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〈09政権選択 ながさき〉被爆者ら平和政策を注視 核廃絶ビジョン問う

2009年8月26日

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 非核三原則の法制化や核兵器持ち込みの密約問題も、今回の総選挙では議論になっている。オバマ米大統領が「核のない世界を目指す」と演説し、核兵器廃絶に向けた機運が高まる中、被爆者らは各党や候補者の平和政策を注視している。(波多野陽、伊東聖)

 公示後初の日曜日だった23日、長崎原爆遺族会の正林克記(まさばやしかつき)会長(70)は、長崎市内の自宅兼事務所で、定例会のために集まった役員ら十数人にこう呼び掛けた。「私が2度も原爆を落とした米国のオバマ大統領を支持するのは、核ゼロという理想に近づこうとしているから。被爆者の意見を政治に反映させるためにも具合が悪くても、それぞれが信じる一票を入れに行こう」

 正林さんは会社役員を務め、長年、自民党を支持してきた。だが、核兵器持ち込みをめぐる日米間の密約問題について、現政権が否定し続けていることに「真実を国民に明かしてこその民主主義なのに、被爆国の政府の姿勢とほど遠い」と失望した。

 正林さんは「オバマ大統領が登場した大事な年の選挙。各党は、核のない世界に向かってどんな道筋をたどっていこうとしているのか、ビジョンを示してほしい」と話す。

 原爆忌の9日、被爆者5団体代表が、長崎市で麻生首相と面会した。冒頭、長崎原爆被災者協議会の谷口稜曄(すみてる)会長(80)は「被爆国の首相としてあるまじき発言。撤回されるよう求めます」と訴えた。

 首相は6日、広島市での会見で「核で攻撃しようという国が隣にある。抑止力を持つ米国と同盟を結んでいる現実を踏まえないと」と発言し、「核の傘」は必要との認識を示していた。谷口さんはその言葉に、「米国との核持ち込みの密約を許せば、日本が核攻撃の対象となる」と思い、撤回を求めることを面会前日の8日に決めた。

 だが、首相は結局、何も答えないままだった。谷口さんは「自民党政権に声は届かない」と思ったという。

 被爆者5団体はその後、各党の代表と面談した。民主党の鳩山代表は「国是としておくのと、法制化と、どちらが三原則を守れるか考えねばならない」と前置きしたうえで、「非核三原則の法制化を検討する」と約束した。

 だが、谷口さんの胸の内は複雑だ。住んでいる長崎1区に立候補している民主前職は、三菱重工業長崎造船所労組が出身母体。造船所は自衛隊の艦船を整備する防衛産業の拠点でもある。谷口さんの目には、その光景が、核兵器廃絶を掲げながら、米国の核の傘を甘受する現政権の姿と重なって映る。だから思う。「もし鳩山代表が首相になるなら、自分が言ったことは守ってもらいたい」

 長崎総合科学大の平和文化研究所運営主任、芝野由和准教授(政治学)は、今回の総選挙が、郵政民営化への賛否だけが争点化した前回と似た雰囲気になっていることを懸念する。「郵政民営化だけを基準に、大量の議席を与党に与えた結果、教育基本法が改正され、国民投票法が成立した。今回も、政権選択という争点に、大切な平和や憲法の問題が吹き飛ばされてしまっているようだ」

 そして、各党にこう求める。「もし、政権交代が実現したとしても、有権者は決してすべてを白紙委任したわけではない。そこを勘違いしないでもらいたい」

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