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〈一票のまなざし:1〉成田空港地位低下に危機感

2007年07月19日

 ゴォーーー。地鳴りのような騒音を響かせながら、民家の上空約40メートルを航空機が飛ぶ。

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用地買収が進まない暫定滑走路南側。東峰地区で滑走路により近い神社は上空20メートルを航空機が飛ぶ

 成田空港の暫定平行滑走路から南に約400メートルの成田市東峰地区。滑走路建設予定地に位置するが、地権者との交渉は暗礁に乗り上げ、取り残された地区だ。

 日本の表玄関・成田は、41年前の建設決定以来、常に「政治」とともにあった。航空自由化、アジア諸国との連携強化を図るアジア・ゲートウェイ(AGW)構想。時代を反映して政策も移り変わる中、成田を取り巻く状況は厳しさを増す。

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 アジアのハブ(拠点)空港としての役割を担い、国際航空需要に対応するには、成田の機能拡充は必要不可欠――。9日午後。成田空港近くのホテルに、周辺9市町の「成田空港周辺市町議会連絡協議会」の議員約40人が集い、「空港の完全化と機能拡充に関する決議」を採択した。

 5月に空港周辺の経済団体が、滑走路の再延伸も盛り込んだ決議を採択。6月末には県と成田国際空港会社(NAA)が共同で、税関の24時間開庁化などを求める「成田空港AGW特区」申請を国に行うなど、「完全空港化」、機能拡充を求める動きが活発化する。

 成田では暫定平行滑走路(2180メートル)を北側に延伸し、2500メートルにする工事が進む。10年3月までの供用開始で、発着回数が2万回増え、年間22万回になる。

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 一方、4本目の滑走路(2500メートル)整備など再拡張が進む羽田空港。AGW構想にも後押しされ、上海便などの近距離チャーター便の拡充が決まった。

 5月には、政府の規制改革会議が成田・羽田のすみ分け廃止を求める意見書を発表するなど、「成田は国際線、羽田は国内線」としてきた「内際分離」の原則も揺らぎ始めている。

 羽田の国際化推進が、政府のAGW構想に盛り込まれたことを受け、県と県内25市町村は6月初旬、内際分離の原則の堅持を求める申入書を国交省に提出した。

 地元の小泉一成・成田市長は「(内際分離の)原則が崩れると成田の街づくり計画の前提が崩れる」として、なし崩し的な羽田の国際化に警戒感を強める。

 さらに、官僚出身の黒野匡彦氏から民間出身の森中小三郎氏へ、官邸主導による突然のNAA社長交代劇が、地元の頭越しであったばかり。

 ある地元経済団体の幹部は「成田空港をめぐる問題は国の施策と直結している」とし、今回の参院選では「空港の機能拡充を求める地元の要望を反映し、国に『モノが言える』政治家を選びたい」と話す。

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 激しい反対闘争の歴史と、航空機の騒音被害を受け入れ続けてきた地元に成田空港がもたらす「恩恵」は大きい。

 NAAによると、04年度の周辺7市町(合併前の下総町、大栄町を含む)の固定資産税は約220億円で、開港前の70年の約77倍だ。

 空港周辺の地域振興のための「成田財特法」で、国道整備や河川改修などに使われた事業費は、70年から05年までで約5517億円。空港は4万7000人以上の雇用創出もしている。

 だが成田は、用地内に残る反対派農家の耕作地などを迂回(うかい)するため、空港運用が制限されている「不完全空港」。

 空港予定地内には、なお約3.6ヘクタールの未買収地が点在。暫定滑走路の再延長には地権者との話し合いが欠かせないが、糸口は見えていない。

 NAAの黒野特別顧問は「首都圏空港のキャパシティーは致命的に不足している」と指摘。「成田の限界が日本の限界になってはならない」とし、さらなる機能強化を示唆する。北伸後の成田の「青写真」について、森中社長は「これからの課題」と言う。南側再延伸については「地権者と誠心誠意向き合う」と話すにとどまっている。

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