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〈決戦の現場から:2〉「若さ」か「組織」か

2007年07月14日

■愛媛 自民ベテラン 涙の訴え

イラスト

  

 田中 克彦 40 〈元〉運輸省職員  共新

 友近 聡朗 32 〈元〉Jリーグ選手 無新〈民〉〈社〉〈国〉

 関谷 勝嗣 69 〈元〉建設相    自現〈公〉

   ◇

 13日、愛媛県宇和島市内の山間部。降りしきる雨の中、ビニールがっぱに身を包んだ友近聡朗氏がスーパー前で声を張り上げた。「ひとつの政権与党が50年、60年と続いてきた。緊張感のない政治が膿(うみ)やひずみとなって表れたのが、消えた年金記録問題だ」

 友近氏は愛媛FCで主将を務め、J2昇格にも貢献した。民主党の小沢代表が直々に口説いたのも、「若さ」「清新さ」をアピールできると踏んだからだ。

 一日に20カ所前後の辻立ちをこなす。サッカーユニホームに身を包み、自転車で住宅街を走る。広場で子どもたちにサッカーを教える。瀬戸内海の島々はモーターボートで巡りもした。繁華街に立てば、たちまち若者や親子連れらに囲まれ、「本物の友近だ」「頑張れよ、応援しとるけん」と握手攻めにあう。

 ここにきて「民主党」も前面に出す戦術をとり始めた。公示日前には小沢代表、鳩山由紀夫幹事長、菅直人・代表代行らが次々と訪れ、「緊張感のない政権に信任を与えてはならない。友近さんが勝利すれば政治が変わる」と訴えた。

 対する自民党の基盤は固い。愛媛選挙区で敗れたのは、逆風にさらされた89年だけ。衆院では、96年に小選挙区制が導入されてから4選挙区を4回連続で全勝している。県都・松山は塩崎官房長官のおひざ元でもある。

 「勝っても負けても何千票差。自民党がかぶる逆風は、堂々と受けて進んで行く。負けるはずはないと……」

 10日、松山城下のホテル。森元首相を招いた会合で、関谷勝嗣氏はここまで述べると言葉に詰まり、涙を流した。森氏は「関谷勝嗣の涙を初めて見た。苦しいんでしょう。気持ちをくんでいただきたい」と支援を呼びかけた。

 関谷氏は衆院8回、参院2回の当選を重ねてきた。だが「友近人気」と自民党への逆風を前に、党本部の認定は「黄色信号」。初めて党本部の「重点選挙区」にも指定された。

 苦戦を強いられた陣営がたのむのは「組織」の力だ。これまで県議、市議らの後援会ごとに、数十人〜数百人規模の集会をほぼ県内全域で開催してきた。関谷氏自身も集会では「知事も、県連も、国会議員も一生懸命やってくれている。塩崎官房長官からもたびたび電話をもらう。天下の自民党を挙げての戦い。自信を持っている」と強調する。

 「ご当地のみかんの問題、河川改修などを手伝ったことを、楽しく思い出している」。8日夜、関谷氏は公民館に集まった古くからの後援者ら約150人に、地域の課題から参院憲法調査特別委員会の委員長として国民投票法の成立に尽力した経験まで、40分にわたって語った。そして、こう訴えかけた。

 「議員生活31年のすべてを見てほしい」

■佐賀 尾を引く差し替え騒動

 川上 義幸 52 〈元〉副知事   自新〈公〉

 川崎 稔  46 〈元〉日銀調査役 民新〈国〉

 中尾 純子 54 〈元〉みやき町議 共新

   ◇ 

 「『副知事は知っていても、川上は知らん』という言葉を何度もいただきました」

 佐賀市内で12日に開かれた出陣式で、自民党の川上義幸氏はこう嘆いてみせた。1カ月半前、陣内孝雄氏の「後継」として、佐賀県副知事から転身した。「副知事でいっしょに仕事をしたのは、ここにお集まりの市町長さんばかり。今お願いしなきゃいけない県民の皆さんと会う機会は少なかった」

 九州新幹線整備、有明海再生――。立候補表明から1週間後、県庁で開いた政策発表の記者会見。川上氏が挙げたのは、県にまつわる政策課題ばかりだった。聞いていた記者が思わず突っ込んだ。「まるで知事選の候補みたいだ」

 党本部は渋る県連を押し切り、陣内氏から川上氏に公認候補を差し替えた。73歳で5選をめざした陣内氏の交代で、確かに野党側の「高齢・多選批判」はやんだ。

 だが、対する民主党の川崎稔氏は3年前の参院選にも立候補し、自民候補に2万票差まで肉薄している。急ごしらえの川上氏に知名度不足は否めない。さらに「個人後援会の連合体」とも評される自民党組織にあって、陣内氏の後援会組織が丸ごと川上氏にのらないのも事実だ。

 「党が勝つためには、私の選挙以上にがんばりたい」。陣内氏は5月16日の立候補断念の会見で言い切った。だが、後継が決まってからは、公の場に姿をあらわすことはほとんどなくなった。陣内氏の地元事務所の川原一次郎所長は「党に引きずり降ろされた以上、前に立つ資格はないと考えていたのだろう」。出陣式にも、自民の県選出国会議員のなかで唯一、姿を見せなかった。

 陣内氏を支えてきた後援会幹部らの心境も複雑だ。川上氏の陣営に名を連ねる、ある市長は「陳情は大切だが、自分の腹を切って血を流すほど応援するわけじゃない」と本音ものぞかせる。

 佐賀選挙区で自民党はこの半世紀負けなしで、現在20連勝中。県連内には「ほかのどこより党を支えてきた」との思いが強い。だが、最近、党本部への思いは複雑だ。

 2年前の郵政選挙。県連は、党本部が差し向けた「刺客」と戦う郵政反対派の今村雅弘、保利耕輔両氏を独自に推薦。選挙後、県連会長が責任をとって辞職する事態になった。

 そこに降ってわいた差し替え騒動で、党本部への不満がくすぶり続ける。「安倍首相が指導力を発揮した、という実績づくりのダシにされたようなもんだ」

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