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《地殻変動:27》細る軍恩 「最後の一兵まで」

2009年8月26日

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 「日本の道徳、伝統文化、教育を守る。それは民主党には任せられない」「民主党のマニフェストでは、国家像が極めて不安定だ」

 17日、長野市内であった長野県軍恩連盟の北信連合支部長会。11人の会員は「政権交代」への危機感を口々に語った。婦人会員が「解散前のような醜態はやめてほしい。自民党に政権を守ってもらわなければ、不満を訴える先がなくなる」と苦言を呈すと、県連会長の秋山猛雄さん(91)が引き取った。「保守合同当時の立党の精神を貫いてほしい」

 民主党になびく「自民支持団体」が相次ぐなかで、軍恩の姿勢は揺るがない。終戦直後に連合国軍総司令部(GHQ)が廃止した軍人恩給を「復活させてくれた恩義を忘れない」からだ。

 秋山さんたちの選挙運動は電話作戦が中心だ。男性会員の全国平均は89歳。足で稼ぐ運動ができなくなって久しい。

 軍恩はかつて郵政、遺族会と並ぶ自民支持団体の「御三家」と言われ、「100万会員」を誇った。01年参院選比例区でもなお、組織候補を30万票で4位当選させた。だが、年々細り、08年には会員7万7千人に。長野の会員も05年衆院選時の6100人から1800人に減った。

 活動できない県連が増え、軍恩連盟全国連合会は今年3月に解散、活動を続ける35都道府県を協議会に再編成した。全国連合会理事長でもある秋山氏は「有終の美を飾ることにした」という。

 25日昼。JR仙台駅前。腕まくりをした麻生首相が、いつものように「保守」を強調した。「守らなければならないのは暮らしだけではない。日本を守らねばならない」

 歩道を埋めた聴衆のなかで、背広にネクタイを締めた宮城県軍恩連盟会長の菊地吉(よろし)さん(88)が耳を傾けていた。3年前に前会長が亡くなり、後を継いだ、男性会員の「最若輩」だ。

 海軍6年。砲撃を受けた戦友が「靖国で会おう」と息絶えた。靖国神社参拝は欠かしたことがなく、「総理たるもの参拝しないのは残念だ」との思いもある。だが、聴き終えた菊地さんは満足そうだった。「麻生総理に来ていただいた。こんなにたくさんの観衆が集まったのは、自民党への期待が高いからでしょう」

 宮城の会員は1200人。厳しい残暑に動員はかけず、街頭で仲間の姿を見かけはしなかった。軍恩の県事務所にはこの日も支部解散の了承を求める電話があった。だが、菊地さんの思いは変わらない。「最後の一兵まで自民党を支持する」

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