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霞が関「民主シフト」 次官ら次々訪問、担当者格上げ

2009年9月3日10時16分

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 民主党と社民、国民新党の連立協議が2日に始まった。新政権に向けた動きが本格化する中、「官僚主導」の転換を掲げる民主党とのパイプ作りに、各省庁の官僚たちも動き出している。議員の経歴調査、政策を伝えるための資料づくり、説明にあたる官僚の格上げ――。「民主シフト」が進んでいる。

 国土交通省のある課では2日、テーマごとにA4の封筒に小分けにされた資料が机に積み上げられていた。「民主党の先生に実情をわかってもらう下準備です」

 国交省は省庁最大の職員約6万人を抱える。自民党とは太いパイプがあるものの、旧建設省時代に政務次官を務めた小沢一郎代表代行らを知る職員はすでに退職。民主党とのつながりは薄い。「新しい政権の幹部にお会いできれば」。谷口博昭事務次官は8月31日、記者会見で語ったが、まだ鳩山代表と面談する約束はとれていない。

 国会議員100人を省庁に送り込む民主党の方針が霞が関の各省庁で大きな話題になっている。国交省には大臣、副大臣、政務官計6人の個室があるが、送り込まれる政治家がそれ以上だと、個室を持つ同省幹部が部屋を明け渡す必要も出てくる。

 なじみの薄い民主党議員と向き合う準備として、身辺調査に励む動きもある。郵政民営化の見直しを気にかける総務省の幹部は、民主党議員の過去の発言や役職、出身校などをリストアップした。文部科学省も総選挙前から、新顔を含めた民主党候補の教育に関する主張などのリストを作ってきた。

 民主党議員に政策を説明する官僚をだれにするか、検討している省庁もある。農林水産省では、これまで与党の自民に局長、野党の民主に審議官と、説明する役人のランクに差をつけることがあった。ある幹部は「これからは逆になるだろう」。防衛省は1日、8月1日付で退職した局長を、民主にも人脈があるとして同省参与にした。

 逆に「表立っては動きにくい」と漏らすのは法務省の幹部だ。小沢代表代行の公設秘書が逮捕された西松建設の違法献金事件や、鳩山代表の「故人献金」問題で、検察の捜査の行方が注目されている。「下手に幹部と接触すれば、何事かと勘ぐられかねない」と話す。

 様子見の省庁も少なくない。取り調べの全面可視化などが気がかりな警察庁の幹部は「今は出方を待つしかない」と話す。環境省は、環境政策に積極的な民主党政権が追い風になるとみるが、ある幹部は「誰に話を持ちかけていいのか、わからない」と思案する。経産省の幹部は、当選者が永田町入りする週末以降、民主党からの要求が本格化するとみる。

 日本銀行の白川方明総裁は1日、鳩山代表と会談した。総選挙後に初めて会った政策当局者だが「『時間がない』と言われ、本当にあいさつだけで終わった。議員によって金融政策の主張が正反対。キーマンが分からない」と日銀幹部は戸惑いを隠さない。

    ◇

 議員会館にある民主党の岡田克也幹事長の事務所には、選挙戦直後から各省庁の事務次官クラスが次々にあいさつに訪れている。事務所は「今までより来る官僚が少し増えている。政府でのポストが決まると、官僚たちも本格的に動き出すのでは」と話す。

 当選3回の寺田学衆院議員(秋田1区)の事務所では、選挙を終えて久しぶりに秘書が戻ると、郵便受けに各省庁の事務次官や局長の名刺が約20枚も入っていた。「これまでは新旧交代のあいさつですら来たことのない役所の人たち。驚いた」と秘書は話す。

 当選5回で元外務官僚の末松義規衆院議員(東京19区)には、官僚から当選を祝う電話が相次いだ。末松議員は「まだ慎重にしているんだろうが、新政権が本格的に動き出した時、官僚がどう動くのか、きちんと見極めていかないといけない」と話した。

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