国際社会とどう向き合っていくか。テロや核・ミサイルの脅威にどう対応するのか。米国と連携した「力」を重視する自民党に対し、民主党は米国とは一定の「間合い」を置こうと模索している。
自民党はマニフェスト(政権公約)で「日米同盟関係を強化する」と明記した。「核の傘」を含む米国の圧倒的な軍事力を後ろ盾に、パワーで脅威をねじ伏せる姿勢だ。
弾道ミサイル防衛では、北朝鮮から米国へ向かうミサイルの迎撃や、連携する米国艦艇の防護について「必要な安全保障上の手当てを行う」とした。意味するのは、集団的自衛権の行使を認めるための憲法解釈の変更だ。さらに麻生首相は「敵基地攻撃能力」の検討にも言及した。
米国主導の「テロとの戦い」にも協力を続ける方針。来年1月に派遣期限を迎えるインド洋での海上自衛隊の補給活動の継続を掲げる。
対する民主党は「緊密で対等な日米同盟関係」を公約に掲げる。鳩山代表は「対米依存型でなく、より自立を促す外交を作り上げていく必要がある。米国には安全保障について、適切な間合いを求めることもあり得る」と語る。
これまで国内で米兵犯罪が繰り返されても、運用の見直しにとどまっていた日米地位協定について「改定を提起」と盛り込んだ。自民党が日米合意通り「着実に実施」とする米軍再編も、「見直しの方向で臨む」とした。特に普天間飛行場については、沖縄県外への移設を求める考えだ。
また、政府が存在を否定してきた米国による核持ち込みなど、様々な対米「密約」についても調査する。「米国とアジアの両方を大切にする外交姿勢」(鳩山代表)をもとに、東アジア共同体の構築を目指すことも掲げた。
ただ民主党は、自衛隊のインド洋派遣に国会で反対したにもかかわらず、政権交代が現実味を帯びてきた最近になって、対米関係への配慮などから自衛隊の活動を当面は認める姿勢に転じた。
この点については、与党から「安全保障は国の最も大事な政策。これすらまとめ切れない政党に日本の安全保障は任せられない」(首相)という批判にさらされている。
■主張と現実の差、難題
北朝鮮の弾道ミサイルへの対応をめぐり、自民党が意図する集団的自衛権行使のための憲法解釈の見直しは、連立を組む公明党だけでなく自民党内にも異論がある。
さらに首相が言及した敵基地攻撃能力の保有も、党内に慎重論がある。中国や韓国などの反発も予想され、政権が続いたとしても、年末に改定予定の防衛計画大綱に盛り込まれるかどうかは微妙だ。
一方の民主党。「日米関係は、まずオバマ大統領との信頼関係を築くのが大切」(鳩山代表)と、米国の懸念を和らげることに力を注ぐ。
民主党が政権につけば、まず最大の外交行事となるのが11月に予定されるオバマ氏の初来日だ。「信頼関係」を優先させながら、公約した日米地位協定改定や米軍再編問題も持ち出せるのかどうか。
米軍再編は、現在の日米合意に基づけば、来春には普天間飛行場の代替施設の建設を始めなければならない。米国は合意実現を主張しており、民主党が掲げる沖縄県外への移転の道筋は見えない。
また、当面は認めた自衛隊のインド洋での補給活動も、来年1月までの期限が切れた後、それに代わる貢献策は具体的になっていない。「政権に入ってみないと具体的に言うのは難しい」(直嶋正行政調会長)と言うが、「考える時間」は限られている。
自衛隊を海外へ派遣できる基準も問題になりそうだ。小沢一郎代表代行の持論を踏まえ、公約の土台となる政策集には、国連の要請があれば軍事的措置にも参加できると明記した。これには鳩山代表はじめ党内に異論があり、公約そのものには盛られなかったが、政権に就けば国会で追及されたり、党内が混乱したりする場面もありそうだ。
鳩山氏は17日の党首討論会で「いま一番必要なのは、対話と協調によって世界の様々な脅威に答えを出すこと。いたずらに戦力的なものを高めることで解決を促すことではない」と主張した。
しかし、北朝鮮問題では公約で「貨物検査の実施を含め断固とした措置をとる」としている。貨物検査では、反撃された場合の武器使用などが議論される可能性もある。必ずしも、鳩山氏が言う「対話と協調」ばかりではない。
参院は民主党だけでは過半数に足りない。海外への自衛隊派遣に反対している社民党や、核密約調査に否定的な声もある国民新党と連立を組んだ場合、隔たりをどう埋めるのか。いまの主張を続けていけるのか、疑問符がつく。
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●総選挙後の主な外交日程
9月24日 国連総会で首相演説(米ニューヨーク)
24〜25日 G20金融サミット(米ピッツバーグ)
11月14〜15日 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(シンガポール)
中旬 オバマ米大統領、初来日