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(政策を聞く)規制緩和:「改革、半永久的に」「技術革新できぬ言い訳」

写真:早稲田大商学学術院の山本哲三教授(右)と東京大学大学院の松原隆一郎教授拡大早稲田大商学学術院の山本哲三教授(右)と東京大学大学院の松原隆一郎教授

 【永島学、高重治香】参院選では、安倍政権の経済政策「アベノミクス」や原発再稼働をめぐって与野党が論戦を繰り広げている。有権者はどう判断したらいいのだろうか。「規制緩和」について推進、慎重の異なる立場の専門家に聞いた。

■〈推進派〉山本哲三・早大教授

 ――安倍政権は成長戦略に規制緩和を掲げています

 「成長の余地が少ない日本では、規制緩和は有力な経済政策だ。日本の財政は厳しく、政策の自由度はほとんどない。ほぼ唯一、可能性のある政策が規制改革だろう」

 ――規制緩和はまだ足りませんか

 「日本は規制があり過ぎる。1万3千とか1万4千と言われる。数え方にもよるが、規制改革が進んでいる国は6千とか7千と言っている。規制は必要最小限にしないと、はつらつとした国民性が出てこない。市民のくらしに結びつく社会的な規制の緩和は慎重でなければいけないが、企業や産業に対する経済的な規制は原則なくしていい」

 ――これまでの規制緩和をどうみますか

 「経済的な規制はまあまあのレベルまで緩和した。だが、族議員がいたり、官庁、業界、組合が強く抵抗したりする分野が残っている。電力や農業、医療、教育、公共交通などだ」

 ――重点的に取り組むべき分野はなんでしょう

 「電力会社から送電部門を切り離す『発送電分離』はぜひやってほしい。すでに成し遂げている欧米諸国は、これができて初めて、日本も規制改革が本格化したと認めるのではないか」

 ――安倍政権の進め方はどうでしょうか

 「本格的に規制改革をできるのかな、という感じはある。各省庁がリストをつくり、計画だけは立派、という以前と同じ手法・パターンになっている。一方、優先順位をつけることができていない。(有識者による)政府の規制改革会議に強い権限がないからだ」

 ――どんな仕組みが必要ですか

 「会議には各省との交渉で強い権限を持たせ、英国の規制改革基本法のような法律も必要だ。規制改革は半永久的に続けるもので、常に改革に取り組む体制をつくらなければならない」

 「電力改革は業界のほか、族議員や労組の抵抗もある。農業や医療も利益団体の圧力があって難しい。こうした岩盤のような規制に本腰を入れる意志があるのかが問われる」

    ◇

 やまもと・てつぞう 早稲田大商学学術院教授(公共経済学)。著書(共著を含む)に「規制改革の経済学」「規制影響分析(RIA)入門」「規制改革30講」など。66歳。

■〈慎重派〉松原隆一郎・東大教授

 ――日本の規制は多すぎませんか

 「数だけ見れば増えているが、必要があるとされるからだ。分野によっては、日本より厳しい規制がある国はいくらでもある」

 ――安倍政権は、規制緩和こそが経済成長のかぎだとしています

 「規制緩和と成長の関係は明確ではない。小泉改革で景気はよくならなかった。緩和、緩和と言っている米国でも製造業はふるわない」

 ――経済界も規制緩和を支持しています

 「イノベーション(技術革新)ができていない言い訳に聞こえる。iPad(アイパッド)が日本で生まれなかったのは規制のせいだろうか。日本の会社組織は、iPadの生みの親で日本文化が好きなスティーブ・ジョブズのような人材には居心地が悪く、アイデアが枯渇しているのが問題だ。このアイデアを実現するのにこの規制が邪魔だと、具体例を挙げて検討すべきだ」

 ――規制が成長の足を引っ張っていませんか

 「競争とは、コスト競争だけではなく、もっと多様なものだ。規制が利益を生む場合もある。開発を規制して街並みを観光資源にした京都や、生産法の規制が厳格なチーズを特産にするフランスの例もある。緩和によってできると言われることの多くはイノベーションではなく、カジノなど外国のイミテーション(模倣)に過ぎない」

 ――規制にはどんな意義があるのでしょうか

 「僕らがどういう生き方をしたいのかという価値観は経済に還元しきれない。働き方、街並みなどは、社会的規制により生み出される。それによりユニークな国をつくるのが政治家の仕事だ。安倍首相は、『美しい国』がどんな規制や慣行から成るのかを語るべきだ」

 ――規制緩和に代わる成長の方法はありますか

 「企業が内部留保や配当を重視し、賃金や設備投資を増やさない結果、物価が下がるデフレが続いている。過去の銀行の貸し渋りや不良債権処理の体験から、自己防衛のために銀行から借りず、お金をためこんでいる。企業と銀行の信頼関係を回復させ、革新への投資を増やす必要がある」

    ◇

 まつばら・りゅういちろう 東大大学院総合文化研究科教授(社会経済学、相関社会科学)。著書に「日本経済論 『国際競争力』という幻想」「失われた景観」など。56歳。

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