郵政民営化法案の否決に端を発した衆院選も終盤を迎えた。法案に反対、棄権、賛成した前職たちの足元では、民営化に反対する特定郵便局長のOB会「大樹」の会員が応援したり、だんまりを決め込んだり。大樹を始めとする郵政一家は04年の参院選比例区では28万票余りを集め、元郵政官僚を当選させた。これまでほぼ自民党一色だった「郵政票」の行方は、今回、大きく分かれそうだ。
■反対組支援
公示後、秋田2区内にある無所属前職の野呂田芳成氏(75)の事務所に、毎日計約20人の女性たちが通ってくる。
大樹秋田県本部が派遣した電話作戦の女性ボランティアだ。大樹関係の名簿で電話をかけるときは、「選挙区は野呂田、比例は国民新党でお願いします」と呼びかける。
「信念を貫き、除名覚悟で体を張って反対してくれた。野呂田先生を絶対落としてはならない」。福司満本部長はそう話す。
同じく法案反対組がいる静岡7区。大樹静岡県本部は、無所属前職の城内実氏(40)を支援する。党本部が擁立した片山さつき氏(46)らとの戦いに、加藤淳一県本部長も「先生は必死だ。我々もこたえなければ」と力が入る。
■「縁切った」
「選択肢がない」
群馬5区の中山間地域にある特定郵便局長が、ぼやいた。選挙区には郵政法案の採決を棄権し、その後、党本部に民営化賛成の意思表示をした自民前職の小渕優子氏(31)が立候補している。
近くの特定郵便局長も「結局どうなるんだろうねえ」と将来の不安を口にする。「国民新党か新党日本の候補者がいたら、応援したかも知れないのに」と思う。
「もう縁を切った状態です」というのは、青森県内の大樹の男性会員。前回までは、青森1区の自民前職、津島雄二氏(75)のため、自分の身内だけでも20〜30票は集めてきたと胸を張る。
しかし、全国特定郵便局長会の地区会顧問をしていた津島氏は、修正法案に賛成した。
公示後、津島氏が自宅近くに遊説に来たが、男性は顔を出さなかった。「今回は知らんぷりですよ」
■野党は秋波
宮城1区の民主新顔、郡和子氏(48)は、父がかつて仙台市で特定郵便局長をするなど親族に郵政関係者が多い。
公示前、郡氏は同市内で特定郵便局長OB数人と会合を持った。陣営関係者は「あくまで地縁血縁の範囲で支持をお願いした」というが、郵政票の切り崩しに励む。
埼玉県内では、共産党も郵政票を狙う。
□「逮捕者出たら…」現役局長ピリピリ
現職の特定郵便局長ばかり約40人が参加するメーリングリストがある。
8月中旬までは、郵政民営化法案や郵政解散に意見するメールが盛んに流れていた。だが、下旬以降、ぱったりやんだ。
同じころ、千葉県内の特定郵便局長に全国特定郵便局長会(全特)の地元幹部から「全特のバッジを表で付けないように」と、電話連絡があった。
「全特もびびっている。選挙運動をして逮捕者が出たら、今度こそつぶされる」。この特定局長は背景を説明する。公務員である特定郵便局長は「政治的行為」が禁じられている。01年参院選では、郵政OB候補の支援をした特定局長らが公職選挙法違反容疑で逮捕された。