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〈09政権選択ふくおか 暮らしから〉農業政策@道の駅

2009年8月26日

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 久留米市中心部から東に車で約20分。野菜や果樹の栽培が盛んな田園地帯を通る国道210号沿いに「道の駅くるめ」がある。早朝、施設内の直売所に農産物を持ち込む農家に話を聞こうと訪ねた。

 午前9時の開店を前に、朝収穫したばかりの農産物を載せた軽トラックなどが続々と到着する。市内のブドウ農家の男性(69)に話しかけた。

 「ブドウが安い。市場を通すとなおさらだ」と男性。たとえば2キロ2500円のブドウも、市場を通すと男性が受け取るのは1500円程度という。それなら個人で売る努力をしないと、と思い、4年ほど前から直売所での販売や個人発送に力を入れ始めた。

 この日は、1袋300円の値をつけたブドウを持ち込んだ。形がふぞろいなので普段の半額以下という。今までは売り物にせずに知り合いにあげるなどしていたが、直売所に出せば安くても少しは収入になる。

 今では農協には1割も出荷しない。「個人で売るのは大変だから、皆農協に頼らざるをえない。だが売る努力をしないと、農協任せではつぶれる」。しかし、これまでの国の農政は「個人で頑張ろうという農家を無視している」と感じている。

 衆院選では、各党が農村票を獲得しようと様々な農業政策を打ち出している。その手法は農協など従来組織へ補助金を交付する「間接支援型」と、農家に直接補助する「直接支給型」の双方がある。

 男性は「大規模化を進める今までの農政では弱小農家はやっていけない」と思うが、かといって補助金の直接支給も「ばらまきではないか」との疑問があり、どの党の政策がいいのかわからないという。「農業でも、農家の規模による格差が生まれている。格差をなくす政策をとってほしい」と願う。

 バレイショやキュウリを持ち込んだ市内の女性(73)にも聞いた。野菜のほかに米と柿も作っているが、3年前に夫が亡くなってからは主に一人で約1.8ヘクタールの田畑の手入れをしている。近くに住む長男(48)は会社員。女性が働けなくなったら「虫がついたりしたらほかの農家に迷惑だから、柿は根こそぎ切るよ」と言われた。継いでほしいとは思うが、会社員の給料の方が農業収入よりいいことはわかっている。「私ができないから田畑を維持してくれ、とは言えない」

 女性の住む集落にも後継者がいない家が多い。農家のメリットがあれば後継者も現れると思う。「あまりに米も柿も野菜も安い。もっと価格を上げてほしい」と叫びたい気持ちだという。

 直売所の中を、水菜が入った箱を持って動き回る若い男性が見えた。市出身で東京で農業を学んでいるという大学生(20)だ。実家は米や野菜を育てる兼業農家。帰省中で直売所に野菜を運んだり、畑仕事を手伝ったりしている。社会勉強のため一度は就職して、30歳前に農家を継ぎたいと考えている。

 親が「採算がとれない、施設の初期費用がかかる」と嘆くのを聞いているし、農作業が苦しいと思ったこともしょっちゅう。それでも「育てた野菜が実るとうれしい」と農業に達成感を感じる。継いだら新しい作物に挑戦したい。

 選挙は今回が初めて。「ちょっと楽しみ。投票には行く」と話す。「農業は消費者の信頼があってこそ。農家のこと、若い世代のことを考えてくれる政党を選びたい」

(矢島由利子)

 <県内の農業情勢> 県農林水産政策課によると、農家数、農業就業人口は全国傾向と同様に減少。販売農家数は95年の7万2309戸が05年には5万4515戸、農業就業人口は11万5253人(65歳以上39.8%)が9万5023人(同54.4%)になった。農業産出額は95年が2686億円で、うち野菜683億円、米772億円。07年は2148億円で、うち野菜644億円、米421億円。米の落ち込みが激しい。

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