朝日新聞の慰安婦報道 第三者委初会合

 朝日新聞の慰安婦報道について検証する第三者委員会が9日、開かれました。初会合に先立ち、朝日新聞社の木村伊量(ただかず)社長が委員のみなさんに経緯を説明し、徹底した検証とそれを踏まえた提言を委嘱しました。


忌憚ない批判と提言を 朝日新聞社社長・木村伊量

 朝日新聞は8月5、6日付で特集「慰安婦問題を考える」を掲載しました。その中で韓国・済州島で慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の証言を虚偽と判断し、その証言に基づく記事を取り消しました。

 しかし、記事を取り消しながら謝罪の言葉がなかったことにご批判が集まりました。また、記事を取り消すまでになぜこれほどの時間がかかったのかについても、説明が足りないとご批判をいただきました。

 私は9月11日の記者会見で、これらの点について謝罪し、朝日新聞の慰安婦報道に関して検証する第三者委員会を設けることを明らかにしました。

 みなさまにはご多忙にもかかわらず、委員をお引き受け頂きまして誠にありがとうございます。朝日新聞社として委員のみなさまに検証していただきたいのは次の各点です。

 (1)吉田証言をはじめとする慰安婦に関する過去の記事の作成、今回の記事取り消しに至る経緯。とくに1997年3月に掲載した検証記事では吉田証言に関する記事の訂正・取り消しに至らず、その後、今回の取り消しまで長い時間がかかった理由
 (2)今年8月5、6日付朝刊に掲載した特集紙面「慰安婦問題を考える」の評価、および池上彰さんのコラム掲載をいったん見送った問題など、その後の対応
 (3)日韓関係をはじめ国際社会に対する慰安婦報道の影響
 (4)その他、上記に関連する事項

 委員会の調査には全面的に協力します。委員のみなさまには検証結果を踏まえて、いかなる前提もつけず、忌憚(きたん)のないご批判、ご意見、具体的なご提言を賜りたいと切望しております。中込秀樹委員長からは2カ月程度をめどに、ご提言をまとめていただくご意向とうかがっております。

 朝日新聞が信頼を取り戻し、ジャーナリズムとしての責務を今後も果たしていくためにも、厳しく、かつ前向きなご議論をしていただきたくお願い申し上げます。

 調査尽くし責務果たす 中込委員長のあいさつ


 この第三者委員会は朝日新聞の慰安婦報道に関して検証を行います。

 具体的には、吉田清治氏の証言内容を報じた記事が作成され、掲載された経緯▽その後の検証記事で吉田氏の証言が誤りだとはされず、本年8月5、6日に掲載された特集紙面「慰安婦問題どう伝えたか」で取り消されるまで長い期間を要した理由や経緯▽同特集紙面の評価▽池上彰氏のコラムがいったん掲載を見送られた経緯と、その後の対応▽日韓関係をはじめとする国際社会に対する慰安婦報道の影響▽これらに関する朝日新聞社の意思決定の経緯――など多面にわたります。

 こうした点を検証し、問題があれば指摘します。そして朝日新聞社がその問題にきちんと対処し、さらに同様の問題を今後発生させないようにするためには、社内の体制を含めてどう変革することが必要であるかを提言します。場合によっては、新聞社自身が解体して出直せ、ということにもなるかもしれません。

 今回の問題は世論から注目を集めています。委員会はできるだけ早く結果を示すことが社会的にも求められています。検証には少なくとも2カ月が必要ですが、一方で、それより長くかかっては社会的な要請に応えられません。委員のみなさま方にお諮りすることなく、報告書提出までとりあえず2カ月という期間を一応設けたのは、そのように考えたためです。

 期間内でできるだけ調査を尽くして、結論を出して、責務を果たそうと思います。

 なお本日の第1回委員会の冒頭部分は公開しましたが、これ以後の委員会の審議は非公開で行い、メディアのみなさまには報告書の公表に至るまで委員に対する取材はひかえていただくようお願いいたします。そうしていただかないと客観的で公正かつ冷静なご審議が期待できないと思うためです。ご協力をよろしくお願いいたします。

■委員のみなさん

 中込秀樹氏   元名古屋高裁長官、弁護士=委員長
 岡本行夫氏   外交評論家
 北岡伸一氏   国際大学学長
 田原総一朗氏  ジャーナリスト
 波多野澄雄氏  筑波大学名誉教授
 林香里氏    東京大学大学院情報学環教授
 保阪正康氏   ノンフィクション作家

(朝日新聞 2014年10月10日 朝刊7ページ 東京本社)