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農家の一票「チェンジ」願う 民主期待の半面、違和感も

2009年8月23日8時0分

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写真農産物直売所の朝は、商品を運び込む農家でにぎわう=22日午前6時48分、福岡県朝倉市の「三連水車の里あさくら」、溝脇正撮影

 農家の票をめぐり、自民、民主の2大政党が火花を散らしている。民主党の「戸別所得補償制度」は農家の心をつかんだように映るが、実際には違和感を覚える人も多い。農家の「民主シフト」を後押しするのは、政策の中身よりむしろ、行き詰まった農政を何とか変えたいという思いのようだ。

 「コメを作っても食べていけない。いっぺん、戸別所得補償をやらせてみたらいい」。福岡県朝倉市。青々とした稲が広がる田んぼの横で、農家の男性(53)は言った。

 かつては農協に勤め、自民を支持していた。「規模拡大」を求める政府・自民党に数年前から疑問を持つようになった。「田んぼはあちこちに散らばっているものなのに集約化ばかり求める。実態とかけ離れた政策に黙って従ったら、つぶされてしまう」

 下がり続けるコメの販売価格。農薬や肥料、機械代などを引くと、ほとんど収入はない。民主の「所得補償」がいくらになるのか、想像がつかない点も多いが「どうせ今もうまくいってないんだから」と民主支持に転じた。

 市内でハーブを作る男性(39)は政権交代に期待するが、「補償」という発想にどうもひっかかるという。「自分の力で食べていきたいのに『食わしてやる』と言われている気がする」

 朝倉市は県内有数の農業地帯。コメや麦のほか、柿や万能ネギといった特産品作りに取り組む農家が多い。12日夜、衆院選福岡5区に立った候補者の公示前の討論会が市内であり、自民、民主の候補者らがそれぞれの農業政策を批判し合った。

 民主候補 「自民の減反や大規模・組織化の政策で後継者が減った」

 自民候補 「民主は所得補償の対象者をどの範囲にするのか、よく分からない」

 果樹農家の男性(61)が聞きたかった中山間地対策は議論されなかった。「物足りんねえ」。ただ、すでに選挙区も比例区も民主党に投票すると決めている。

 続けられないという農家の農地を引き受け、年々、規模を拡大してきた。経費はかさみ、果物の価格は低迷。この4〜5年、借金が減らない。「民主の政策はカネがかかりそうだし、本当に農業がよくなるか分からんけど、政権交代で何かが変わるなら、その可能性に票を投じたい」

 農業地帯とあって、地域の農産物直売所は毎朝、野菜などを運び込む農家の軽トラックやワゴン車でにぎわう。

 討論会の翌朝、野菜と花を運んできた男性(60)に衆院選の話を持ちかけると、「民主党に期待していたけど、マニフェストで自由貿易を掲げてから疑わしくなってきた」との答えが返ってきた。

 民主党は、政府・自民党が進めた「規模拡大」政策を「零細農家切り捨て」と批判してきた。ところが、7月に発表したマニフェストには米国との自由貿易協定(FTA)締結を盛り込んだ。農業分野のFTAは、経営基盤の弱い農家に大きな痛手を与える可能性がある。

 その後、マニフェストは修正されたが、男性は「自由貿易になれば後継者難の日本の農業はつぶれてしまう。民主は農業をどうしたいのだろう」。農政不信が続いただけに、一度ふくらんだ疑心暗鬼はなかなかぬぐえない。(後藤たづ子)

 〈民主党の戸別所得補償制度とFTA公約〉 戸別所得補償は党の農業政策の中核をなし、農産物の販売価格が生産費を下回った場合、その差額を基本とした金額を農家に支給する制度。日米FTAの締結は小沢一郎代表代行の持論で、7月にマニフェストとして発表したところ農業関係者が反発。「締結」を「交渉促進」に弱め、「国内農業・農村の振興を損なうことは行わない」と付記する修正をした。

 一方、自民党は「農家所得の増大」を掲げ「すべての意欲ある農家を支援対象とし、面積・年齢要件は撤廃する」と訴えている。

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