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福島、原発語らぬ自民・民主

写真:福島県浪江町(手前)と双葉町(奥)の町境の両竹(もろたけ)地区。東日本大震災から約2年4カ月がたち、日中立ち入り可能な避難指示解除準備区域になったいまも、がれきやスクラップと化した車、防犯のためのバリケードが残る=5日午前、小川智撮影拡大福島県浪江町(手前)と双葉町(奥)の町境の両竹(もろたけ)地区。東日本大震災から約2年4カ月がたち、日中立ち入り可能な避難指示解除準備区域になったいまも、がれきやスクラップと化した車、防犯のためのバリケードが残る=5日午前、小川智撮影

写真:福島県浪江町では東京電力福島第一原発事故の影響で町民の町外避難が続いている。参院選の選挙戦が始まった4日、事故前は多くの人が行き交った商店街に人気(ひとけ)はなく、街灯と信号の明かりだけがともっていた=4日夜、福島県浪江町、小川智撮影拡大福島県浪江町では東京電力福島第一原発事故の影響で町民の町外避難が続いている。参院選の選挙戦が始まった4日、事故前は多くの人が行き交った商店街に人気(ひとけ)はなく、街灯と信号の明かりだけがともっていた=4日夜、福島県浪江町、小川智撮影

 【野瀬輝彦、小島泰生、三輪さち子】東京電力福島第一原発事故の影響で、今なお約15万人の福島県民が避難生活を余儀なくされている。福島選挙区では今回から改選数が一つ減り、原発再稼働を進める自民党、再稼働を決めた民主党の現職同士が相まみえる。昨年末の政権交代で原発政策は大きく転換されたが、福島では十分に語られていない。

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■批判招いた高市発言 自民

 電力4社が原発の再稼働を申請した翌9日の夜。自民党の森雅子氏は避難区域を抱える福島県川俣町の公民館で演説会に臨んだ。

 「大災害の被害をこうむるのがどうして福島なのか。天を恨みたい気持ちだ。私の使命はふるさとと子どもたちを守ることだ」

 少子化相として、県内に不足する産婦人科医を全国から4人招いた実績をアピール。だが、原発政策には一言も触れなかった。

 公示日の4日は、自民党総裁の安倍晋三首相と並んで県内の街頭に立った。安倍氏は昨年の衆院選でも公示日に福島入りし、再稼働への理解を求めた。ところが今回、原発事故への陳謝はしたものの、原発政策を口にすることはなかった。

 森氏は公示前、県選出国会議員から「福島の議員と閣僚の立場が矛盾して難しい局面が来るかもしれない。発言は慎重に」と忠告を受けた。電力業界とともに再稼働に突き進む政権の原発政策を福島で訴えることは、有権者を逆なでしかねないからだ。

 6月17日には高市早苗政調会長が「原発事故で死亡者が出ている状況ではない」と発言。県内では原発事故に伴う避難などで約1400人が亡くなっている。自民党県連や県選出国会議員の事務所には「県連は抗議しないのか」「高市氏は謝れ」といった抗議の電話が殺到した。

 動揺した森氏は翌18日夜、福島市のホテルであった党の会合で県連幹部に「私、どうすればいいでしょうか」と相談を持ちかけた。この幹部は「しっかり怒れ。それが県民の総意だ」と助言した。一夜明けると、森氏は国会内に高市氏を訪ねて抗議し、その後、涙を浮かべながら「大変怒っています」と記者団に語った。

 自民党は選挙期間中の高市氏の福島入りを中止。街頭で原発政策を封印した。

 今月5日、いわき市の仮設住宅に森氏の姿があった。約40キロ北の楢葉町から避難してきた有権者に駆け寄った森氏は「ご不便をおかけします」と握手を求めた。仮設住宅で出迎えた松本幸英・楢葉町長だったが、その後、記者にこう漏らした。「この状況を前にして再稼働なんて言おうものなら石を投げられる」

■電力労組支援、歯切れ悪く 民主

 民主党の金子恵美氏は6日、いわき市の街頭演説で「命を軽んじるような発言をする政府・与党に私たちのくらし、命を任せていいのか」と訴え、高市氏の発言への批判を強めた。

 脱原発が持論の金子氏だが、25分間の演説で原発に触れたのはわずか1分半。原発政策は「国が責任を持って新しい形をつくる時期だ」と述べるにとどめた。

 公示日の4日、福島駅近くの商店街。金子氏の選対本部長を務める玄葉光一郎前外相が「まるで原発事故はなかったかのようだ。成長戦略は原発輸出。ど真ん中だ」と政権を批判した。

 その場には電力会社や大手電機メーカーの社員ら連合傘下の組合員約100人もいた。福島第一、第二原発では今も約4千人が働き、「脱原発」には慎重な意見が根強い。連合福島の影山道幸会長は「輸出の否定は電機業界を刺激する」と感じ、県選出国会議員に「玄葉さんの発言で困っている」と伝えた。

 民主党は政権時代に福井県の大飯原発の再稼働を決定。党のマニフェストでは「原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働する」と記した。福島県連は県版マニフェストに「全基廃炉」を盛り込んだが、金子氏は公示前までは訴えることを抑制。公示後になって触れるようになった。県選出国会議員の一人は「再稼働は自分たちで決めたことだから言えることにも限界がある」と語る。

 一方、共産、社民両党の新顔は脱原発の姿勢を鮮明にする。共産党の岩渕友氏は「福島県民を切り捨て、再稼働や原発輸出を進める勢力に福島の復興を任せるわけにはいかない」。社民党の遠藤陽子氏も「事故前と変わらない政策が進められている。命と健康、生活を守るには脱原発・廃炉だ」と主張。原発政策を語れない自民、民主両党の姿勢に批判の矛先を向ける。

     ◇

 〈原発事故とエネルギー政策〉 2011年3月の福島第一原発事故は国際原子力事象評価尺度(INES)でチェルノブイリ事故と同じ最も深刻な「レベル7」と評価された。政府は同年12月に収束宣言をしたが、放射能の汚染水漏れなどのトラブルは続く。福島県内11市町村は避難区域に指定され、除染が進まず住民が帰るメドが立たない地域も多い。

 事故を機に「脱原発」の機運は高まり、エネルギー政策は大きな転換を余儀なくされた。野田政権は昨年6月に関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の再稼働を決めたが、残る原発48基は停止中のまま。「2030年代に原発稼働ゼロ」の方針も決定した。

 ところが成長戦略を重視する安倍政権は、この方針の見直しを表明。再稼働の推進にかじを切り、原発の輸出にも力を入れる。8日には新しい規制基準が施行され、電力4社が5原発10基の再稼働を申請した。