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〈決戦の現場から:4〉揺らぐ政党の「枠」

2007年07月20日

■滋賀 知事選で有権者に変化

図表

  

徳永久志  44 〈元〉県議    民新 〈国〉

山下英利  54 〈元〉財務政務官 自現 〈公〉

坪田五久男 48 党県常任委員   共新

   ◇

 「琵琶湖の水の環境をしっかりと守って、生態系を維持する法律を準備しています」

 17日夜、自民現職の山下英利氏は個人演説会で環境をテーマに熱弁を振るった。応援の若林環境相も「環境政策は山下さんの了解がないと進まない」と語り、「環境の山下」をアピールした。

 民主党の徳永久志氏も負けていない。「嘉田知事が誕生し、県議選後には民主党の議長が誕生した。滋賀の政治風景はかわった。滋賀は政権交代にむけた試金石だ」

 両陣営が「環境」や「知事」を盛んにアピールするのも、昨年7月の知事選で政治状況が一変したからだ。自民、民主両党相乗りの現職が、環境社会学者の嘉田由紀子氏に敗北。両党は支持層も固めきれなかった。

 激震は4月の県議選でも続いた。嘉田氏の支援団体「対話でつなごう滋賀の会」から公認4人、推薦を含めると12人が当選。一方、自民党は27議席から11議席減らし、過半数を割りこんだ。「知事に対抗したことが、いじめと受け止められてしまった」。党県連幹部は顔色をなくした。

 こうした現象は郡部にも及んでいる。

 琵琶湖東岸に位置する沖島。大津市内から湖岸沿いに車で1時間。そこから小型客船に揺られて10分。過疎、高齢化が進む人口約400人の漁村だ。自民党を長年支持してきた島民たちはいま、口々に振り返る。「みんな嘉田さんに入れた」「嘉田さんなら何か変えてくれると思った」

 環境問題のフィールドワークで学生時代からたびたび島を訪れ、琵琶湖の水質悪化を嘆く嘉田氏の姿を島民たちは見ていた。島の漁協も現職の推薦を見送った。漁協組合長の経験もある茶谷力さん(65)は「嘉田さんが出るとなった時点で、いつものように現職を推す話にはならなかった」と語る。嘉田氏とは年賀状のやりとりを欠かさない間柄だ。

 そして、参院選。沖島では2月に民主党の小沢代表が訪れ、事実上、幕を開けた。集会所に島民の4人に1人、約100人が集まって話に耳を傾けた。「いまは野党だから皆さんの要望を実現できない。ぜひ政権交代をさせてほしい」

 漁協は山下氏に推薦を出している。だが、「徳永氏に投票する」と公言する漁協理事もおり、とがめる人も今やいない。「このままでは変わらない。やらせてみてもいいんじゃないか」という声も少なくないのだ。「島の票は6対4に割れそうだ」というのが茶谷さんの見立てだ。

 こうした有権者の意識の変化を、嘉田氏は「超政党」という言葉で説明する。「いま直面している子育て、環境、財政難などの課題は特定の政党にかかわらない。政党に属している人も、人生すべてが自民色や民主色ではない。だから、教育ならこっち、暮らしならこっちの政党、と選んでいる」

■鳥取 民主に移っても「保守」

常田享詳 63 〈元〉農水副大臣  自現 〈公〉

川上義博 56 〈元〉衆院議員   民新 〈国〉

市谷尚三 69 〈元〉養護学校教諭 共新

   ◇

 選挙戦初日の12日。民主党の小沢代表は岡山で第一声を終えると、チャーターした小型機で鳥取に飛び、山間部の八頭町で演説した。「私の全政治生命をかけて、この鳥取で川上君を当選させてくれることは、参院の過半数を得ることとイコールです」

 鳥取では、衆参とも選挙区選出の国会議員は自民党が独占している。民主党が擁立した川上義博氏も、もとは自民党の衆院議員だった。郵政民営化法案に反対し、05年の総選挙で落選。小沢氏が口説いて引き込んだ、いわば「自民切り崩し」の象徴的な存在だ。

 川上氏は、地域に根ざし、系列の地方議員を抱えた典型的な自民党型の政治家だった。無所属で戦った05年総選挙でも、系列県議の多くが従った。だが、民主党に移ることには抵抗感が強かった。

 「おれは民主党の中の保守系だ。おれが入れば、民主党は変わる」。川上氏は後援会の会合を各地で開き、こう力説して回った。だが「保守」といえば「自民党」という土地柄で、距離を置く議員が続出した。

 公示日の夕方。県西部の境港市であった川上氏の集会で、イメージカラーの黄色いシャツに身を包み、ビラを支持者らに配る柊(ひいらぎ)康弘市議(39)の姿があった。壇上の前で「絶対、勝つぞ」と拳も振り上げた。

 付き合いのあった重鎮県議に引き合わされて川上氏の選挙を手伝うようになり、自らも昨年2月、市議に初当選した。この重鎮は今回、川上氏から離れたが、柊さんは「地元を大切にする政治家だ」と付き従った。

 とはいえ、「民主党の川上」の戦いは容易ではない。支援者に支持を頼んでも「なぜ民主党に変わったんだ。ここは保守地盤だろうが」と怒られることも少なくない。柊さん自身、民主党には入っていない。「民主党ではなく、川上党の戦いです」

 これに対し、自民党は「変節だ」という批判を前面に出す。

 「中央とのパイプを固めてもらえる人でないと役に立たない。相手候補は国会議員にふさわしい人物ではない」

 米子市であった常田享詳氏の出陣式で、相沢英之・元経企庁長官はこう川上氏を批判した。川上氏はもともと相沢氏の秘書。03年総選挙に無所属で立ち、相沢氏を破って当選した経緯がある。

 武部勤・前幹事長は6月28日の演説会で、こう強調してみせた。「あの川上さんがライバルですよ、民主党の。あの人は自民党に育てられたはずなんだけどね」

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