「漁民にとっても竹島問題解決は、まだまだこれから」
日韓が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)の領土権確立や周辺海域での漁業問題解決を国に促す「竹島の日」条例を県が制定して間もなく半年。竹島問題解決に目立った進展が見られない現状に、県漁連指導部次長の小谷考二さん(45)は、改めてその難しさを感じている。
竹島周辺海域は、日韓の排他的経済水域(EEZ)の線引きが難航。両国は99年、漁業協定を結んで共同管理の暫定水域とした。だが、韓国漁船が接近、日本の漁具を壊すなどが続き、日本漁船は同海域から締め出されているのが実情という。
県や県議会は20年以上、国に領土権の確立を求めてきた。県漁連も県などと「兵庫・鳥取・島根3県日韓暫定水域対策協議会」(事務局・島根県漁連)を作り、99年から3県選出の自民党国会議員、水産庁、外務省と意見交換する日韓漁業問題懇談会を開いてきた。今年は9月に開き、竹島の領土問題解決によるEEZの確立などを求めることにしていた。だが、総選挙で延期された。小谷さんは「竹島の日条例制定も報告し、竹島問題を訴える機会にしたかった。しきり直しだ」と話す。
国は、韓国に話し合いでの解決を働きかけてきた。今年5月には、竹島周辺の暫定水域を含め、日韓両国の主要な漁場である日本海や東シナ海の水産資源を管理する話し合いを始めた。大枠の共通認識はあるが、具体的な協議に入れず、次回の日程すら決まっていない。
県は、協議継続を国に求めていく方針だ。水産課主幹の細馬康二さん(47)は「粘り強く交渉してほしい。竹島問題を解決し、EEZ問題を片づけるのが理想だが、簡単にはいかないだろう」と、厳しい現状と分析する。
竹島の日条例制定後、韓国政府は独島への訪問制限を大幅に緩和し、観光客の上陸を増やすなど、実効支配を強めている。県内の漁業者からも「竹島問題は国と国との問題。そう簡単に解決できるものではない」と悲観的な声も出ている。
問題解決につなげようと、県は6月、竹島の歴史や地理に詳しい有識者らで「竹島問題研究会」を設け、論点整理を始めた。06年度中に研究結果をまとめ、国への提言も検討するという。第2回会合は総選挙公示日の30日に予定されている。
条例制定後も、国に問題解決への動きは見られない。竹島が属する隠岐の島町久見の漁師八幡昭三さん(76)は、政府の取り組みは50年遅れていると話す。「県が竹島の日条例を制定しても政府の動きは相変わらず鈍い。このままでは将来、再び韓国とぶつかる」とつぶやくのだが。