◇自民、「女性」前面に
「政権交代でご恩に報いる時がきました」
20日、盛岡市内のスーパー前で演説した民主前職、階猛氏の声に、買い物客が足をとめた。
階氏は、達増拓也知事から引き継いだ堅い地盤を持つ。全国的に民主党への追い風が吹いているが「有権者との接点を増やして政治に関心のなかった人からも支持を得なければ、政権交代は実現しない」と、1日約40回の演説を繰り返す。
民主党県連は、岩手1区での階氏の勢いが2区にも及ぶことも狙う。公示日に階氏の応援演説に立った工藤堅太郎・県連代表は「1区の票は必ず2区に波及する。なんとか(2区の)畑浩治を勝たせて欲しい」と訴えた。
一方で07年の補選では「まるで自分の選挙」と言われるほど階氏のために動いた達増知事や県議らが今回、県連が「重点区」とする2区の応援に注力しているため、階氏は援軍が少ない状態で戦うこととなった。
もう一つの不安要素は社民党支持層の動向だ。補選では候補者を立てなかった社民党が今回、伊沢昌弘氏を擁立。前回は「階」と書いた社民支持層が流れる可能性がある。
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立ち向かう自民新顔の高橋比奈子氏は、「女性」を前面に出す戦略だ。
ピンクをイメージカラーに、母校の同窓生を中心とした支援組織を立ち上げるなど、女性の支援を受けて無党派層への浸透を狙う。選挙カーもピンク色。「自民党」の文字は目立たない。
自民党は小選挙区制度の導入以降、岩手1区で連敗を続け、候補者が代わるごとに組織の引き継ぎも不十分な状況が続いてきた。県連幹部は「知名度、独自の地盤、何より女性であること」と高橋氏擁立の理由を話す。
高橋氏はこれまで、市議、県議と計5回の選挙を戦い、前回県議選では2位当選と集票力を誇る。業界団体などに頼る組織選挙ではなく、個人の支援を中心としてきた。選対幹事長の高橋雪文県議は「政権交代というあいまいな争点の戦いで勝敗を決めるのは、運動量。私たちの課題はそこだ」。
「強風」の中の選挙。高橋比奈子氏は「風が吹こうが嵐が来ようが、やることをやるだけ」と語る。
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共産、社民の各陣営は「非自民・非民主」の受け皿になることを目指す。
共産新顔の吉田恭子氏は「民主党への風はすごく強い」と危機感を抱く。「自民も民主も変わらないことを分かってもらいたい」と街頭演説では1カ所に約20分かけ、雇用、年金などの政策を丁寧に説明する。
社民新顔の伊沢昌弘氏は「民主党だけではできないことがある」と、雇用、平和の問題などで党の独自性を訴える。「政治に関心がなかった若い人たちの中にも、仕事などで困っている人は多い。そんな人々の味方をするためには、政策を訴えるしかない」
幸福実現の森憲作氏は、街頭演説などを続け、支持を訴えている。(田中聡子)
◇岩手1区
高橋比奈子 51 自新 〈元〉県議
吉田恭子 28 共新 党県職員
森憲作 52 諸新 幸福実現党員
階猛 42 民前(1) 弁護士
伊沢昌弘 62 社新 党県幹事長
(敬称略、届け出順)