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〈選択のとき:5〉問われる憲法と自衛隊

2007年07月10日

■海外派遣、新法作り拡大

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 自衛隊の海外派遣を可能にする国連平和維持活動(PKO)協力法が制定されたのは92年のことだ。今年1月には防衛庁が「省」に昇格し、これまで副業扱いだった自衛隊の海外活動は「本来任務」になり、憲法と自衛隊の関係が改めて問われる時代になった。

 訓練や南極観測支援を除くと、自衛隊の最初の海外派遣はPKO法ができる前の91年だ。海上自衛隊の掃海艇など6隻が機雷掃海のためにペルシャ湾に派遣された。

 イラクのクウェート侵攻を機に米軍などがイラクを攻撃した湾岸戦争で、日本政府は130億ドルの戦費を負担した。だが、米国からは「資金提供だけで済ますのか」と批判が噴出。あわてた政府が法的根拠もあいまいなまま、急きょ自衛隊派遣を決めたのだ。

 当時外相だった中山太郎・衆院憲法調査特別委員長はふり返る。「国の生き方を根本から見直し、政治家が憲法というものを正面から真剣に議論してこなかったツケが表れた」

 「湾岸トラウマ」に懲りた日本は、翌92年にPKO法を成立させ、国連が編成するカンボジアPKOに部隊を派遣。その後も、モザンビークやゴラン高原、東ティモールなどに派遣を続けたが、いずれも国連や国際機関の要請に基づく「国連の枠内」での活動だった。

 01年9月に起きた米同時多発テロは自衛隊の海外派遣を質的に変化、拡大させていった。PKOが編成されずに、アフガニスタンやイラクを攻撃した米軍には従来の法律では支援できない。ところが米側は「ショー・ザ・フラッグ(旗を見せろ)」「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(陸上部隊の派遣を)」と、自衛隊の派遣を求めてきた。

 結局、その要求を満たす形で、01年にテロ対策特措法をつくってインド洋での米英軍艦艇などへの給油支援にあたり、03年に成立させたイラク復興支援特措法で、初めて陸海空3自衛隊の同時派遣に踏み切った。

■対米協調優先、あいまいさ残る

 日米同盟重視の中で拡大する自衛隊の海外派遣だが、問題点も浮き彫りになっている。集団的自衛権の行使や海外での武力行使を禁じる現行憲法下で、どこまで自衛隊が海外で活動できるのかという点だ。

 同時多発テロの報復として米国は個別的自衛権を発動してアフガニスタンを攻撃した。この米軍と協調行動をとれば、集団的自衛権の行使にあたる可能性がでてくる。政府は「非戦闘地域」という概念をひねり出し、そこでの支援は、自衛隊の武力行使につながらないという論法をとった。

 当時の小泉首相は憲法との関係について「あいまいさは認める。法律的な一貫性、明確性を問われれば答弁に窮してしまう。そこにはすき間がある」と国会で答弁した。

 イラク派遣でも自衛隊は「非戦闘地域」で活動するとされたが、治安は悪く、武装集団に襲われて応戦する事態に発展する危険と常に隣り合わせだった。小泉氏も「いつどうなるかということを断言することはできない」と答弁していた。

 一方、憲法との整合性とは別に、与党内からも米国の戦略に引きずられがちな日本外交への懸念も出始めている。01年11月にインド洋に派遣した海自の補給艦はいまも米軍艦艇などに無償で給油を継続。イラクでは空自による多国籍軍への輸送支援が続いている。

 3日の自民党国防関係合同部会。政府は7月末で期限が切れるイラクでの自衛隊活動の基本計画をさらに1年間延長したいと説明。中谷元・元防衛庁長官は「米国の先のことも見越して政府は戦略を研究しているのか」とただしたが、外務省幹部から答えはなかった。

 大野元裕・中東調査会上席研究員は「大切なのは何に貢献するかだ。冷戦後の自衛隊のあり方は外交ツールの側面が強くなってきているだけに、外交目標を何に置くかが問われる」と指摘する。

■9条の行方と表裏一体

 安倍首相が当初「参院選の争点に」としていた憲法改正は、年金問題にかき消された。だが、首相は6月に「3年後に憲法改正をめざしていく」と語り、改憲への意欲は相変わらずだ。集団的自衛権について研究する有識者会議も動き出した。

 憲法改正の最大の論点は9条をどうするかに帰結する。つまり自衛隊の海外での活動をどこまで認めるべきなのか、裏返せば、犠牲をどこまで覚悟するのかということだ。05年の日米防衛首脳会談でラムズフェルド米国防長官が日本側に「平和協力活動は血を流してこそ未来につながる」と語ったこともある。

 森本敏・拓殖大大学院教授はこう指摘する。「海外での自衛隊の役割と機能が広がってきた。憲法上の集団的自衛権や武力行使の問題が日米同盟と国際平和協力の制約要因となっている」

 自民党が05年にまとめた新憲法草案では、9条を改正して「自衛軍」をつくり、「国際的に協調して行われる活動」に積極参加することを表明。民主党も昨年12月の「政権政策の基本方針」で、国連の要請によって「積極的に参加する」と明記した。だが、両党とも危険が伴う任務をどの程度まで担うかという肝心の点は煮詰まっていない。

 阪田雅裕・前内閣法制局長官は「集団的自衛権行使や集団安全保障に加わることは血を流すこともありうべしとの覚悟の表明だ。こういう活動まで認める憲法を『平和主義』というのは羊頭狗肉(ようとうくにく)ではないか」と話す。

 両党の主張で明確に異なるのが自衛隊派遣の前提条件だ。自民党は国連の枠にこだわらず、特措法をその都度つくらなくても多国籍軍に参加できる仕組みを検討中だ。これには「米国の連合部隊になっていく」(中山太郎氏)との懸念もある。

 対する民主党は米国主導の多国籍軍には参加せず、「国連の要請」が前提だ。しかし、国連なら実力部隊にも自衛隊は参加可能だとし、これは憲法で禁じた武力行使には当たらないとの立場だ。

 今年5月に憲法改正国民投票法が成立し、早ければ3年後に「改憲案」を国会に提出・審議する仕組みができた。参院議員の任期は6年。今回の参院選で憲法の行方を左右する可能性のある議員を選ぶことになる。

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