郵政民営化法案をめぐって突入する総選挙に、各党や陣営は特定郵便局や郵政関係労組など「郵政票」の行方を注視している。昨夏の参院選比例区で特定局長OBなどが支援した候補が県内で得た票は約6900。しかし、これまで自民党支持で結束してきた特定局票には揺らぎが見える。
○法案賛成に「顧問辞めて」
全国特定郵便局長会(全特)の地方組織、関東地方特定郵便局長会の埼玉東部地区会は7月、同会の顧問を務めていた今井宏(埼玉3区)、土屋品子(13区)、三ツ林隆志(14区)の県東部の自民党前議員3氏に、顧問の辞退を依頼する文書を会長名で送った。
同会は今年初め、3氏に顧問就任を依頼したころから、「民営化に賛成しないで」と要請を続けてきた。3氏が法案に賛成票を投じたことで、文書を送った。
三ツ林氏や陣営によると、父親で衆院議員だった故弥太郎氏の時代から「親密な関係にあった」という。解散後に支持組織を回り、改めて「顧問を降りてください」と告げられたという。
「会の決定はやむをえない。局長それぞれに個別に対応してくれることを期待している」と同氏。陣営も「大きな団体ではないが、どのぐらい影響があるかわからない」と不安を漏らす。党への献金など、資金的影響を心配する声もある。
土屋氏の事務所関係者は「今まで一緒にやってきた仲間なので残念だ」と語る。
今井氏の陣営も「総務副大臣を務めている立場上、今回の決定はやむをえない」と話している。
○小泉龍氏、持論展開し距離
郵政民営化法案に反対し、11区から無所属で立候補する小泉龍司氏は、地元の特定郵便局長会から顧問就任の依頼を受けたが、断ったという。
自民党執行部が法案に反対した前議員の選挙区に公認候補を送り込む姿勢を打ち出した直後、記者団に語った。
小泉氏によると、衆院本会議で法案に反対票を投じた直後、局長会から電話で依頼があったという。「今の顧問を外して、というので断った。民営化には反対ではないし、私は族議員ではない。特定郵便局を守るために反対したわけではない」と強調した。
「今の4分社化案には欠点があり、地方や弱い人への配慮に欠ける。郵便ネットワークの維持は必要で、十分な見通しもなく民営化すれば国民負担を増やす」との持論も展開した。
そう語る小泉氏だが、郵政職員の2大労組の一つ「全日本郵政労働組合(全郵政)」関東地方本部は同氏を推薦する方針を打ち出している。
○民主・共産、取り込み狙う
一方の民主党は、郵政票の行方に気をもみつつも、はっきりした方針は打ち出せないでいる。ある県連幹部は「特定郵便局関係者との接触はあるが、状況をみているところだ」と明かす。
6区の前職、大島敦氏の陣営は選挙区内の郵政票について「(郵便貯金と簡易保険の縮小など)民主党の政策を理解してもらい、半分はほしい」と意気込む。
特定郵便局関係者と意見交換をする機会を設け、党の政策に理解を求めていくという。
郵政職員の労組である全逓出身の田並胤明・元衆院議員の後継者、本多平直氏(12区)は「郵便局職員の方に応援してもらっているのは確か」としながら、「でも、そのために民営化に反対するような国民を裏切る行為はできない」と言う。
23日も川端達夫・党幹事長とともに熊谷駅前に立ち、法案の不備や議論がなかった点が反対の理由だったと力説した。
共産党は今月半ばごろから、「民営化にきっぱり反対します」と書いたビラを一部の特定局に配り歩いている。宙に浮いた郵政票を、一気に取り込みたい狙いだ。