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日本一のビジネス街・大丸有で挑む「E&J」 誰もが働きやすい街へ企業横断でアクション

日本一のビジネス街・大丸有で挑む「E&J」 誰もが働きやすい街へ企業横断でアクション
「E&Jラボ!」の様子=2022年3月17日、東京・大手町
編集部

東京駅周辺の大手町・丸の内・有楽町。大企業の本社が集積する日本一のビジネス街で、約28万人が働くとされるこの「大丸有(だいまるゆう)」エリアを「心のバリアフリーがあふれる街」にしようと、ビジネスパーソンたちが企業の垣根を越えて集まり、「E&Jラボ!」と題した活動をおこなっている。「E&J」とはいったい何なのか? 現場をのぞいた。(編集部・竹山栄太郎)

「D&I」の一歩先へ、楽しみながら

大丸有エリアでは2020年5月、SDGs達成に向けて活動する企業横断プロジェクト「大丸有SDGs ACT5」が発足した。三菱地所や農林中央金庫などが実行委員会をつくり、「サステナブルフード」「環境」「WELL-BEING」「ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)」「コミュニケーション」の五つのテーマを設けて活動している。「E&Jラボ!」はこのなかの「D&I」の一環と位置づけられる。

D&Iは「多様性と包摂」の意味。性別や性的指向、障害の有無といった違いを受け入れることを指し、「誰一人取り残されない」というSDGsの理念にも通じている。「E&J」は実行委の造語だ。「E」と「J」はアルファベットの「D」と「I」の次に来る文字で、「エンジョイ」と「ジョイン」の頭文字でもある。「D&Iの取り組みを一歩先へ進め、多様性を楽しみながら自分ごととして推進しよう」という意味合いを込めたという。

「E&Jラボ!」立ち上げの背景について、事務局を務める三菱地所サステナビリティ推進部の天野友貴さんは、「大丸有エリアでも個別企業のD&I施策は進んでいるが、担当者にとって『取り組まなければいけない』ものだったり、進め方や社内浸透に関する悩みがあったりする」と話す。そこで、企業の垣根を越えた、ACT5流「アライ」(LGBTQや障害などの当事者を理解・支援する人たち)のコミュニティーをつくり、街全体の取り組みを加速させようと考えたという。

天野さんは「D&Iの課題について誰もが気軽に参加し、アクションを起こす場にしたい。SDGsの達成年である2030年には、D&Iという言葉を使う必要のない社会をめざし、大丸有を起点に取り組みを広げていきたい」と話す。参加資格は設けておらず、大丸有で働くビジネスパーソンでなくても、関心があれば誰でも参加できる。

東京駅と丸の内の高層ビル
東京駅(左)と丸の内の高層ビル

2030年に向け、わくわくできる「絵空事」を

実際の活動風景をのぞいた。2022年3月中旬の夜、大手町の会議室。オンラインでつながった人も含め、20人ほどの参加者が三つのグループに分かれて議論していた。テーマは「2030年、『E&Jラボ』がYahoo!ニュースに取り上げられるなら?」。D&Iが実現した2030年の大丸有エリアの姿を想像し、架空のニュース記事にしようという試みだ。

あるグループは、「30万人のやさしさつなぐ大壁画完成!」のニュースを発表。誰かから「やさしさ」を受けた人が、その証しとしてビルの壁に折り紙を貼っていくことで、大きな壁画を描くというアイデアを披露した。

「30万人の大壁画」のアイデアの発表を聞く参加者たち
「30万人の大壁画」のアイデアの発表を聞く参加者たち

「大丸有に『○○フェチ』全員集合」というニュースを発表したグループは、「実はぬか床オタク」「寝台特急好き」など普段言いにくい自分自身のことを明かし、職場で「カミングアウト」しやすい雰囲気をつくることを提案した。

「E&Jラボ!」のフェローとして議論を見守り、認知症の人が注文をとるレストラン「注文をまちがえる料理店」の発案者として知られる元NHKディレクターの小国士朗さんは、「何かコトを起こすときに必要なのは『絵空事』。企画している自分たち自身がわくわくできれば、次々に人が参加してくる」などとアドバイスしていた。

「グラレコ」で記録された発表内容
「グラレコ」(グラフィックレコーディング)の手法で、リアルタイムで記録された発表内容=大丸有SDGs ACT5実行委員会提供

「プライド月間」にイベントも

そのほかのD&Iの取り組みとして、これまで農福連携に関するセミナーやユニバーサルマナー研修などもおこなってきた。

LGBTQの権利を啓発する「プライド月間」の6月に合わせ、6月15日まではLGBTQ関連のイベントを開いている。

三菱地所サステナビリティ推進部の佐川素子さんは、「かつての大丸有エリアは、大企業が集まる『ビルの街』とみられてきたが、2002年の丸ビルの建て替え以降、買い物や食事に来る人との接点も増えてきた。これをさらに前進させ、人のぬくもりを感じられる街にしたい」。

「E&Jラボ!」の運営に協力する障害者雇用支援企業・スタートライン(東京)の眞島哲也さんは、「『心のバリアフリーがあふれる街』をめざし、企業も個人も入り交じってD&Iの取り組みを進めていきたい」と話した。

竹山栄太郎
竹山栄太郎 ( たけやま ・えいたろう )
朝日新聞SDGs ACTION!編集部員。2009年に朝日新聞社入社。京都、高知の両総局を経て、東京・名古屋の経済部で通信、自動車、小売りなどの企業を取材。2021年から現職。
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