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《ルポ決戦前夜:7》陰るキングメーカー

2009年8月14日

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写真舛添厚労相と一緒に街頭演説に立つ森喜朗元首相=8日午後、石川県小松市、高橋正徳撮影写真河村たかし名古屋市長の応援を受ける民主党の田中美絵子氏=10日午後、石川県小松市、高橋正徳撮影図

■「刺客の女性に悩まされ…」

 政界で森喜朗(72)は「キングメーカー」と呼ばれる。01年4月に首相を辞めた後、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の4代8年余にわたり、時の政権の後ろ盾になってきた。

 8日、石川県小松市役所前。久々に地元で街頭演説に立った森のマイクから、ぼやきが漏れた。

 「刺客なんてやった小泉さんが悪いんだけど、私も、町村君や安倍君や福田さんも、みんな刺客に、今、やられている。公明党の太田さんもそうだ。(民主党は)女性をたくさん立て、注目させようとしている」

 連続13回の当選を重ね、自民党最大派閥の実質的オーナー。圧倒的優位のはずが、陣営には厳しい情勢が伝わる。森はこの日、2千人を超す聴衆とは笑顔で握手を交わしたが、居並ぶ報道陣のカメラには、いらだちをぶつけた。

 「汗をふき、ペコペコしている私を撮りたいんです。なぜか。もう一人(の立候補予定者)を私と対比させ、『元総理はこんなえらい目に遭っている』とやりたいわけだ」

 森が意識するのは、民主党の田中美絵子(33)。立候補表明は昨年9月だが、秘書として仕えた河村たかし名古屋市長譲り、自転車で選挙区を回る姿が地元でも浸透してきた。

 田中は街頭で自ら派遣社員だったことに触れ、「弱い立場にある非正規労働者が使い捨てにされている状況は、他人事のように思えません」。女性の新顔が自民党の大物議員に挑む――。民主党は新顔の姫井由美子が元総務相の片山虎之助を破り、「姫の虎退治」と呼ばれた07年参院選の構図を石川2区に重ね合わせる。

 7月半ば、森は焦りを隠さなかった。「白いパンタロンか何かをはいた女性に悩まされている。私も見たことないが、自転車に乗ってずっと走って行ったそうだ。色香にあまり迷わないで……」

■選挙後見据え「力」を誇示

 キングメーカーの威光は、永田町でも陰り始めている。

 7月21日の衆院解散直前。自民党内では、東京都議選を総括するため、両院議員総会開催を求める署名活動が行われた。その中心は、森のかつての腹心、中川秀直だった。昨年の自民党総裁選。中川は麻生を推す森の意向に反して小池百合子をかついだ。政権批判を続ける中川に「派閥を出て構わない」とまで言った森だが、署名活動は「みんなの総意」と容認した。

 7月下旬には、次の総選挙に出ない意向を一転し、立候補表明した側近の中山成彬の公認を執行部に求めたが、決定は「公認せず」。党内での影響力の低下に、足元の町村派からも「もう森さんの時代じゃない」(若手)という声が出始めている。

 最近の森は、「総選挙後」を見据えている。8日の街頭演説には、次期総裁候補に名前が挙がる厚生労働相の舛添要一を応援に呼んだ。「私に力があるか、実績があるか、経験があるか、いちいち申し上げない」。森は自らの力をこう誇示しつつ、麻生の名前は一度も口にしなかった。

 7月半ばの地元での講演。森は「負けたら潔く、いっぺん野党に返ってみる」と語った。93年、非自民細川連立政権が誕生し、自民党は初めて野党に転落。その時、幹事長として苦境の党をまとめ、約11カ月後の政権復帰にかかわった自負が森にはある。

 「場合によっては、どの政党も過半数を取れない。いよいよ政界再編。私は色々な経験もやっている。貴重な存在になる」=敬称略(山下剛)

     ◇

石川2区(小松、加賀、能美市など)

森  喜朗 72自前 〈公〉

田中美絵子 33民新 〈国〉

宮元  智 49諸新

(カッコ囲み政党は推薦)

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