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〈争点の足元で ルポ愛媛経済:中〉派遣社員は制度で守られていない

2009年8月27日

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<派遣社員は国の制度の中で守られていないんだと思った。――今治の元派遣女性>

 「派遣社員は国の制度の中で本当に守られていないんだと思った」。今治市のA子さん(34)はインタビューの最後に肩を落としてつぶやいた。液晶バックライト光源製造大手のハリソン東芝ライティング(本社・同市)で3年9カ月、製品検査の仕事をしてきたが、3月末で派遣契約が打ち切りになった。

 同社と派遣元との派遣契約は3カ月ごとに更新されてきた。「この仕事を始めた時、派遣元に『いつまででも働ける』と言われたので、まさか打ち切りとなるとは思わなかった。実際には、いつでもクビを切れる弱い立場だったのですね」

 契約の打ち切りを告げられた直後の2月下旬、市内であった合同就職面接会で労組関係者が配る一枚のビラを受け取った。そこには、労働者派遣法は派遣社員の契約期間を最長3年と定め、それを超える場合、派遣先会社は直接雇用を申し込む義務があることが記されていた。

 「そんな申し込みは会社から一度もなかった。ずっと、派遣で働くしかないものとばかり思っていた」

●消極的な行政

 派遣切りに自身があうまで法律の規定を知らなかったことを恥じた。同時に「法律の規定を派遣社員に知らせず、会社はそのまま私たちを働かせ続けた。景気が悪くなった途端、有無を言わせず切っても何のとがめも受けない。会社側にとってあまりに都合のよい仕組みではないか」と憤りを感じるようになった。

 ハリソン東芝の製造現場の全派遣社員約540人は、昨年末から今年3月末までに契約を打ち切られた。A子さんの周りには同じ派遣社員として同社で8年11カ月働いたB子さん(38)、7年働いたC子さん(44)もいる。

 3人は今月11日、同社に直接雇用を強く指導するよう求める愛媛労連の愛媛労働局に対する申し入れに同席した。

 しかし、同労働局は朝日新聞の取材に対し、「現在、直接雇用の対象となる派遣社員がいない会社に対しては、是正指導のしようがない」(職業安定課)と答え、愛媛労連の申し入れへの対応については消極的だ。実際、同労働局が直接雇用への是正を勧告した県内企業はこれまでに1件もないという。

 この問題についてハリソン東芝は「取材はお断りしている」と答え、現在の生産ラインの稼働率についても「底は脱したが、数値は公表できない」としている。

●700人超す離職

 今治市内では、同社の派遣切りや百貨店「今治大丸」の閉店で、昨年末から今年3月にかけて計700人を超す離職者が出た。ハローワーク今治によると、管内(同市と上島町)の6月の有効求人倍率は0.59倍。1月は1.05倍だったが、景気の悪化で厳しい雇用環境が続いている。ハローワーク今治で求職活動をしているハリソン東芝の元派遣社員319人のうち、再就職できたのは半数に満たない125人。同じく今治大丸の元社員ら152人のうち、再就職できたのは52人だけだ。

 市内中心部に立つ旧今治大丸ビル。閉店後も残務整理や顧客への対応で1階に窓口を設けていたが、今月末でこの窓口も閉める予定だ。担当していた男性社員の一人(50)は、年老いた親の世話もあり、転勤はせずに地元での再就職を希望している。しかし、「若者でも職探しが厳しいのに、私たち中高年の再就職先はほとんどない」と顔をしかめた。

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