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【山下知子】福島第一原子力発電所の事故で、多くの人が住み慣れた故郷を離れた。九州・山口・沖縄への避難者は約3600人。各政党が総選挙公約で掲げる原発政策の内容を、見極めようとしている。
「とにかく安心がほしい」。長崎県佐世保市の日下智沙さん(49)は昨年3月18日、夫(47)と子ども3人らと福島県南相馬市から避難してきた。夫は経営するゴルフ練習場の仕事で、月の半分以上は福島へ帰る。自宅は避難指示解除準備区域にあり、戻る見通しは立たない。
子どもたちの被曝の影響が心配だが、避難先での健康チェックは手続きが煩雑なうえ、指定された病院は佐世保市の外。甲状腺検査は受けられなかった。遠方への避難者は置き去りにされていると感じる。
総選挙では「私たちの生活を見すえながら、未来を語ってくれる候補者がいい」と語る。南相馬市に住民票があり、不在者投票するつもりだ。
沖縄県八重瀬町の大橋文之さん(54)は「原発が争点になってきた」と喜ぶ。11月末、嘉田由紀子・滋賀県知事が「卒原発」を掲げる新党を立ち上げて、ようやく原発をめぐる議論が盛り上がったと感じている。
大震災発生時、第一原発2号機前で防水工事に携わっていた。すぐに40キロほど離れた福島県川俣町に逃げ、2日後には東京へ。知人の誘いで昨年5月、妻(50)と沖縄へ移った。南相馬市の自宅は原発から約10キロ。被災後初めて一時帰宅できたのは今年6月だ。
環太平洋経済連携協定(TPP)や消費税増税の是非の前に、原発があまり語られていないと感じていた。「事故が二度と起こらないようにするのが政治。フクシマを忘れたのか」
家も仕事も失った。東京電力からの賠償金の線引きをめぐり、地域の人間関係はぐちゃぐちゃになった。診断は受けていないが、被曝による健康影響も不安だ。だからこそ総選挙は重要だと考える。「沖縄の若者にも呼びかけるよ。おしゃれも遊びも安全な生活があるからこそだって」
首都圏からの自主避難者も、原発に注目する。
福岡市の1DKのマンションに住む小沢麻里さん(33)は昨年7月、長男(2)と東京から自主的に移り住んだ。子どもは大人より被曝の影響を受けやすい。夫は引きとめたが、避難を決意した。夫と実家からの仕送りで暮らす。ぜいたくはしないが、放射性物質を取り込まないよう、食べ物には気を使う。
慣れぬ土地の立候補予定者は見知らぬ顔ばかり。小選挙区も比例区も、人柄より政策で選ぶつもりだ。基準は「子どもたちが暮らしやすく、安全な生活を送れるかどうか」。
ただ、各党の総選挙公約をみても、原発稼働ゼロや原発ゼロまでの期間の違いや具体的な道筋が見えにくい。「選挙目当てかどうか、見極めないといけない」。立候補予定者の過去の言動などをインターネットで調べるつもりだ。
長男(5)と群馬県館林市から福岡県福津市に移った芝野章子さん(46)は、福島や関東と福岡とでは「放射能や食の安全への関心の度合いに差を感じることは否めない」と感じる。でも心情を理解し、支えてくれる人がまわりにもいる。「3・11後、価値観が変わってきている。それに気づかない政治家には国政を預けられない」と話す。
| 衆院議員選挙公示 | 12/4(火) |
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