現在位置:
  1. 2009総選挙
  2. 特集
  3. 記事

《ルポ決戦前夜:1》ロスジェネの挑戦

2009年8月10日

印刷印刷用画面を開く

写真お祭り会場で有権者に支持を訴える自民党の長谷川岳氏(右)=札幌市南区、葛谷晋吾撮影

■逆風の組織だから「活躍の芽」

 バブル崩壊後の就職氷河期に社会に出た「ロストジェネレーション」のカリスマが、今夏、総選挙に立つ。

 7月27日朝、札幌市南区の真駒内駅前。長谷川岳(38)はビール箱の上から声を上げた。

 「想像力や情熱、フットワーク、スピード感で新しい政治スタイルを作りたい」

 北海道大2年だった91年、長谷川はバブル崩壊に沈む北海道の街を元気にしようと、「YOSAKOIソーラン祭り」を企画。毎年6月、札幌市の大通公園で開かれる一大イベントに育てた。18回目の今年も道内外から約180万人が集まった。

 政治家を志した理由も「元気を作るため」。96年の総選挙に北海道1区から無所属で立候補し、3万票余を得たが、最下位。この時、3倍以上の得票で当選した民主党の横路孝弘(68)に今回、自民党公認で再挑戦する。

 小泉チルドレンの代表格で同区への転出をめざした杉村太蔵(29)との公認争いに決着がついたのは07年暮れ。活動を本格化させた昨年5月以降、長谷川が自民党の地方議員の紹介などで回った場所は9万を超える。平日朝は曜日ごとに違う駅前で演説する。

 自民党の支援団体以外にも支持を広げようと、選挙区内のNPO460団体と農家220戸にアンケートを実施。子育てへのNPO活用など独自の視点を入れた「僕が考えた10のミライズ」という政策集もまとめた。組織や団体回りを中心とする自民党の選挙手法に頼らなければ、党に借りを作らずに済む――。

 「横路が来た」

 7月26日、古い商店街の祭りに横路が姿を見せたとの知らせに、長谷川は「これまでならあり得ない」と驚いた。

 旧社会党幹部の長男で知事3期。小選挙区導入から4回続けて当選する横路は、連合を中心とする厚い支持基盤のもと、今回も「麻生首相に続けさせるのか」と政権交代を訴え、「横綱相撲」を展開する。しかし、従来の自民党候補とタイプが違う長谷川に、横路陣営も警戒感を抱く。

 最近の地方選では、若さに民主党の看板を加えて、「チェンジ」を売りに当選する例が目立つ。

 今なぜ、逆風下の自民党からなのか。18年前、「絶対に無理」と言われながら、資金集めのために約800の企業を訪ね、祭りを実現させた長谷川は、こう話す。

 「若者が活躍できるのは、ゼロから作る組織か、崩れかけた組織だ」

 「『民主党から出れば』と言われるが、お門違い。今回勝ち抜いたメンバーが本当に自民党を変えていける」

 自ら道を切り開いてきたカリスマの意地でもある。

     ◇

北海道1区(札幌市中央、南、西区)

長谷川 岳 38自新 

横路 孝弘 68民前 〈国〉

松井 秀明 40共新 

高元 和枝 59諸新 

(カッコ囲み政党は推薦)

■選挙後みすえ「自民は通過点」

 「政治を変える一番手っ取り早い方法は、政治家を変えることだ」

 7月30日朝、三重県亀山市の駅前で世代交代を訴えていた鈴木英敬(34)もロスジェネ世代。三重2区で4回連続当選の民主党「次の内閣」財務相、中川正春(59)に、やはり自民党から挑む。

 経済産業省のキャリア官僚として、構造改革特区や若者の就業支援をする「ジョブカフェ」を担当。仕事を通じ、自治体職員に変革への熱意を感じた。特区に携わった縁で関係を深めた竹中平蔵氏の協力を得て、若手公務員を育てる「スーパー公務員養成塾」を開始。ロスジェネ世代の公務員が心酔する存在になった。

 昨年初め、経産省を辞め、自民党からの出馬を決めた。当落を考えれば、民主党の方が有利だろう……それでも外交・防衛などの基本理念が自分の考えとは合わない。「枠組みの違いがあっても、志を持った人間は選挙後に集う。自民党はその通過点だ」。そんな割り切りもあった。

 三重2区は、祖父が隣接する町の出身というつながりがある程度。ミニ集会では「本当に政治を変えられるのか」と詰め寄られた。一方、県議出身で政策通の中川は「借金か無駄遣いの見直しか、どっちを選ぶのか」と、民主党マニフェストの実現に向け、各地で丁寧に説明を続ける。

 壁は厚い。それでも鈴木は言う。「日本を支える主役は私たち30代。責任世代にもっと国政で働くチャンスをいただきたい」=敬称略(石松恒)

     ◇

三重2区(四日市市南部、鈴鹿、亀山市)

鈴木 英敬 34自新

中川 正春 59民前 〈国〉

中野 武史 35共新

萩 都志子 50諸新

     ◇

 〈ロスジェネの立候補状況〉 今回の総選挙には、朝日新聞の調べ(5日現在)で約230人の20〜30代が立候補を予定している。そのうち90年代半ばから00年代前半までの就職氷河期に社会に出た27〜37歳の立候補予定者は約170人。18人が自民党、41人が民主党から立つ予定。民主党の方が2倍以上多い。

 07年春の統一地方選では、この世代の地方議員が急増。今年6月の市長選では、千葉市で31歳の熊谷俊人氏、神奈川県横須賀市で33歳の吉田雄人氏が当選した。7月の奈良市長選でも33歳の仲川元庸氏が当選。地方政治への進出が続いている。

     ◇

 政権選択をかけた決戦を前に、立候補予定者は何を訴えているのか。その言葉を追った。

検索フォーム