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〈09政権選択〉くらしと政策:5 自衛隊の海外派遣

2009年8月26日

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 陸上自衛隊中央即応連隊(CRR)の隊員たちが5月28日、アフリカ東部ジブチに出発した。CRRの拠点がある宇都宮駐屯地(宇都宮市茂原1丁目)の近くに住む女性会社員(31)は、夕方のテレビニュースで隊員たちが整列する姿が流れていたのを覚えている。「地元からも海外に派遣されるんだな」。でも、ジブチがどこにあるのか、隊員たちがどんな任務に就いたのか、よく知らない。

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 ジブチへ向かったCRRの隊員は約40人。隣国ソマリア沖で海賊から船舶を守る海上自衛隊の仕事を縁の下で支える役割だ。上空から海賊の動きを監視する海自のP3C哨戒機は、ジブチ国際空港で補給や整備を行う。空港でP3Cや整備施設の警護などに当たるのがCRRの任務だ。

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 自衛隊の海外派遣は、91年の湾岸戦争後、徐々に拡大した。国連平和維持活動(PKO)など紛争の事後処理に始まり、01年の米国同時多発テロを機に、テロ対策という「新たな脅威」への対処が加わった。アフガニスタン戦争に伴うインド洋での給油活動、イラク戦争での実質的な戦地派遣と、小泉政権下で活動範囲は一気に広がった。

 その度に、国会では論戦が繰り広げられた。武器使用にどう歯止めをかけるか、自衛隊の活動に対する政治のチェックは十分か――。根本にあるのは、「戦争の放棄」をうたった憲法9条だ。政府の憲法解釈では、海外での武力行使は認められていない。

 ソマリア沖の海賊対策をめぐっては、民主や共産など野党が反対する中、今年6月に海賊対処法が成立。外国船を含むすべての船舶を保護対象とし、自衛隊法で正当防衛や緊急避難に限られていた武器使用も、停船命令に応じない場合に船体への射撃が認められた。

 インド洋での給油活動やイラク派遣が時限立法の特別措置法であるのと比べ、派遣地域や期限のしばりのない一般法(恒久法)である点も大きな違いだ。

 テロ対策や海外派遣での先遣隊の役割を担うため、昨年3月に発足したCRRにとって、ジブチ派遣は初めての本格任務。直接、海賊対策に当たるわけではないため、武器使用は海賊対処法ではなく、自衛隊法に基づき制限されている。軍事ジャーナリストの神浦元彰さんは「政権交代の有無にかかわらず、今後も海外派遣の増加が予想される。それに向けて経験を積ませる意味合いが強いのではないか」とみる。

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 遠く離れた海外での自衛隊活動への有権者の関心は高いとは言いがたい。「消費税や雇用と比べて生活に直結しないように見えるのでは。もっと知ってほしい」とCRRの山本雅治連隊長も言う。

 自衛隊の海外派遣をめぐっては、与野党の合意が得られない状態が続いたまま、活動範囲が広がっているのが現状だ。総選挙に向け、自民は一般法による新たな法整備を掲げた。一方、民主は社民に配慮した形で具体的に踏み込まず、社民、国民新との共通マニフェストに盛り込まなかった。(矢吹孝文、古源盛一)

=おわり

■主な政党の主張

《自民》 自衛隊の国際平和協力活動のため、特別措置法ではなく一般法(国際協力基本法)を制定。自衛隊派遣は国際協調と国益を考えて実施

《民主》 国連の平和維持活動(PKO)などに参加。海上輸送の安全確保と国際貢献のため、適正な手続きで海賊対処のための活動を実施する

《公明》 インド洋の補給支援を継続。5年間で5000億円の防衛関連経費のコスト縮減

《共産》 憲法9条に反する自衛隊の海外派兵を中止。「海賊対処」派兵新法をなくす

《社民》 自衛隊は必要最小限に。インド洋から即時撤退、海賊対処は海上保安庁主体に

《みんな》 自衛隊の海外派遣は災害救助や人道・復興支援が中心。武力行使はしない

(上から解散前の衆院の政党勢力順)

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