佐世保港にある佐世保重工業(SSK)の労働組合事務所。18日夕、民主元職の宮島大典氏(42)は、組合委員長から推薦状を受け取った。
宮島氏が「政権交代の選挙だ」と呼びかけると、集まった30人ほどの労組員から拍手が起きた。「念願の自前候補。気合が全然違うよ」。ある組合員はいう。
SSK労組は、佐世保市内では佐世保市職組に次ぐ1000人の組合員を抱えている。4区で民主候補が不在だった過去2回、比例では民主、小選挙区では今川正美氏(58)=社民元職=を推してきた。比例、小選挙区とも民主でまとまるのは初めてだ。
宮島氏は初当選した98年の衆院補選、北村誠吾氏(58)=自民前職=に敗れた00年の総選挙はいずれも自民公認。前回は比例単独で自民から立候補した。
昨年1月に民主にくら替えしたが、89年まで自民党の参院議員を務めた実父の後援会組織を引き継いでいる。労組幹部が加わる選対で本部長を務めるのは保守系の元佐世保市議会議長だ。
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「民主の候補は保守層になじみ深い人物。油断しないで取り組んでいただきたい」
18日夕、北村氏は市内で開かれた日本看護連盟県支部の集会でマイクを握りしめていた。
同連盟は自民党の支持団体。支持基盤を固めつつある北村陣営が「前回のようには楽にはいかない」と警戒感を隠さないのは、宮島氏のことだけが原因ではない。
陣営幹部は、ある支持者が漏らした言葉が気にかかっている。「小泉さんは冷酷だ」。郵政民営化に反対した前職に次々と対抗馬を立てる手法が、古くからの支持者の反発を買っているようにも見えるという。
北村氏は、郵政民営化関連法案に賛成した。その結果、選挙区内の特定郵便局長会からは顧問を辞めるよう要請された。北村氏は「確かに票を失ったが、投票日までには取り返せる」と、特定郵便局長のOBがつくる政治団体が自主投票を決めたことに期待を寄せる。
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長崎市で16日、民主、社民と連合長崎などでつくる「六者懇」が衆院選の対応を話し合った。閉会後、出席者の顔はさえなかった。自民打倒のため4区の候補者の一本化を目指したが、議論は不調に終わったからだ。
過去2回の総選挙では、連合の仲介で、今川氏は民主の支持を取り付け、県内の他の選挙区で社民が民主の候補を推した。しかし、今回は連合傘下の労組が宮島、今川の両氏に分裂して選挙戦に突入する。
今川氏は佐世保市街地で毎週月曜の朝、演説を続けている。「私だけが郵政民営化に反対している。ほかの2人は自民と元自民だ」。自民と民主の対決を「保守分裂」と印象づけ、反自民の浮動票を取り込む。それが今川氏が描く作戦だ。
共産党県委員会は独自候補擁立を見送った。同委員会は「比例区に力を注ぐ。小選挙区は自主投票」としているが、県委員会幹部の一人は「平和問題で考えが近いのは明らかに今川さん。票が流れてほしい」ともらす。