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〈美しい国とは:2〉格差是正 地方税、奪い合う図式

2007年07月09日

 「最大1800もの市町村のデータを入れるシステム変更。100万人の納税義務者がいる大阪市では数億から十数億円かかるかもしれません」

 5月下旬。大阪市の税務担当者は、生まれ故郷など居住地以外の自治体に一定の住民税を納める「ふるさと納税」が導入された場合の税務システム改良費の試算を業者から示されて絶句した。

 「税収が減る制度のために市民の税金をかけなければいけないなんて」

 「ふるさと納税」は、都市と地方の税収格差の縮小につながるとして、菅総務相が提唱した。参院選の自民党のマニフェストも「『ふるさと』を大切にする気持ちを支援」と取り上げた。

 導入されれば、約1兆2000億円の住民税が対象となるとみられる。個人市民税約854億円のさいたま市の相川宗一市長は「最大で約85億円の減収になる」と危機感を募らせる。

 受け取る側の地方からの賛成の声もそう多くない。高知市の税務担当者は「1億円前後を予想するが、確実性がない。個人の思いに期待する税は絵に描いた餅と同じ」。

 大分県姫島村(2500人)では、村外に出た現役世代約1000人が平均約1万円を納税していると仮定。全員がその2割をふるさとへ納めたとしても、増収分は年間約200万円にしかならない。村の予算は年間約30億円。職員は「誤差の範囲に過ぎない」という。

   ■   ■

 福岡県の中央部、筑豊地区にある福智町は、全国から視察が絶えない。

 06年に合併する前の金田(かなだ)町が81年、方城町が82年、赤池町が92年にそれぞれ財政再建団体に転落。徹底した合理化を進めて借金を3割以上削減し、復活した経験をもつからだ。

 その福智町の広報誌に昨年12月、「財政再建再び」の見出しが躍った。1万円札90枚が大きく描かれ、「赤ちゃんの背中にも90万2043円の借金」と衝撃的な事実を突きつけた。

 小泉政権が進めた三位一体改革は、約5兆円の国庫補助金を廃止し、約3兆円を国税から地方税に振り替えた。地方交付税も臨時財政対策債を含めて約5兆円削減した。

 だが、増えた地方税は人口に比例する住民税で、減少した地方交付税は地方の小規模な自治体に手厚かったことから、都市と地方で大きな歳入差を生じさせた。

 人口約2万6000人の福智町にもたらされたのは、約6000万円の町民税アップと約4億円の地方交付税の削減。約237億円に上る借金を返せる見通しは立たない。浦田弘二町長は「国の言うとおり財政再建も合併も乗り越えてきたが、このままでは再び合併しなければならないかもしれない」と話す。

   ■   ■

 安倍首相は、都市と地方の格差解消を掲げる。先月19日に発表された「骨太の方針2007」には、地方が主役の国づくり、地域の活力なくして国の活力なし――など地方重視の文言が並ぶ。

 だが、具体策になると、少子化対策や企業誘致などで成果を上げた自治体に交付税を手厚く配分する「頑張る地方応援プログラム」が目立つ程度。全国市長会事務局は「地方税を地方同士で奪い合うものだ」と手厳しい。

 地方財政に詳しい斉藤慎・大阪大大学院教授は「三位一体改革は道半ばの段階。安倍首相には分権を進める改革の続行か、中央集権型のばらまき施策の復活の二者択一しかない。現状では、改革を進める以外になく、さらなる合併も必要だろう。中途半端な施策で改革を遅らせると『第2の夕張』が増えるだけだ」と警告する。

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