衆院選で森田健作知事と千葉市の熊谷俊人市長が対照的な動きを見せている。ともに今年の選挙で大勝した者同士だが、自民の応援を受けた森田知事が影をひそめたままなのに対し、民主推薦で当選した熊谷市長は出陣式にかけつけるなど活発だ。
(小沢邦男、多田晃子、瀬戸口翼)
「千葉県に関心を持っていたり、森田と一緒にやろうと言ってくれたりする候補者であれば、千葉県知事として応援に行きたい」。公示日の18日、森田知事は報道陣から選挙への対応を聞かれて、こう答えた。
森田知事は3月の知事選で圧倒的知名度を背景に100万票を超える得票で当選。自民の推薦はなかったが、30人超の自民県議や数人の衆院議員から支援を受けた。
森田知事は名前こそ挙げなかったが、自民候補からの応援要請があったのは「県内外で片手以上」とする。
22日には横浜市内で、衆院議員時代から交流がある自民前職の菅義偉・選対副委員長の応援に駆けつけた。こぶしを振り上げながら「菅さんは約束を守る人」「役人は菅さんの言うことは聞く」など絶叫調の森田節で持ち上げた。
森田知事は県内では、知事選を支えてくれた自民前職の3人を応援したい意向とみられている。だが25日現在になっても、表だった動きはしていない。
自民前職の一人は「非常に苦しい戦い。早く2人で遊説を」と助太刀を待望。「森田さんのために精いっぱいやった。同じように応援してほしい」と期待する。別の前職は東京湾アクアラインや北総線の運賃値下げを絡めた訴えをもくろみ「金子国交相と来てもらえれば」と待ち望む。
だが、自民県連の関係者は「森田さんが自民候補の応援に行くのは逆効果」と冷ややかだ。自民支部長でありながら、「完全無所属」を掲げて選挙を戦ったことに批判を受けたためだ。「応援に来れば『やっぱり無所属はウソだった』となる。候補者にも得にならない」と話す。
自民候補を推薦している公明も不快感を隠さない。公明は知事選で自民の一部が森田知事を支援したことに強い拒否感を示す。「うちの支持者は森田氏の応援を受けるような人には投票しないと思う」(県本部の吉野秀夫県選対委員長)とくぎを刺す。
森田知事に対して応援を依頼しないという自民候補の一人は「自民への厳しい逆風の選挙戦だからこそ、タレント知事を使った空中戦よりも1人で歩いて多くの有権者と顔を合わせるドブ板が生き抜く道だ」と話す。
一方、千葉市長選に民主推薦で当選した熊谷市長には、民主の各陣営から応援依頼がひっきりなしだ。
「変えることの勇気、大切さを多くの人がいまかみ締めている。皆さんの手で新しい時代を」。公示日の18日、自身の選挙で選対幹部を務めた民主前職の出陣式で、熊谷市長が政権交代への思いを訴えると、候補に負けない拍手が起きた。
県内で応援演説に行ったのは、公示前を含めると、1〜3、9、13の各選挙区。27日には各種世論調査で「接戦」とされる12区にも入る予定という。県外では北海道1区の民主前職らと若者向け集会に参加した。
演説の内容は、市政をどのように変えているかや地方分権への期待で、直接的な応援演説はしていない。「市長が代わると政治や行政がどのように変わるかを話すことで、有権者には判断の材料になると思う」という。