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〈決戦の現場から:3〉「身内」で奪い合い

2007年07月18日

■神奈川 公明、選挙区で自民侵食

図表

  

斉藤さちこ 39 メーク講師     国新

和田茂   52 国際運輸労部長   社新

溝口敏盛  60 〈元〉不動産会社員 諸新

畑野君枝  50 党中央委員     共前

水戸将史  45 〈元〉県議     民新

松あきら  59 〈元〉宝塚歌劇団員 公現

牧山弘恵  42 米国弁護士     民新

小林温   43 〈元〉コンサル業  自現

   ◇

 「地元の歩道橋のために大臣が会ってくれるなんて……」

 国土交通省の大臣室。横浜市神奈川区の町内会長は、差し向かいのソファに座って陳情に耳を傾ける冬柴国交相を信じられない思いで見つめていた。昨年11月のことだ。

 国道にかかる歩道橋が老朽化し、同省の横浜国道事務所にかけ替えを要望した。だが、反応は鈍く、「困ったことがあれば相談してください」と声をかけてくれていた近くの公明党県議に話を持ち込んだ。

 そこからは早かった。話をつないだ同党の松あきら参院議員も同席し、要望書を受け取った冬柴氏は「わかりました」。07年度の国交省予算で、エレベーター付き歩道橋の建設費3億円弱が決まった。「頼りになる。今回は世話になった松さんに1票を入れる」と町内会長は満足そうだ。

 公明党が自民党と連立を組んで8年になる。国政選挙では「与党」の強みを生かし、さらに選挙区で自民党候補を支援する見返りに「比例は公明」と訴えて党勢を伸ばしてきた。それが最近では、選挙区でも自民支持層を奪い始めている。

 「目線が違う。庶民や中小企業、地域の困っている方々の味方になりたい」。公明党の太田代表は選挙戦で、自民党との違いをこう訴える。元宝塚歌劇団のスターから95年に転身し、経済産業政務官、副大臣を歴任した松氏は、その担い手として「商工族」のように振る舞う。

 6月19日。建設業など地元の企業経営者らでつくる「松の会」の会合が横浜市内であった。約60人を前に、松氏は経産副大臣としての実績を語り「中小企業には優遇税制をしっかりやらなければならない」とあいさつ。横須賀市に本店を置く湘南信用金庫の服部真司理事長は「松さんをトップ当選させてほしい」と呼びかけた。

 神奈川選挙区の改選数は3。攻勢を受け、自民党は危機感を募らせる。県内の飲食店や理美容、クリーニングなど17業界でつくる団体は今回初めて、松氏の推薦を決めた。自民党県連には「公明党がうちの支援企業を回りまくっている」といった情報も、次々と寄せられている。

 業界だけではない。05年の衆院選では、公明党の支援を受けた神奈川県内の自民党候補が次々と当選した。うち複数の若手はこう明かす。「公明党側から松氏に3000から5000票提供するよう求められている」

 7月5日にあった自民党県連の選対会議では、竹内英明幹事長が「公明党が支援を求めてくるという話を聞いているが、選挙区も比例区も自民党一本でやってください」と改めて確認した。県連幹部はいらだちを隠さない。「庇(ひさし)を貸したら母屋を取られる。そんな結果になったら最悪だ」

■大分 民主が決別、社民猛反発

後藤博子 59 党副幹事長     国現

松本文六 64 医療法人理事長   無新〈社〉

礒崎陽輔 49 〈元〉総務省参事官 自新〈公〉

山下魁  30 党県委員      共新

矢野大和 51 〈元〉佐伯市職員  無新

   ◇

 「野党が割れて厳しいという声を聞くが、矢野は『保守』。保守が割れていて『革新』は1人じゃ。だから勝たなければならない」

 15日、社民党の村山富市元首相(83)は大分市内の集会で、労組の組合員たちを前に熱弁をふるった。「矢野」とは民主党県連が推薦する矢野大和氏のことだ。

 大分選挙区(改選数1)は与党の選挙協力のほころびで全国的に注目された。自民党に復党した大分出身の衛藤晟一氏が比例区に回り、公明党が反発したからだ。ただ、選挙直前に修復し、自民党候補は公明党の支援を受けている。一方で民主、社民両党の野党同士は「けんか別れ」したまま、選挙戦に突入した。

 大分の社民党は、官公労を中心に根強い基盤を残している。このため、01年、04年と参院選では民主党と交互に候補者を擁立する協力関係を築いてきた。今回は「社民党の番」として、同党は松本文六氏を押し立てた。

 ところが、民主党県連は「順番の約束はない」として別に矢野氏を擁立した。主導したのは県連代表で、小沢代表の側近とされる吉良州司衆院議員だった。

 それが、村山氏の怒りを増幅させた。村山氏と小沢氏は、ともに与党にあった非自民連立の細川政権以降、小沢氏の政治手法やめざす政党のあり方をめぐって溝がある。「社民の牙城(がじょう)」とされる大分で、2大政党化の流れを決定づけよう――。そんな民主党の狙いを感じ取ったのだ。

 「自民党や社会党からの寄せ集めで、理念がばらばら。いずれ民主党は割れる可能性がある」。村山氏はこう語り、松本氏支援の先頭に立つ。村山氏と松本氏が2人で写ったポスター5000枚を県内にくまなく張った。それを見た支援者から「村山さんが比例区で選挙に出るのか」と問い合わせがあったほどだ。

 民主党にも社民党と距離を置く戦いが目立ってきた。

 「大分は55年体制の社民党が残っている。政権交代可能な2大政党にするためには、イデオロギーでない健全な政党を作らなければならない」

 16日、民主党の前原誠司・前代表は大分市内であった矢野氏の集会でこう訴えた。社民党との全国的な協力関係を壊さないよう配慮し、民主党執行部としては矢野氏を支援していない。だが、前原氏のような動きを事実上、黙認している。

 前原氏の持論は、保守層を取り込み、党をまとめる「純化路線」。2年前の代表就任時に「脱労組」を打ち出し、社民党出身議員らとぶつかったこともある。前原氏はかつて地元京都で革新勢力を切り崩し、10年以上かけて民主を自民と拮抗(きっこう)する勢力に育てた苦労話を披露し「大分でもそれが可能になる素地がある」と力を込めた。

 社民勢力を、なおつなぎとめようとする動きもある。2年前、社民党から民主党に移り、大分3区が基盤の横光克彦衆院議員(比例九州ブロック)は、両党の「つなぎ役」。横光氏は表向き、矢野氏を支援しているが、自らが率いる3区支部は自主投票にとどめた。自治労などの支持基盤は「選挙協力を壊したのは民主党だ」と批判し、公然と松本氏を支援しているからだ。横光氏は嘆く。「2大政党制実現のためには社民との協力が不可欠なのに、野党が割れてしまった傷は深い」

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