鳩山内閣は14日、来年度予算編成の基本方針を固め、新規国債の発行額について「約44兆円以内に抑えるものとする」と明記した。国債発行額は「努力目標」とする方向だったが、最終的に「上限」とすることになった。歳出削減のため、マニフェスト(政権公約)に掲げた新規施策の圧縮に取り組む姿勢も示した。
14日、断続的に開かれた基本政策閣僚委員会の作業部会で連立3党が合意し、15日の閣議で決定する。予算編成で財源が不足する分は国債の増発ではなく、特別会計の「埋蔵金」などを活用する方針。財政規律に配慮する姿勢を示すことで、国債市場の金利上昇を抑える狙いがある。
基本方針は、景気の先行きについて「予断を許さない」と指摘。麻生前政権が今年度当初予算と第1次補正予算で計44兆円の国債を発行したことを踏まえ、「厳しい経済状況にかんがみ、直近の財政拡大的な国債発行の水準をある程度容認する」とした。
国債発行額について、政府側は1回目の部会で「約44兆円以内に抑えることを目指し、最大限の取り組みを行う」と努力目標にとどめる案を示した。だが、国民新党によると3回目の会合で、特別会計の埋蔵金などを「最大限活用した予算編成を行う」との表現を加える代わりに国債発行の目標を強めたという。
基本方針は、来年度歳出総額の上限や税収見通しは明記しなかった。来年度予算の概算要求額は過去最大の約95兆円に膨らんでいる。仮に来年度の税収が今年度と同程度の約37兆円にとどまり、埋蔵金など税外収入が内閣の目標である10兆円だったとすると、「国債44兆円」では91兆円の歳出しかまかなえない。95兆円の予算を求める国民新党との調整が今後の課題となる。
マニフェストの新規施策についても「優先順位をつけて効率的に実施する」と、予算規模の圧縮や修正に取り組む姿勢を示した。高速道路の一部無料化や農家の戸別所得補償などが、規模圧縮の対象になるとみられる。
事業仕分けについても「評価結果の厳格な反映によって不要不急の歳出の削減を行う」とした。中長期的な財政健全化の手だてを示す「財政運営戦略」を来年前半に策定する方針も明記し、財政規律に配慮する姿勢を示した。
「国債44兆円」をめぐっては、平野博文官房長官が予算編成方針には明記しない考えを表明したが、鳩山由紀夫首相が明記を指示した。
◇
■来年度予算編成の基本方針の骨子
・事業仕分けの評価結果の厳格な反映で、不要不急の歳出を削減する。結果の反映状況は編成後速やかに公表
・特別会計を聖域なく見直して税外収入を確保し、これを予算編成で最大限活用
・国債発行額は約44兆円以内に抑えるものとする
・デフレの克服に向けて、日本銀行と一体となって強力かつ総合的な取り組みを行う
・子育て、雇用、環境、科学・技術に特に重点を置く
・マニフェストの主要事項は優先順位をつけて実施
・中長期的な「財政運営戦略」を策定し、財政健全化の道筋を示す