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〈公と私:1〉環境・景観 「保全」「規制」あいまい

2007年06月28日

 京都府と大阪府にまたがる西山。ふもとの西京区大原野地区から入ると、途中で大きな鉄製のゲートに遮られる。数年前から、許可なしで車は入れない。

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京都市が開いた新景観政策の説明会で、資料を見る参加者=06年12月、中京区役所で

 10年ほど前から道の脇に不法投棄が増え、斜面の一部がハンググライダー愛好家に踏み荒らされたこともあった。ゲートは地元自治会が環境保全のために設けた。「昔は柿や栗、マツタケがたくさんとれた。田んぼの水も山が蓄えてくれる。我々は山の恵みで暮らしてきた」と、地元の武川粂次(くめつぐ)さん(62)は話す。

 西山の多くは私有地だ。武川さんも所有者の一人だが、どこが自分の山かはわからないという。毎年9月に所有者らで雑木を刈る。「地元に住むみんなの山」との意識があるという。   

 この西山に、4月だけで4000人ものハイカーが訪れる。目当てはカタクリの花。府のレッドデータブックで準絶滅危惧(きぐ)種になっているギフチョウがいることも、人気に拍車をかける。

 長岡京市の「乙訓の自然を守る会」は、カタクリとギフチョウを守ろうと99年から活動を続ける。花が咲いている間、メンバーが群生地の周りで見張る。10人ほどで始まったが、訪れる人にも協力を求めて今年は約400人が参加した。

 群生地は私有地だ。守る会は見学コースのロープを張る許可を得るために所有者を訪ね回った。武川さんはゲートの鍵は貸すが、会の活動に積極的ではない。「自分の山の木を炭焼きしてきた人に、もし保護のために切るなと言うことがあればトラブルになる」。そのままにしておいてというのが地元の本音だという。

 環境基本法が93年に制定され、「環境の恵沢の享受と継承」を国民の責務と定めた。環境保護の世論は高まる。守る会代表の宮崎俊一さん(67)は「それでも私権を重く見るのが現在の法体系。保護を具体的な取り組みにつなげる法や条例の整備が必要」と話す。   

 京都市中心部では規制を強める新しい景観政策が9月に始まる。建物の高さを低くし、デザイン基準を詳しく作り、屋上看板や点滅照明の屋外看板は全域で禁止する。

 「このままの施行は大変!!」。新景観政策をめぐる市議会の議論が最終局面を迎えていた今年2月。新聞に全面広告が載った。宅建業者や市民らでつくるグループが、新政策に疑問を呈した。中高層の分譲マンションの住民らは、建て替える際に今よりも低い建物しか建てられなくなるとして、「資産価値が下がる」などと反発した。マンション所有者らは「古都の景観という社会的利益のために、土地に資産を有している住民が犠牲になる」と、市に補償を求めている。

 景観という「公」の利益と私権がぶつかる。

 「規制に痛みを伴うことは理解しているが、今回の取り組みが京都ブランドを確固たるものにすると確信している」。桝本頼兼市長は昨年11月の市議会で述べた。3月に新景観政策の一環で、嵐山や大文字などへの眺めを遮る建物を規制する条例が成立すると、こう述べた。「個人の財産は公共の福祉に制約されるのが世界の常識。ある程度の痛みは我慢してもらいたい」

 反対する人々も景観を守ることに「総論は賛成」だ。ただ、目指す景観が漠然としている。規制で守れるものなのか。十分な説明が尽くされていないと受け止めている。

    ◇

 安倍首相は3年後に憲法改正の発議をするという。そうなれば、7月の参院選で私たちが選ぶ議員はその局面に立ち会うことになる。変わりゆく「公」と私たちのバランスを考える。

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