今年2月に1市4町が合併して誕生した東近江市では、今回の衆院選で小選挙区の2区と4区が混在している。合併前の区割りがそのまま残っているためだ。複数の陣営から応援を依頼される市長は対応に頭を悩ませ、市選管は幼稚園の教諭を動員するなどして、初の国政選挙を何とか乗り切ろうとしている。
同市では旧愛東、湖東両町が2区、旧八日市市と永源寺、五個荘両町が4区に分かれている。
□市長、多陣営の応援に苦慮
公示日や投開票日に各陣営から来賓として招かれることが予想される中村功一市長。地元の首長としては、公示日は各候補の時間帯が集中する出陣式には間に合わなくとも、なるべく多くの陣営に顔を出したい。開票日は、開票状況を見ながら、2区と4区の当選者の事務所に駆けつけることを考えている。さらに接戦となれば、比例区での復活当選者が出る可能性も高く、深夜から翌日未明まで走り回ることも覚悟しなければならない。
中村市長は「公示日も開票日も、私にどうしても、ということでなければ、助役や収入役に代理で行ってもらうことも考えている」と話す。とはいえ、代理を立てた陣営から渋い顔をされることを考えると頭が痛い。
同市で2区(旧愛東、湖東町)を地盤とする市議は「本来なら大票田の市議として、国会議員ともパイプを作る絶好の機会なのだが……」とぼやく。
東近江市の有権者数(6月2日現在)は県内で5番目に多い6万253人。しかし、2区内の有権者数はその2割に満たない1万1533人。衆院選で後援者を駆り出すなどして、当選する候補の陣営に貢献すれば、発言力も増すはず――という思惑だったが、区割りが存続したために、同じ苦労をしても見返りは少ないという嘆きだ。国政選挙の区割りは国勢調査に基づいて10年ごとに見直されるため、急激な人口変化がない限り今の区割りは2011年まで続く見通しだ。
□選管、幼稚園教諭も動員
しかし、何といっても最も苦労しているのは、投開票事務を担当する市の選管だ。
今年2月の市長選では、開票所は1カ所で済んだが、今回は小選挙区別に、旧八日市市(4区)と旧湖東町(2区)にそれぞれ開票所を設置せざるを得ない。作業に当たる市職員も市長選の約1・5倍の210人が必要になるという。
人集めも楽ではない。選管では、庁舎勤務の職員だけでは足りず、多くの市立幼稚園の教諭にも出勤を要請し、人手不足をしのぐことにしているという。
また、比例区の票は市でまとめて県に報告しなければならず、同市選管では有権者数が少ない2区の開票所の票をまず4区の担当者に報告し、4区担当者が集計して一括して報告することにした。票が伝わる段階で、ミスが生じる恐れも増えている。
選管の担当者は「日中の投票事務から夜の開票作業までぶっ続けで作業にあたる職員が増えるかもしれない」と話す。情報伝達の手間に加え、疲労で集中力を欠くと手違いも起こりやすく、心配は尽きないようだ。