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〈選択のとき 09総選挙〉争点を歩く:4 雇用 「失業社会」になる前に

2009年8月26日

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 明日の暮らしが見えない。

 10日、福知山市。ハローワークを訪れた市内の無職男性(53)は、わずか20分後に玄関から出てきた。

 「今日もだめか……」。求人票が出ていた企業の採用試験を受けようと窓口で相談したが、職員に「ここは若い人を採用したがっていますから」と言われ、あきらめた。

 生活が暗転したのは5年前。28年間勤めた卸売会社が合併し、リストラの対象となって退職。紹介された派遣会社に入り、福知山市内の化学工場で働いていた。しかし、昨秋以降の経済危機で減産が始まり、年末に解雇された。週に2、3回、ハローワークに通う日々が続く。

 失業給付は11月まで。「仕事が見つからなければ、アルバイトで食いつなぐしかない」とため息をつく。

     *     *

 景気は底を打ったと言われるが、製造業の生産水準はなお低く、企業の採用抑制は続く。府内の有効求人倍率は6月で0.50倍と低水準だが、とりわけ製造業の多いハローワーク福知山管内は0.39倍と、さらに厳しい。

 JR福知山駅から車で10分。府北部屈指の規模を持つ長田野工業団地では、事業撤退や生産縮小がいまも続く。

 立地企業でつくる長田野工業センターの幹部は「昨年末から急に派遣会社の送迎バスの姿が見えなくなった」。1年前は約6千人が働いていた工業団地から、これまでに約450人の派遣社員を含む約800人が去った。

 省エネ家電などの普及を促すエコポイント制度の導入で、長田野でも電機関連の生産が戻りつつある。しかし、ハローワーク福知山の奥村誠治所長は楽観できないという。「雇用が回復するだけの力強さはない。求人は退職者の補充ばかり。どの社も1人、2人程度しかない」

 雇用不安は正社員にもしのびよる。

 「君は営業に向かない。事務をやるか、辞めるか。1週間で返事を」。京都市内のソフト開発会社に勤務する男性(40)は昨年末、上司にこう宣告された。転職も考えたが、会社にとどまった。

 「何でもチャレンジできた20代の時とは違う。40代になると再就職は容易でない」と考えたからだ。

 だが、事務職に配属されると、給与は月額で10万円下がり、20万円を切った。家族を養い、住宅ローンもある。「退職に追い込むための賃金カットではないか」。そんな不信から、会社側に引き下げの根拠や理由を示すよう求めている。

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 中小零細企業の従業員や非正規労働者を支援する「きょうとユニオン」には、春ごろから退職を迫られた正社員の相談が相次いでいる。玉井均書記長は「派遣切りや雇い止めといった非正規社員の整理が進み、リストラの対象が正社員へと移り始めた」とみている。

 総選挙で、各党は「雇用不安の解消」をマニフェストの柱に据える。自民党は3年間で200万人の雇用確保を主張。民主党も職業訓練手当の支給や最低賃金の大幅引き上げを掲げる。ただ、こうした政策が効果を発揮するのか。根拠や財源は必ずしも明確ではない。

 日本は今後、失業率5〜6%が常態化する「中失業社会」を迎える――。こう予測する京都大学の久本憲夫教授(雇用・労働論)は、雇用形態が多様化する社会に労働政策や法律が対応できていないとみる。「国は失業給付の期間延長など安全網を拡充しつつ、地域限定や業務限定社員といった正社員の多様化を企業に促し、雇用の安定を図るべきだ」と指摘する。

 南区の京都ジョブパーク。07年春に開設された府の総合就業支援施設には連日、多くの若者が職探しに訪れる。

 6月から通う京都市の女性(22)は30日、初めての一票を投じるつもりだ。大学を卒業して今春に就職。しかし、最初から給料の遅配が続き、3カ月で退職した。「これまでは政治に興味が持てず、投票したことはなかった。でも、まさかの失業で考えが変わった」。今は各党の主張に目をこらす。

 「同じ仕事でも、正社員と派遣で賃金や待遇が違うような格差をなくす政策を実現してほしい」。あと4日、未来を託す選択の日を迎える。(堀田浩一)

=おわり

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