いため、日本語の授業を提供している団体もありますが、機会はまだ不十分と言えます。

また、難民に対して就労先を紹介するNPO法人WELgee(ウェルジー)のJobCopassや、難民の直接雇用を目的としたパソコンのリサイクル事業を運営するピープルポートなど、ビジネスを通じた支援も増えてきています。

3.日本の難民支援にかかわる課題

難民支援は、日本においても、さまざまな取り組みが行われています。ただ、他の国々と比較すると、まだ多くの課題を抱えています。主に次の三つです。

(1)難民認定の基準が厳しい

日本の難民認定率は0.5%、毎年40人程度の認定という先進国の中では極端に低い数字です。ドイツやカナダ、イギリスといった国が40~50%台の認定率であることを鑑みると、日本の難民認定の厳しさが際立ちます。

日本の認定率が低い理由として、認定基準が他国に比べて非常に厳しいということが挙げられます。難民条約で定められている難民の定義はあいまいで、各国の解釈に委ねられているのですが、日本は他国と比べても限定した解釈をしているため、他国で認定されるような条件でも日本では不認定を受けてしまうことがあるのです(参考:日本の難民認定はなぜ少ないか?-制度面の課題から|難民支援協会)。

もし日本で難民であると認定されなかった場合、日本に永住することはできません。不認定の通知後は、まだ身に危険が及ぶ可能性が残っていても母国に早急に帰国せざるを得なくなり、大変厳しい状況に置かれます。

この状況が起きている背景には、難民問題への社会の理解が進んでいない現状があります。日本では難民の保護に関する議論が社会全体で活発でないために、政府も難民保護の重要性を感じておらず制度整備が滞っています。

受け入れ数が少ないため難民を身近に感じることができないという意見もありますが、毎年増え続ける難民の数を思うと、世界第3位の経済大国として世界から求められている役割を考えていく必要があります。

(2)就労が難しい

世界的には失業率が低く、さまざまな業種が存在する日本ですが、流暢(りゅうちょう)な日本語を条件とする仕事が大半です。仮に難民認定されたとしても、偶然日本に来ることになった難民にとって、日本語の習得は大きなハードルです。事実、高度な技術を持っていても、何年も仕事に就くことができない難民の人たちがいます。

(3)コミュニティーに溶け込みにくい

日本は英語を話す人も少ないためか、コミュニティーに溶け込むのが難しいと言われています。一方、難民も、自国から逃げてきたため、自国やその周辺国の人と関わることを避ける傾向にあります。

唯一話せる第二言語が通じない、でも母国語が話せる人との接触は避けたい……。その結果、信頼できる友人もできずに社会で孤立してしまい、精神的に厳しい状況に置かれる難民は少なくありません。

<span>農場の水くみ場に並ぶシリア難民の子どもたち</span>
農場の水くみ場に並ぶシリア難民の子どもたち=2013年、レバノン(撮影・朝日新聞)

4.難民問題解決のためにできること

上記のような課題があるなかで、難民問題の解決のために私たちには何ができるのでしょうか。難民支援をしてきた筆者の経験から、個人・企業、それぞれにできることをご紹介します。

(1)個人にできること

①難民問題を知る

まずは日本社会の難民に関する理解が進むことが大切です。ウクライナの件をきっかけに、難民がどのような生活をしていて、どんな困難に直面しているのかなどをネットで調べてみるのも、難民問題の理解を助けます。

また、難民は全国各地に住んでいるので、地元の難民支援団体が開くセミナーや難民との交流イベントに参加するのもいいでしょう。実際に支援をしている人や難民本人と話してみると、よりリアルな現状を知ることができます。

②行動に移してみる

難民問題の現状を知り、もし難民のために何かしたいという思いを強めた方は、ぜひ行動に移してみてください。

WELgeeや難民支援協会といった難民支援を行うNGOのマンスリーサポーターを始めてみるのもいいですし、ピープルポートが展開し難民の雇用につながるZERO PCでパソコンを購入したり、世界の難民が製作した雑貨をMADE51(注)で購入したりするのもいいでしょう。家からでもできる支援はたくさんあります。

(注)難民たちの手による手工芸品を集めたグローバルブランドで、UNHCRが2018年に立ち上げました。製品はオンラインショップで購入できます。「MADE」はMarket、Access、Design、Empowerment for Refugee Artisansの頭文字、「51」は難民条約が採択された1951年に由来するそうです。

また、余力があればSNSでウクライナやシリアの難民について発信したり、日本の難民について家族や知り合いと話したりしてみるのも、難民問題解決への大きな一歩になります。

(2)企業にできること

①難民雇用

難民にとって就労は、生活を送るための死活問題です。また、難民のなかには日本での収入で自国の家族を養っている人もいます。企業のなかで英語で働くことができるポジション、または言語があまり必要ない業務がある場合、難民の雇用を前向きに考えてみてください。

もし社内で難民への理解が進んでいない場合、社内での講演会やイベントを開催し、まずは難民問題を社内の人に知ってもらうきっかけを作るといいでしょう。

②NGOやソーシャルビジネスとの協働

企業が持つ強みは難民支援の現場で大いに生かされています。例えば難民キャンプでIKEAは仮設テントの提供を、ユニクロは洋服の提供をしています。また、プログラミングやデザインなどのスキルを無償で難民の若者に教えている企業もあります。

難民は衣食住から医療、教育などさまざまな問題を抱えており、支援が追いついていない状況です。現場に詳しいNGOやソーシャルビジネスの企業とコミュニケーションを取ることで、あなたの会社の強みが生かされる支援方法を探してみてください。

5.難民と共に暮らすために

日本で暮らしていると、難民問題と聞いてもどこか遠くの国で起きていることに感じるかもしれません。

ただ、ここ日本でも、さまざまな困難を抱えながら生活を送っている難民がいます。彼ら/彼女らが安心して暮らせるように、まずは自分ができることを明日から始めてみてください。

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