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〈暮らしの足元で 09政治決戦:4〉雇用対策 足りぬ職業訓練枠

2009年8月25日

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◇定員の5倍超す申し込みも

 君津市の高台にある「ポリテクセンター君津」で今月下旬から、県内初の「緊急・橋渡し訓練」が始まった。当初の募集定員13人を上回る、20代から60代まで計18人が、パソコン入門などを2カ月間受講している。

 「派遣切り」にあったり自営業を廃業したりで雇用保険がないまま失業している人たちが対象。一定の要件が当てはまれば、訓練中の生活保障として月額10万〜12万円の給付金が受け取れる。今年度の大型補正予算の雇用対策の目玉として新設された3年間の緊急措置だ。

 1時間以上かけて千葉市内から通う男性(39)は、国会中継で制度を知り、申し込んだ。「月10万円は助かる。解雇されて先が見えないが、訓練を受ける中で生活も立て直せそうだ」と期待する。

 物流会社で働いてきた木更津市の女性(42)も「肉体労働を続けるには体力的にきつくなった。パソコンの技能をしっかり身につけて、今度は定年まで働ける事務職になりたい」と意欲をみせる。

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 同センターは独立行政法人「雇用・能力開発機構」の職業訓練施設。政府の方針で人気のあったパソコン技能などを学ぶビジネス系コースを6月までに廃止したばかりだった。「民業を圧迫しないように」という趣旨だったが、補正予算は年度途中とあって今度は民間の引き受け手が間に合わず、「給付金」を希望する人たちの訓練先を確保すべく、再び国の指示でセンターが「緊急・橋渡し」を担っている状況にある。

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 県内2位の管内人口111万2千人をカバーする「ハローワーク船橋」。エレベーターが着くたびに、老若男女が受付に急ぐ。求人情報を検索するパソコン端末75台は、午前中から「満席」になる。

 昨年秋以降、新たに職を探す人が急増した。3月には前年よりも58%増、6月も42%増と続く。一方で求人件数は伸び悩む。6月の県内の有効求人倍率は0.42倍と10年9カ月ぶりの低水準。中でも人気の高い事務的職業は0.09倍という低さだ。

 ハローワークの求人検索端末の画面は、制限時間の30分になると、「終了」を求めるテロップが流れる。「あおられてしまって、落ち着いて見ていられない」。30代後半の男性は苦笑する。順番を待つ列に再度並び直したが、2回も繰り返すと、消耗した。

 個別相談は2時間近く待たされることも。対応する職員は親切だが、「1分でも早く応募したい、と焦る利用者が多いのに、職員の数が圧倒的に足りない」と感じる。

 男性は昨年まで販売担当の正社員だったが、売り上げを求められるストレスで体調を崩した。会社が雇用保険に加入していなかったことは、退職時に知らされた。妻子と貯金を取り崩しながら節約生活でしのぐ。

 ひきこもりの社会復帰を支えるNPO法人・セカンドスペース(市川市)で習ったパソコンについてさらに学びたいと、公共職業訓練を申し込んだが、不合格だった。県産業人材課によると、パソコンなど人気の高い民間委託の職業訓練は、定員の5倍を超す申し込みがあるという。

 「もっと訓練の枠を広げてほしい。失業しても、社会復帰の次のステップが見える社会であってほしい。ブランクが長引くほど、希望がなくなっていく」と男性は話す。

 今回の候補者アンケートでは、雇用保険や職業訓練の拡充を訴える声がある一方、まずは景気回復に重きを置くという声があった。=おわり

 (有山佑美子、小沢香、鶴見知子が担当しました)

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