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《にっぽんの争点:環境》実現性か 削減目標優先か

2009年8月28日

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 地球温暖化を防ぐため、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスをいつまでに、どれだけ減らすのか。2013年以降の国際枠組み(ポスト京都議定書)の焦点となるこの目標値について、自民、民主両党のマニフェスト(政権公約)には大きな差がある。

 自民党は20年までに削減を目指す中期目標を「05年比15%減」と定めた。麻生首相が6月に発表した目標を踏襲しており、90年比では8%減に相当する。対する民主党は、より高い「90年比25%減(05年比30%減)」を掲げた。

 目標の水準次第で、産業や社会、国民一人ひとりの暮らしぶりは大きく変わる。両党の数値の隔たりは、それぞれの温暖化対策に対する考え方の違いが反映している。

 麻生首相は「05年比15%減」という水準を、「単なる宣言ではなく、裏打ちのある実行可能なもの」と説明した。省エネ技術の導入を進め、太陽光発電やエコカーの普及による削減量を試算し、積み上げた結果だった。

 自民党を支持してきた日本経団連など産業界の意向に配慮し、今の産業構造を基本的に維持したまま、技術開発を重視して削減を目指すという考えが背後にある。太陽光発電やエコカーを導入する際の補助や減税、省エネ家電の購入を促すエコポイントの導入といった手を打ってきた。

 一方、民主党は干ばつや洪水など温暖化による深刻な被害を抑えるため、世界各国の排出量から逆算し、日本が担うべき目標を決めるという考えだ。「25%減」は、温暖化の科学的知見を集める国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が示した中期目標「先進国で25〜40%減」を参考にして定めた。

 「世界をリードできる数字を打ち出し、あらゆる政策を総動員する」と福山哲郎政調会長代理は言う。目標達成の軸に据えるのが、すでに欧州などで導入されている国内排出量取引制度だ。また、CO2排出量に応じて課税する「地球温暖化対策税」の導入もうたった。技術開発を後押しする国の補助や減税などの誘導策よりは、排出を規制する政策によって、低炭素型の社会への転換を目指す。

 公明党も与党でありながら、民主党と同様な中期目標や政策を掲げている。

■企業や家庭は負担増に

 今年12月の国連の締約国会議(COP15)で、日本を含む各国の削減目標が決まる予定だ。政権をとった側は、さっそく実現性を踏まえながら国際交渉に入ることになる。

 自民党は中期目標を達成するため、「太陽光発電は現状の20倍」「新車販売の半分はエコカー」「新築住宅の8割は断熱化」と訴える。そして民主党が掲げる「25%減」を達成するには、太陽光は現状の55倍、新車の9割をエコカーに切り替え、既存のものを含めてすべての住宅の断熱化が必要だと迫り、その実現性に疑問を投げかける。

 また自民党は、民主党案だと家計負担は年36万円増え、失業率は1.3%悪化するなどと試算。民主党のマニフェスト説明会では、経団連地球環境部会の猪野博行部会長(東京電力副社長)が自民党を代弁する形で言った。「(経済や家計への)影響度合いを積み上げたものがあるのか」

 自民党の試算に対し、民主党で温暖化対策をまとめる岡田克也幹事長は「脅しに近い」と反論。試算には、環境対策が経済成長につながる側面や、対策を取らなかった場合にもたらされる洪水などの被害への対策費が考慮されていない、と指摘する。

 ただ、CO2を減らすには国民に新たな負担を生じることになる。民主党は国内排出量取引や地球温暖化対策税の具体像は示しておらず、企業や家計の負担がそれぞれどの程度増えるか明らかでない。

 また「25%減」は、国内で削減する「真水」の分に限った自民党案と違い、国外で日本の技術協力などで削減して生まれた「排出枠」の購入分も含んだ目標値だ。その割合は「今後の国際交渉で決まる」(福山氏)としているが、年間数千億円の財政負担が必要になるかもしれない。

 さらに、民主党のほかの政策と温暖化対策との整合性も問われている。自治体の環境政策をつくるシンクタンクの試算では、高速道路の無料化や自動車関連の暫定税率の廃止が実施された場合、CO2排出量は年980万トン増えるという。自民党も「石油消費が増えて環境に悪くなる」(麻生首相)と批判する。

 民主党を支持する労働組合には、温暖化対策に伴う雇用不安を心配し、経団連に同調する勢力もある。メーカー系労組出身の民主党議員は「政権を取れば、党の政策が実際に動き出す」と不安を漏らす。民主党が政権についた場合には、産業界や労組との調整が難航するのは必至だ。

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