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〈’09選択の年 8/30総選挙〉政策に期待、政策と遠く

2009年8月26日

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 総選挙の投票日が間近に迫ってきた。政党、候補者は独自の政策を掲げ、支持を訴える。選挙結果は何をもたらすのか。そして有権者が求めているものとは。農村と限界集落の離島で、それぞれの思いを聞いた。

◆「自給・輸入、見えぬ農政」 登米市・県内屈指のコメどころ

 県内屈指のコメどころ、登米市。主食用米の作付面積は約1万650ヘクタールに及び、県内の15%を占める。米価は地域経済にも少なからず影響するが、その米価は振るわない。コメ余りがいわれ、食管制度に守られて1俵(60キロ)が2万円を超したような時代は遠く去った。今や1万4千円前後。多くの農家は「つくるほど赤字」とこぼす。

 「これしかない」。農業生産法人「登米ライスサービス」(登米市南方町)の代表、伊藤克成さん(59)は米粉にかけている。専用の製粉機を約3500万円で導入し、今年から本格生産を始めた。袋売りの製品にはオリジナルのレシピを付け、消費者への浸透に知恵を絞る。

 農家との契約栽培も含め、約120ヘクタールでひとめぼれやササニシキなどを生産する。スーパー、病院へと販路を広げてきたが、楽観はしていない。

 「コメ全体の需要が伸びなければ米価が上向くこともない」。米粉のパンやめんが、小麦粉でつくるのとは別の新たなジャンルに育てば、安定的にコメの需要を増やしていけると言う。

 国は、農家や加工業者向けの助成制度を設け、米粉の普及に力を入れている。伊藤さんは、しかし、それがいつまで続くのかと不安を抱く。「パンは、戦後の学校給食に採り入れられるなど長い時間をかけて定着した。米粉製品の定着にも時間が必要だ」

 ライスサービスの契約農家である千葉胤幸(たねゆき)さん(56)と千葉久三男さん(53)。2人の大規模農家が口にしたのは、やはり米価への不満だった。必要な収入があって次の作付けにも意欲が持てる「再生産価格」は1俵1万6千円ぐらいという。「それにまったく届かないから、後継者はいないし、コメづくりをやめる人も増えている」

 国内農家は減反を強いられながら、一方でコメの輸入も行われている。コメを含む食料を自国でつくる必要があるのか。それとも輸入に任せればいいのか。伊藤さんは、今の農政論議には、それが欠けていると思う。「自国でつくるなら、将来を見据えた道筋を示してほしい」

◆「何を期待と言われても」 石巻市・田代島、超「限界集落」

 島のネコは、繭をネズミから守るために飼われたのが始まりという。漁師たちはネコのしぐさで天候を占い、漁のおこぼれを与えた。島民とネコたちとのつつましやかな共存共栄が数年前、テレビなどで紹介され、にわかにブームが起きた。連休にはネコ好きの観光客が巡航船で押し寄せ、港は華やぐ。

 石巻市の田代島。市中心部から南東の沖合15キロ。周囲11.5キロの、この小島には94人が籍を置く。平均年齢は72.6歳(4月1日現在)。65歳以上が半数以上を占め、地域を維持するのが困難になるといわれる「限界集落」。表の華やかさとは裏腹に、島は超限界集落の厳しさに直面してもいる。

 島の小中学校は20年前に廃校になった。跡地は自然教育センターに衣替えし、島外から来る子どもたちの宿泊所などに活用されたが、それもこの春で廃止。市営診療所には週に3度、医師が巡航船で通っていたが、先月からは週1回に減った。

 それでも、仁斗田地区の区長、平塚敬市郎さん(73)は「昭和30年代は千人以上が暮らし、自給自足していた」と島の豊かな自然が自慢だ。毎月、島の出来事をつづった「ふるさと便り」を島外移住者に送る。「協力を頂くこともあるかもしれない。島のことを知っておいてほしい」

 島には、ここ5年ほどの間に、漁師などを目指して男女6人が移住してきた。「志を持つ人たちに定住してもらい、島を守ってほしい」

 選挙となれば、島内放送で候補者の到着時間が知らされ島民たちが集まる。70代の女性は「小さな島だから誰が来ないか分かってしまうし、世話役の人とのつきあいもある」と極力、出かけるようにしているのだという。

 80歳近くになる漁師は「政治に期待することと言われてもなぁ」。ただ、困るのは「人足」と呼ばれる地域の共同作業が難しくなってきたことだ。島の草木は深い。小道はたちまち草に覆われる。その草刈りが、高齢者たちにはつらくなってきた。

 「10年後、島は大きく変わっているだろうねぇ」。そうつぶやいた高齢の女性には、何が見えるのだろうか。

(荒海謙一)

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