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〈この6年・これからの6年〉ケアマネジャー

2007年07月22日

 自宅で暮らすお年寄りが、どんな支えがあれば安心して暮らしていけるのか。そのプランを立てるのが、横浜市緑区の社会福祉法人でケアマネジャーを務める石井郁子さん(54)の仕事だ。

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石井さんとは別の社会福祉法人で開催されたホームヘルパー2級の養成講座=横浜市青葉区で

 「階段を下りるのにはヘルパーが必要ですか」

 「ここは大丈夫なので、ヘルパーさんには買い物や病院に行くのに付き添って欲しい」

 「ベッドに手すりをつけると、起きあがるときに楽ですよ」

 市内全域にいるお年寄りのもとを訪れ、ヘルパーが支える中身を、本人やその家族と意見を交わしながら決めていく。

 00年4月、「介護」が変わった。それまで自治体が介護の対象者や内容を決めてきたが、個々の介護の内容を利用者が選んで契約する介護保険制度が導入された。

 01年は、その翌年で、48歳だった石井さんは担当する約100人のプラン作りに追われる日々だった。

 「『社会全体で高齢者の介護を支える』という理念で始まった。立ち止まって考える余裕のないほど忙しかったが、期待と使命感で楽しかった」

  

 ■10兆円市場

 「10兆円市場」

 高齢化社会を見越し、介護を取り巻く現場には、そんな値もつけられた。ビジネスチャンスとみる企業の参入が相次ぎ、厚生労働省も、その流れを後押しした。

 制度がスタートして1年ほどのころ、石井さんは講演会で、厚労省の担当者から、こんな言葉を聞いた。「もっとサービスを使わせないと。福祉用具の利用が伸びないのは、ケアマネジャーのプランが悪いからだ」

 売上増をめざす「営業マン」のような姿に戸惑った。

 介護サービスの「訪問介護」に限ってみると、01年に1万1644だった事業所数は、06年には2万911に。利用者数は60万313人から88万9246人に増えた。

   

 ■「質」へ転換

 今年6月、厚労省の処分を受け、訪問介護大手「コムスン」の親会社が介護事業からの撤退を表明した。事業者の「量」から「質」に軸足を移したい厚労省の意向が背景にあったとみられる。

 介護保険導入から7年間で、さまざまな問題が浮き上がるなか、石井さんは昔を懐かしむ時間が増えた。

 導入前は自身がヘルパーだった。天気がよければ、担当していたお年寄りの車いすを押して散歩に出かけ、行きつけの美容院にも付き添った。緩やかな時間のなかで、本音の悩みを聞くことができた。

 だがいまは、散歩や美容院の付き添いは介護保険の適用外となり、認められない。多くのヘルパーは分刻みのスケジュールを抱え、お年寄りとゆっくり話をする余裕もない。

 「誰でも望めば介護を受けられるという、いまの制度を導入したのは間違いなく意義があった。しかし、予算に合わせた枠に介護を無理やり押し込めてはいないか。お年寄りの暮らしに寄り添った豊かな介護ができているのだろうか」

 石井さんの自問が続く。でも、後ろを振り返ってばかりもいられない。

 高齢化は年々進み、介護を必要とする人は増え続ける。

 「夢を持って、この仕事に打ち込みたい人は地域にたくさんいる。社会全体で高齢化社会を支えるという、最初の理念にもう一度立ち返れば、理想の介護は私たちでつくれるはずだ」

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