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〈選択のとき:4〉財政火の車 再建策は

2007年07月09日

■借金、年収の9.6倍 家庭なら破綻

イラスト

  

 「日本は世界中で一番の借金大国だ」。尾身財務相はこう話し、財政の厳しさを訴えてきた。

 国の財政がどのぐらい危機的なのかは家計にたとえるとわかりやすい。

 07年度予算をもとに考えてみよう。1カ月の世帯収入は40万円なのに支出は58万円に達する。まさに放漫家計だ。不足分の18万円は毎月、新たに借金している状態だ。

 いったい、何に月58万円も使っているのか。

 まず一家の家計費(一般歳出)は33万円で、そのうえ田舎の実家への仕送り(地方交付税)が10万円。さらにローンの元利払い(国債費)が15万円にも上る。年度末のローン残高は4600万円で年収の9.6倍になり、しかも年々膨らんでいる。一般の家庭なら、破綻(はたん)することは確実だ。

 実際の財政状況を示したのが図下のグラフだ。一般会計の歳出と一般会計税収との差が、1990年ごろを境に急速に開いていっているのが分かる。歳出と歳入の差が大きく広がる様子は、財務省内で「ワニが口を開いている状態」(幹部)といわれている。ワニの口の開き具合が大きくなるのに従って、国債の発行残高である「公債残高」が急速に積み上がった。

 最近の好景気を受けて税収が伸び、ワニの口は少し狭まってはいる。だが、それでも07年度当初予算で歳出が82.9兆円なのに対し、税収は53.5兆円。その差はなお29兆円に上る。こうした差を埋めるために、今年度も新たな借金である新規国債発行が25.4兆円行われる予定だ。

 経済協力開発機構(OECD)によると、債務残高を対GDP(国内総生産)比で見た場合、日本は約177%。米国は約62%、財政状態が悪いと言われるイタリアでも121%にとどまる。

 ワニの口をどう狭めていくのか。極論すれば、その方法は「歳出を減らすか」「税収を増やすか」のどちらかしかない。

 小泉政権は「歳出減らし」に軸を置き、徹底して予算の削減を行ってきた。しかし、歳出削減は公共事業費の減少だけでなく、生活保護の縮小など社会保障費の抑制にも及ぶ。神野直彦・東大教授は「国民生活を支えるサービスが明らかに落ちている。このままでは支え合いのシステムがさらに壊れる」と心配する。

 これ以上歳出を削れない、となれば、今度は「増税を通じ、税収を増やす」必要が出てくる。

■規律のゆるみ、バブル前から

 国の財政は、なぜここまで悪くなったのか。

 発端は、1964年の東京オリンピックの後の景気後退だ。税収は伸び悩み、65年度から国の借金である国債の発行に踏み切った。当初少なかった発行額は78年度に10兆円を超え、高水準の状態が続くようになった。

 財政運営は、不景気になると国が歳出を増やして景気を刺激し、好景気時には財政再建に努めるのが普通だ。だが、日本ではバブル景気で税収増に沸いた80年代後半も公共事業費を増やす「大盤振る舞い」を続けた。円高不況を克服するための内需拡大や、地方経済てこ入れなどを理由に公共事業の伸びは続いた。

 一橋大の渡辺努教授は「最近の財政悪化はバブル崩壊後に急に起きたわけではない。四半世紀続いた財政規律のゆるみが底流にある」と語る。

 好景気でも財政再建を進めなかったツケは、その後、回ってくる。

 90年代初頭にバブルが崩壊すると不良債権問題が明るみに出て、景気は大きく悪化。公共事業を拡大して景気を刺激せざるをえなくなり、国の財政は急速に悪化した。

 財政を立て直そうとする試みもあった。橋本政権は97年、「財政構造改革法」を成立させた。財政赤字幅の数値目標を掲げ、公共事業などの歳出削減を進める法律だった。だが、同年秋以降、金融不安が表面化し、98年夏の参院選で自民党が敗北。結局、橋本内閣は退陣に追い込まれた。

 代わって登場した小渕政権は財革法を凍結。9兆円の大減税など景気刺激策を進め、借金財政は雪だるま式に悪化した。

 その流れを変えたのが01年に登場した小泉政権だ。「小さな政府」を掲げ、00年度に89.3兆円あった歳出は03年度には82.4兆円まで縮小。公共事業費も98年度には約14.9兆円だったが、06年度には約7.8兆円へと半減した。

 それでも高齢化で社会保障費は増え続け、新規国債発行は毎年30兆円前後に。国の借金残高は過去最高を更新し続けた。

■将来への道筋、与野党とも示せず

 厳しい財政状況にどう対処するのか。姿勢は与野党で大きく分かれる。

 自民、公明両党の政策の中心は、小泉前政権の「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)06」だ。政策経費をその年の税収で賄える「基礎的財政収支」を2011年度に黒字化する目標を掲げ、5年で歳出削減は11兆〜14兆円行い、それでも足りない財源は消費税引き上げなどの税収増で対応する路線をとる。

 ただ、その肉付けは十分ではない。安倍政権は今年6月の「骨太の方針07」で歳出削減を具体化しようとしたが、与党側の反発で断念。消費税についても、安倍首相は「消費税を上げないとは一言も言っていない」としながらも、実際には参院選後まで具体的な議論を封印する姿勢だ。

 民主党は「2011年度に基礎的財政収支を黒字化する」という目標は、与党と全く同じだが、その道筋は異なる。

 消費税率は5%で据え置き、所得税については高齢者向けの控除の拡大で減税を打ち出す。財政再建目標は歳出減で達成するシナリオのようだ。

 公共事業のコスト引き下げや、公務員の人件費削減、国から地方への補助金の原則全廃などで大幅な削減が図れるという。ただ、農家の所得補償制度や高校の無償化など歳出増項目も目立つ。

 社民党と共産党は「住民税増税の中止」や「所得税の控除拡大」などで庶民は減税し、大企業や富裕層は増税するという。社民は「介護保険の利用料を所得に応じて軽減」、共産は「子どもの医療費無料化」など歳出増項目を掲げている。

 ただ、与野党とも借金残高を中長期的にどう減らしていくのかという具体的な道筋は明らかにしていない。次世代への負担のツケ回しが減るのかどうかは、不透明だ。

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