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《総選挙 どこ見て選ぶ:中》国の財布潤すには

2009年6月30日

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 総額15兆円超の経済対策を盛り込む大盤振る舞いとなった今年度の補正予算。そこに盛り込まれた「アニメの殿堂」(117億円)に、自民党内から「予算の執行停止」を求める声が起きた。

 今月8日、党の無駄撲滅プロジェクトチームの会合。文部科学省など11省庁の予算点検の担当主査を務めた河野太郎衆院議員が「最もひどい事業だ。補正予算全体の信憑(しんぴょう)性も問われかねない」と真っ向から異議を唱えたのだ。

 文科省の計13事業をやり玉に挙げ、同省職員はその場で「いちど予算要求をやめてしまうと財務省が認めてくれなくなる」と悲鳴を上げた。

 しかし、河野氏の問題提起は自民党の中で広がらない。保利耕輔政調会長からは「党として予算案に賛成して成立したのに、与党の側から言うのはおかしい」とクギを刺された。昨年暮れにも別の指摘をしたが、族議員から「(野党系の)日教組とつるんでいるのか」と怒声を浴びた。

 「反対する族議員は予算の中身を見ていない。全省庁の予算を見直せば、4兆円の無駄をあぶり出せるのに」。河野氏はもどかしげに語る。

●自民は消費増税に軸足

 国の財布は火の車だ。少子高齢化で社会保障費が増え続け、国と地方の借金は雪だるま式に800兆円を超えた。

 こうしたなか、将来は消費増税に踏み切り、社会保障などの財源を明確にするというのが自民党の姿勢だ。河野氏らのチームも、そもそもは消費増税の議論をする前に無駄削減に取り組む姿勢を示そう、という位置づけで1年前に発足したものだった。

 17日。麻生首相は鳩山民主党代表との党首討論で、消費増税の議論をふっかけた。

 「3年後、経済が好転を示した段階で、税の抜本改正をやる。消費税論議を避けるのは、財源を避けて通ることになる。無責任だ」。鳩山氏が「今すぐ消費増税の議論に陥る必要はない。我々が政権をとっても4年間は消費増税はしない」と応酬すると、首相は「現実論を言っていただかないと、不安感を持たざるを得ない」と難じた。

 23日に閣議決定された「骨太の方針09」の論議で、10年以内の財政健全化のため必要な消費税率は12%、との試算を内閣府が示した。昨秋の党総裁選では、麻生氏が将来の税率として「10%台がひとつの目安」、現財務相の与謝野馨氏が「2015年くらいまでには10%の水準」と言及。相場観は、ほぼそろう。

 小泉政権の後、自民党内には無駄の削減を優先する「上げ潮派」と、消費増税を主張する「財政再建派」の路線対立があった。ただ、前者の代表格である中川秀直元幹事長の発信力が弱まる一方、後者の代表格の与謝野氏は経済財政政策の中核を担う。

 異論を抱えながらも今の自民党では、広く薄く集めることができる消費税が、財政を安定させる財源の一番手という位置づけだ。現在の体制で総選挙を戦うのなら、勝利した場合、増税の具体化に向けて着手することになる。

 だが選挙を控えた最近は、増税の議論は尻すぼみだ。

 政府・与党が昨年末にまとめた「中期プログラム」では増税時期を「11年度」と明記したが、景気の回復が前提となった。今年度の税制改正関連法の付則では「11年度までに(増税に)必要な法制上の措置を講ずる」と後退。「骨太09」に至っては、消費増税の記述自体が見送られた。

●民主は無駄な事業排除

 マニフェストに「消費税率の4年間の据え置き」を盛り込む民主党も、将来的には消費増税を視野に入れる。

 政策の柱である年金制度改革では、全額消費税を充てる「最低保障年金」を設ける。このため完全に新しい年金制度に移行すれば、増税は避けられないという考えだ。

 ただ、増税は「次の次」の総選挙で問うのが基本戦略。それまで高速道路の無料化や子ども手当など、目玉政策の財源はどうするのか――。

 自民党の河野氏が壁にぶち当たった無駄の排除。民主党はまず、これを本筋に置く。

 今月23日。長妻昭政調会長代理や党の国土交通部門会議のメンバーは、国交省の担当者らに質問を飛ばしていた。国の出先機関が入る合同庁舎の整備など4事業の、無駄を洗い出そうというものだ。

 政府の地方分権改革推進委員会が出先機関の統廃合を勧告しているのに、耐震化などを理由に09年度で225億円の合同庁舎整備の予算が組まれていた。メンバーの総意で「予算消化ありきの駆け込みだ」とされ、この事業は「廃止」という判定になった。

 また国交省の天下りを受け入れた財団法人に、年間80億円で道路地下の空洞を調べてデータベース化する事業が委託されていた件でも、この財団法人の廃止と調査事業の民間委託を求めた。

 こうした手法は「事業仕分け」と呼ばれる。民間シンクタンク「構想日本」が編み出し、全国の自治体で実践。河野氏が無駄をあぶり出したのも、このやり方だった。

 不必要な事業をやめる分、財源が浮く。民主党は3月から、全省庁の3千事業を対象に洗い出しに着手。厚さ10センチの冊子12冊分にまとめられ、党の各部門会議が分析中だ。政権に就けば、この「宝の山」をもとに、無駄な事業の廃止に切り込む狙いだ。

 積み重ねていけば、特別会計も含め200兆円余の年間予算から、10兆円程度はひねり出せるのではないか――。鳩山代表はこう主張する。

 ただ、現状では知識が豊富な議員が少なく、部門会議でも簡単な聴取にとどまる場合が多い。10兆円という数字の根拠があるわけでもない。総選挙前に事業全体の無駄の総額を打ち上げる構想もあったが、立ち消えになった。

 民主党は「お金の流れをコンクリートからヒトに変える」と掲げる。17日の党首討論で、鳩山氏は「政権を取れば、今のご時世に合わなくなった大型の公共事業は基本的にやめる。不要不急のものは後にしたっていい」と述べた。ただそれは、大きな建設工事や道路整備など地域住民の生活に直結する事業でも、優先順位の低いものから削られていくことを意味する。

■限られた財源、優先政策示せ

 国民の財布は縮み、消費増税への抵抗感は強い。行政への不信も募り、民主党が無駄の削減にまず手をつけるのは当然と言えるだろう。

 ただ自民党のプロジェクトチームに比べ、民主党には追及の甘さも見られる。両党の作業に同席した「構想日本」の伊藤伸氏は無駄排除について「自民党のチームが党の主流になるか、民主党が大化けしないといけない」と、自民党の本気度のなさと、民主党の力量不足を指摘する。

 自民党には、増税の前に削減の努力が必要だ。一方で民主党も、ふたを開けてみたらお金が足りなかった、では困る。限られた財源の中で、どの政策が優先されるのかを示してほしい。(松田京平)

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