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〈夏の陣 09総選挙 くらしの現場から〉農業 所得減り「超高齢化」

2009年8月21日

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 米どころ、紫波町。

 夏風に青々とそよぐ稲穂が、こうべを垂れ始めた田園風景に、雑草が生い茂り所どころ赤黒い土がむき出しになった一角がのぞく。耕作放棄地だ。

 「あんなに荒れちまうと、元に戻すのは難しい。カメムシやガがわいて困る」。放棄地と農道を隔てて向かい側に住む農業の男性(77)は、ため息をついた。放棄地は隣の集落のある農家の土地だが、5年ほど前から休耕状態という。

 「農家はどこも跡継ぎや減反の問題を抱えている。このままでは、日本の原風景は一気に失われてしまう」

 男性自身も、ひとめぼれなど水稲40アールを作付けするが、所有する水田の3分の1ほどは生産調整(減反)している。「たくさん作るとコメが余って米価が下がる。政府からの補助金をもらうためにも、やりたくないが減反には協力しなければ」とこぼす。

 祖父の代から土地を受け継いだ3代目。3年前にがんを患い、すっかり体力が落ちた。50代の息子は会社勤めをしている。「自分はあと何年働けることか。でも農業の厳しさを見れば、とても息子に継げとは言えない」

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 農林水産省が昨年度初めて実施した耕作放棄地の実態調査によると、県内の放棄地は6952ヘクタール。普代村に匹敵する面積だ。一方、農業従事者は約20万3千人(05年)で、10年前と比べ2割減った。65歳以上の高齢者が占める割合は6割を超えた。農業は「超高齢化産業」だ。

 県農業振興課の井上敬二・担い手対策課長は「コメをはじめ農産物の価格が下がる一方、生産コストは変わらないので所得が減る。規模拡大のために投資可能な利益を確保できる施策が必要」と話す。

 今回の衆院選では自民、民主はじめ各党が、農家への支援策を競っている。

 県農協中央会の朝倉栄常務理事は「農業がもうかる仕事になれば、後継者は自然と育つ。価格が下がってもコスト分を補償してくれる政策があれば、安心して働ける」と訴える。一方で、「マニフェストは見栄えがいいが、選挙後どれだけ実行されるか。フタを開けてみないとわからない」とも言う。

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 「ばらまき」とも言われる従来型の農業政策を疑問視する声もある。無農薬栽培の「ひとめぼれ」玄米を、インターネットを通して売る「惣兵衛」(花巻市)の畠山さゆり社長は「補助金をもらって農業をやる時代は終わった」と言い切る。

 東京で外資系企業などに勤めた後、花巻でコメ作りを続けてきた父・惣兵衛氏の死を機に、96年にUターン。農業とIT、健康志向を融合させた販売戦略で独自の経営スタイルを確立した。畠山社長は「政府や農協がすべての仕組みを用意して与えてくれたために、農家は考える力を失ってきた」と指摘する。

 「地域の農産物を、その地域で買い支える仕組みをつくり、『安全でおいしい農産物がみんなの体と心の健康を支えているんだ』と思える意識改革をしなければ。農業を魅力あるものに変えるには、生産者と消費者、そして政治が変わらなければいけない」(加勢健一)

<主要政党のマニフェスト概要>

●自民党

 食料自給率50%を目指す。米粉や飼料用米の生産で農地をフル活用。価格下落しても経営に影響させない措置をし、米の生産調整をする。

●民主党

 主要穀物の完全自給を目指す。農畜産物の販売価格と生産費の差額を基本に「戸別所得補償制度」を実施。

●公明党

 食料自給率50%を目指す。適地適作により水田フル活用を進める。第一線を退く農業者を指導員として、農業・農村人材バンクを推進する。

●共産党

 米の販売価格が生産コストを下回れば差額を補う「不足払い制度」を導入。水田1アールあたり1万円の所得補償。減反政策を中止する。

●社民党

 食料自給率60%を目指す。生産費と販売価格の差額を直接支払う所得補償制度を導入。学校給食の週4回以上は米飯にする。

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