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争点を追う

〈争点を追う〉郵政、かすむ「官から民」

2005年09月06日

 ●首相 資金改革は「封印」

 5日。小泉首相は立ち見も出た千葉県市川市の演説会場で、この選挙戦のなかで繰り返し使ってきた数字を挙げ、郵政民営化の意義を説いた。

 「全国の警察官を合わせても約25万人。それ以上の約38万人が郵便局で仕事をしている。自衛官は約24万人。外務省は6000人だ。これ以上、公務員を減らす改革はない」

 首相がこの日、東北・関東の6会場で決まって強調したのは「郵政民営化は、官のスリム化につながる」という点だ。

 だが、もう一つ、与党が「経済活性化」の切り札になるとしてきた、340兆円の郵貯・簡保資金を「官から民へ」変えるという主張は触れられなかった。郵政民営化論の金看板だったはずなのに、この日に限らず、解散後の首相の演説にはほとんど出てこない。

 複雑な話は、選挙戦での演説には向かないと判断したのだろうか。ただ、もともと、与党の「資金を官から民へ」という主張に弱さもある。現状のように民間企業があまりお金を借りない一方で、政府の巨額の赤字が続くなら、民間企業へ資金が円滑に流れない可能性が高いからだ。

 これまでも、野党から「(郵貯は)結局、民営化しても国債を買わざるを得ない」などと突っ込まれる場面があった。民営化に賛成する自民党議員すらも「民営化で資金が銀行に流れ込んだ場合でも、今度は銀行が国債を買い増して、結局は『民から官』になるのでは」と漏らす。

 旗印の「官から民」がかすめば、大義名分はやや心もとない。非公務員化といっても郵政公社職員の給与には元来、税金は使われていない。与党は税収が増えると主張するが、現在の公社も利益の一部を国庫に納めることになっている。

 ●野党 経営道筋示せず

 民営化論への対案として「郵貯・簡保の縮小」を訴える民主党の岡田代表は、5日の記者会見で「郵貯・簡保をスリム化すれば、当然のように民に流れるということではない」と認め、「官がどんどん国債を発行しているのが問題だ。一番大事なのは財政赤字を減らすことだ」と述べた。

 与党が、民営化が必要だとする大きな理由はもう一点ある。日本郵政公社のもとで現状の経営を続ければ収益が先細りするため、新たな業務の展開や経営効率化の自由度を与える、との主張だ。

 この点で、民主党はやや揺れた。公示前に発表したマニフェスト(政権公約)では、将来の経営形態について「政府系金融機関との統合も含め、あらゆる選択肢を検討する」とぼかしていた。当初は、郵政を争点にしない戦略だったためだ。

 ところが、岡田代表は8月下旬以降、政権公約から踏み出すようになり、9月1日の記者会見では「将来の方向性は民営化か廃止」と言い切った。自民党に郵政一本やりで攻められ、土俵に乗った格好だ。

 郵政問題を公約に書き込んだ他の党も、公社の経営改革について、明確な処方箋(せん)を示しているわけではない。共産党は「ネットワークと基礎的金融サービスを守る。官僚の天下りや業界との癒着にメスを入れる」とし、社民党は「市民・労働者の参加による運営が必要」「世襲の特定郵便局長制度やファミリー企業の見直し」と訴えるが、経営の先細りを回避するための具体策は伴っていない。

 郵政民営化をてこに、古い自民党を壊す――。小泉首相が演出するその構図によって有権者の間に「一種の爽快感(そうかいかん)」(岡田代表)が生まれていると、野党は歯がみする。何のために、どう改革すべきなのか、基本の議論は深まらないままだ。


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