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〈選択のとき:1〉年金 自助か最低保障か

2007年07月06日

■「空洞化」進み、土台揺らぐ

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 ずさんな年金記録問題をきっかけに、「年金」は参院選最大のテーマになった。老後の暮らしを支えるのが年金。国民の不信は記録問題だけに向けられているのではない。制度そのものが問われている。

 年金の足元を脅かしている最大の問題が「国民年金の空洞化」だ。05年度でみると、本来、保険料を納めるべき人のうち、経済的な理由などで保険料の全額または半額を免除されている人は4人に1人。残る人たちの間でも保険料の未納が後を絶たず、納付率は67%にとどまっている。

 保険料を納めていなければ、その分、年金額は減る。国民年金の満額は現在月6万6000円だが、この額をもらっている人は半数に満たず、低年金の人が多いのが現状だ。

 保険料を納めた期間が足りずに無年金になっている人たちも63万人と推計され、これからの受給世代のうち39万人は確実に無年金になると言われる。今後、こうした低年金、無年金の人たちがさらに増える心配もあり、「国民皆年金」が危うい状況なのだ。

 慶応大の駒村康平教授は「非正社員やパートの増加、雇用の流動化といった時代の変化に対応できていないことが空洞化の最大の原因。社会保険庁を解体して解決する問題ではない。厚生年金の適用拡大が最も有効なのだが、取り組みは不十分」と指摘する。

 あおりを受けているのが生活保護制度だ。受給世帯に占める高齢者世帯の割合は年々増え、今や半分近くを占めている。

 現場を持つ地方自治体からは「高齢者の所得保障は本来、年金の役割だ」と不満の声があがっており、全国知事会と全国市長会の「新たなセーフティネット検討会」は昨年、高齢者を生活保護制度から切り離し、別の生活保障の仕組みを検討する提言をまとめた。

■与党「保険で」 野党「税で底上げ」

 老後の所得保障を国はどこまでみるのか、年金の役割をどう考えるのか。与野党の考え方はくっきりと分かれる。

 自民、公明両党は、いまの社会保険方式を堅持する立場。老後の所得保障は「自助・自立」が基本という考え方で、非正社員の人の厚生年金加入を広げたり、保険料を後から納められる制度を拡大したりすることで、未納や低年金・無年金の人を少なくしたい考えだ。

 これに対し、民主、共産、社民の各党が提唱するのが、税金を使った「最低保障年金」の制度だ。老後の最低限の生活費用は公的年金でまかなえるようにしようという考え方だ。

 ただ、同じ最低保障でも、すべての国民に一律に支給する考え方(A案)から、納めた保険料に応じた年金を基本にしながら、それでも年金額が少なくなる人に不足分を補う考え方(B案)まで幅がある。

 共産、社民はA案の考え方だが、この案の場合、多額の財源が必要なうえ、所得の多い人にも税金を使って年金を支給することに理解が得られるかという問題がある。

 両党とも「所得の多い人への税金投入を減らすことも考える」としているが、所得制限を厳しくした場合、生活保護との違いがわかりにくくなるという面もある。

 一方、民主党は全国民が同じ所得比例年金に加入して、所得に応じてきちんと保険料を納めることとセットで、年金額の少ない人を中心に最低保障をするB案に近い考えをとりつつ、A案のような「基礎部分は税でまかなう」という主張も選挙公約に掲げていて、あいまいさが残る。

 この仕組みでは、所得を少なく申告して保険料をきちんと納めずに最低保障をもらおうとする「不心得者」が出ないよう、所得の把握をしっかり行えるかどうかが課題になる。同党は税と保険料を一緒に徴収する歳入庁の創設や、納税者番号制度の導入も提案。いま以上に透明性や厳しさが求められるとも言える。

■医療・介護含めた将来図必要

 年金制度に最低保障の考え方を取り入れるかどうかは、各国でもまちまちだ。

 カナダはA案のような税による老齢所得保障をしているが、受給には10年以上の居住、満額受給には40年居住と条件があり、所得調査もある。

 スウェーデンは年金が一定水準に満たない場合に差額分を補うB案のやり方で、所得調査などはない。ドイツ、米国などは年金制度での最低保障はなく、低所得者には公的扶助で対応している。

 日本の場合、86年に国民年金が全国民共通の基礎年金と位置づけられ、老後の基礎的な支出をまかなう意味合いが強くなった。ところが、その後の改正で、人口減少や平均寿命の延びに連動して給付水準を引き下げる仕組みが国民年金にも適用されることになり、役割があいまいになっている。

 駒村教授は「生活保護に高齢者が陥らないようにするための所得保障政策として位置づけるのか、あくまで社会保険方式の『年金保険』という位置づけにこだわるのか。そうした視点の議論が必要」と話す。

 別の視点から、年金制度の役割を見直そうという指摘もある。

 千葉大の広井良典教授は、社会保障費全体を底上げするべきだと前置きした上で、「年金は最低保障の部分を手厚くし、所得比例の部分は時間をかけて企業年金などに置き換え、医療や介護、子ども・若者・障害関係の福祉などを充実すべきだ」と提案する。

 「医療などは、リスクの予測が難しく、公的な保障の必要性も大きい」として、例えば医療費の患者負担を3割から2割に戻すことを提案。「子ども・若者関係など人生前半に関する社会保障の強化も必要」と訴える。

 ただ、各党とも分野ごとに施策の充実を訴えるものの、社会保障全体の将来ビジョンは示せていないのが実情だ。

 広井教授は「低成長の時代に、あらゆる分野を公的にみるのは難しくなっている。社会保障のあり方、全体のビジョンを、財源とともにきちんと示すことが大事だ」と話している。

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 参院選で問われるべきテーマは? 各党の主張は? あなたの1票がどんな未来につながるのかを5回に分けて考える。

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