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《ルポ決戦前夜:6》「イエスマン」包囲網

2009年8月13日

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写真自転車から支持を訴える民主党の松木謙公氏。今回は「郵政票」も味方につける=8日、北海道北見市、加賀元撮影

■郵政見直し組「花道だ」

 オホーツクブルーと呼ばれる鮮やかな青のスーツに身を包むことの多い民主党の松木謙公(50)は、今夏、白いジャンパーに着替え、自転車で選挙区を駆けめぐる。8日には、北見市の住宅地を地元の67郵便局を束ねる局長会会長と並走した。会長の自転車には「郵政民営化見直し」の旗が立てられていた。

 全国最北の北海道12区で松木が挑むのは、小泉元首相の「偉大なるイエスマン」、自民党の武部勤(68)。前回郵政選挙で、党幹事長として「郵政反対組」を公認せず、厳しい姿勢で対処した。

 今なお、「郵政民営化は間違っていない」と主張する武部に対し、松木は「過疎地の郵便局が次々にシャッターを下ろしている。3事業の一体化などの見直しが必要だ」。かつて自民党を支えた「郵政票」が、民主党を押し上げる存在になっている。

 7月17日、郵政反対組の八代英太(72)が、比例北海道ブロックで新党大地からの立候補を表明した。今回、大地は北海道の小選挙区で民主党を支援する。八代は前回、自民党の公認を得られず、公明党の太田代表がいる東京12区に無所属で立って落選した経緯がある。立候補表明の会見では、武部への敵意をむき出しにした。

 「格差社会を作った3悪人。小泉は引退、竹中(平蔵)は辞めた。あとは武部さん。引退しないのなら、私が花道を用意してあげたい」

 この会見の1週間前、武部は小泉元首相と稚内市を訪れた。「仕えた総理とイエスマンの生まれて初めての旅」と浮かれていた日、同市には八代の姿があった。

 「郵便局は地域の福祉を担っている。郵政民営化は愚かな政策。次の選挙が見直すラストチャンスだ」

■「オホーツク党」を強調

 衆院解散直後の7月21日午後、武部は国会内でこう強調した。

 「自民党か民主党か、ではない。中央や党内の抗争ではなく、政権交代でもない。オホーツク武部党で今日まで政治家として生き残ってきた」

 郵政選挙後の4年間で、武部の自民党内での立ち位置はすっかり変わった。党改革実行本部長として、「改革」の旗は振り続けるが、党内は小泉改革のひずみ修正にかじを切る。総選挙前に武部が画策したのは、支持率の上がらない麻生首相の交代。幹事長経験者の中川秀直らと総裁選前倒しを求めた。

 自民党が惨敗した7月12日の東京都議選後には「麻生さんには徳性がない、徳性とは謙虚な心、恥を知る心だ」。これには党幹部から「その言葉、のしをつけて武部さんにお返しする」と反発の声が上がり、党内で浮き上がった。

 幹事長として小泉チルドレンらの応援に回り、選挙区滞在が数時間程度だった前回。今回は解散翌日に地元入り。知床半島の先端から宗谷岬、利尻、礼文両島までを含み、北海道の面積の6分の1以上を占める全国最大の選挙区を駆け回る。

 今月8日夕、北見市の夏祭り会場。武部は白の半袖シャツにノーネクタイ姿で、一人ひとりと握手した。居合わせた市民は「自民党の大物が、こんな街の小さな祭りにも来るなんて」と驚いた。

 「小泉改革が全部いいわけではない。地方は大事にしなきゃいけない」

 苦境に立つ武部に、往時のイエスマンの面影は薄れていた。=敬称略(今野忍)

     ◇

北海道12区(北見、網走、稚内市など)

武部  勤 68自前 〈公〉

松木 謙公 50民前 〈国〉

笠松 長麿 56諸新

(カッコ囲み政党は推薦)

     ◇

 〈北海道の選挙事情〉 北海道は「民主党王国」。自民党が圧勝した前回郵政選挙でも、12小選挙区で民主党は8勝4敗。歴史的な逆風を受ける今回、自民党の危機感は強く、町村信孝前官房長官(5区)や中川昭一前財務相(11区)らも地元回りに精を出す。9区に鳩山代表が立つ民主党は、「北海道から首相を」と全勝をめざす。鈴木宗男代表の新党大地から選挙区で支援を受け、逆に民主党が比例区で大地を支援する選挙協力も追い風になっている。

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