郵政民営化、年金、少子高齢化、憲法問題――。私たちの暮らしを取り巻く多くの課題を、各候補者は、どう考え、どんな政策を打ち出そうとしているのか。朝日新聞社は、拉致、農業問題など、新潟の有権者に関心が高い課題を取り上げ、6小選挙区の候補19人にアンケートをした。
アンケートは選択式と、「拉致問題解決に何が最も有効な手段と考えるか」を記述で尋ねた。
記述式で、「経済制裁」を挙げた候補は、吉田六左エ門氏(自民)、近藤基彦氏(同)、鈴木泰氏(国民)、菊田真紀子氏(民主)、栗原洋志氏(自民)、筒井信隆氏(民主)、高鳥修一氏(自民)の7人。
具体的な手法について聞いたところ、「今の段階で制裁するべきだ」(近藤氏)、「『対話と圧力』では何の進展も期待できない」(菊田氏)、「まずは全面経済制裁」(筒井氏)などの回答があった。
対極にいるのは、宮崎増次氏(社民)。6者協議を通じて「粘り強い交渉」を促す。
共産は、川俣幸雄、細井良雄、田中真一、武藤元美、斎藤実の5氏が「日朝平壌宣言」に基づく働きかけを挙げる。武田勝利氏は「北朝鮮側交渉窓口の当事者能力がない事態を変えるように求める」とする。斎藤氏は「日本側が道理をつくしても相手側が応じなければ経済制裁もありえる」と加えた。
鷲尾英一郎氏(民主)は「圧力」に強い賛意はないが、改正外為法、特定船舶入港禁止特措法の行使を明記。その際、北朝鮮脱出者を保護する人権侵害救済法案成立も必要だとする。
西村智奈美氏(民主)はやや距離を置く。「対中国・韓国を中心としたアジア外交を再構築し国際的圧力によって解決につなげる」として、「制裁の有効性に検討が必要」と記す。
自民候補でも、やや意見に開きがある。稲葉大和氏は第一に「6者協議を進める」ことを挙げる。経済制裁には「北朝鮮が他国から援助を受ければ痛くもかゆくもなく、日本が悪者になるだけ。そこを精査せずに制裁を求めることは疑問だ」と回答した。
米山隆一氏も「きぜんとした外交交渉」を念頭に、「進展がなければ経済制裁を視野に入れる必要がある」という。高鳥氏は、対話か、圧力かの選択には慎重だが、「経済制裁」を有効な手段として挙げている。
田中真紀子氏(無所属)は「圧力」に賛同しながらも、「国際世論によって金正日体制を崩壊させた後に南北統一を図る」と答えている。
◇「政策に盛り込んで」家族会・救う会
「各政党からマニフェストが出ているが、一体、どの政党が拉致問題を解決してくれるのか。国民を守る人が、国会に行くことが大事だ」。8月24日、新潟西港。今年10回目の入港となった北朝鮮の貨客船「万景峰(マンギョンボン)号」を前に、増元照明・家族会事務局長はいら立ちを隠さなかった。
その2週間前。救う会新潟などが主催する、北朝鮮に経済制裁を求める「1万人国民大集会」が新潟市内であった。約7千人が集まった。
「こんな骨を出してきていい加減にしなさいと、制裁の言葉を出すべきだった」。横田めぐみさんの母、早紀江さんが壇上から訴えかける。
昨年12月、北朝鮮が「めぐみさんのもの」として出してきた遺骨がDNA鑑定で別人と判定された。当時すでに、対北朝鮮経済制裁法とも言える、送金停止などができる改正外為法、特定船舶入港禁止特措法が成立していた。集会参加者は動かない政府への怒りをあらわにしていた。
一方で、小泉首相は、経済制裁に慎重な姿勢を崩していない。また、北朝鮮の専門家の間にも、「制裁すれば北朝鮮は軟化する、というのは、根拠のない推測にすぎない」との意見もある。日本だけが経済制裁しても実効性はなく、国際的枠組みの中で解決すべきだとの意見は、政府与党の間でも強い。
家族会と救う会は、今回の総選挙マニフェストに制裁発動を盛り込むよう、各党に働きかけた。救う会新潟の馬場吉衛会長は「どの党も、拉致問題を取り上げる姿勢が薄いのは残念だ」と話していた。