開催日 10月8日(水) 開催場所 朝日新聞大阪本社 参加者 読者モニター経験者4人の方々 西村陽一・取締役編集担当 杉浦信之・取締役(前編集担当) |
朝日新聞の記事についてご意見をいただく「読者モニター」を務めた方々にお集まりいただき、朝日新聞へのご意見やご提言をお願いしました。
まず、前編集担当の杉浦が慰安婦報道、池上彰氏連載の掲載見合わせ、吉田調書報道という一連の問題の経緯をご説明するとともに、謝罪をしました。続いて、編集担当で、「信頼回復と再生のための委員会」の委員長代理を務める西村が、委員会の取り組みなどについてご説明しました。
これを踏まえて、関西在住の読者モニター経験者の4人のみなさまに、いくつかのテーマについてお話をうかがいました。主なご発言は次の通りです。
【大阪府の60代男性】 池上さんコラムの問題は、クオリティーの高い新聞として、言いわけのしようがないことだと感じた。慰安婦報道と吉田調書の問題は、危機管理というか、無防備に出し過ぎたのではないか。結果的に慰安婦がなかったというようなことを主張するような人たちを勢いづかせているのが非常に心配だ。慰安婦の問題は、特に海外の反応とかも含めて引き続き報道していってほしい。
それと記事を取り消した吉田調書について。組織にあっては指示と命令というのは同じ。調書では、吉田さんは俺の指示したとおりやっていなかったと言っている。だったら、それは命令違反だ。だから私は「命令違反」という表現はおかしくないと思う。退避と撤退と二つの言葉を使い分けているが、そんなに差がある話なのかと受けとめた。これは、東京電力が明らかにすべきことではないだろうか。
【大阪府の20代男性】 慰安婦の件では、(朝日新聞の元記者が勤務する)大学が攻撃されているのが一番怖い。池上さんのコラムの問題については、意見を交換する場を潰してしまったのはもったいなかった。攻撃を受けないためには情報はどんどん出していったほうがいい。
吉田調書に関しては、「撤退」と「退避」という言葉は、私が言語の研究もしていたこともあり、ちょっと引っかかる。「退避」は危険回避で、また戻ってくるという意味がある。
慰安婦報道については、生き残っている方も少ないし、今後の検証が難しくなってくる。ただ、今、韓国との国交が悪化しており、河野談話の見直しの動きもある。見直したら溝が深まってしまうのではないかと思っている。
【兵庫県の50代女性】 新聞は、一番正確で公正で一番信頼のできるものと思っていたが、今回の記事取り消しによって、新聞が絶対正しいわけでもなかったんだと感じた。うのみにしてはいけないんだと思った。記事を取り消して謝罪するだけではなく、見直すと実際はこういう問題だと書き直すべきだ。
【京都府の20代男性】 ぜひ申し上げたいことが二つある。ひとつは、読者をもっと信頼していただきたいということだ。池上さんコラムの掲載を見合わされた際に、読者が混乱するんじゃないかということも配慮して掲載を見合わせたという説明だった。しかし、読者はもっとしたたかだ。掲載を見合わせるのは、馬鹿にされていると感じた。
モニターとして、2013年の自民党の憲法改正素案全ての条文について、チェックすべきだと意見を出したことがある。当時、憲法9条のみにスポットライトが当っていたのだが、国家緊急権の条文を読むと、独裁が可能なような危険な条文であると感じ、全ての条文をチェックしてほしいと意見を書いたが、結局その部分は記事にならなかった。そのときに感じたのが、読者にとってはわかりやすい記事をつくろうとするがために、世の中のちょっと複雑なことを単純化しているのではないかということだ。読者を信頼して、もっと深く掘り下げた記事を書いてほしい。
もうひとつは、社会のいろいろな立場にいる人、いろいろな人々のところに出向いていって生の声を取り上げてほしい。それは新聞記者にしかできないことだ。車座集会みたいなものを積極的に展開し、熟議デモクラシーのようなことを果たしてほしい。新聞記者というのが一般読者にとってすごく遠い存在で、一体何をしているのか見えない。印象だが、取材しやすいところを取材しているのではないか。例えば科学行政の記事が以前載ったが、偉い科学者の意見が中心に構成されていて、一番影響を受ける若手の研究者の声がなかった。
吉田調書の記事で一番問題視されるべきは、裏づけ取材の不足だ。もっといろいろ裏をとるべきだった。
【大阪府の60代男性】 個人的には社長が記者会見するほどのことではなかったのではないか。ただ、慰安婦報道と吉田調書のどちらの記者会見なのかがはっきりしなかった。
【大阪府の20代男性】 私も慰安婦報道と吉田調書の記者会見は分けてやったほうがよかったのではないかと思う。謝罪して、あとは忘れられないように、風化させないことが大切だ。池上さんのコラムについては、載せなかった理由が理解できなかった。わかりやすいので、載せるほうがよかったと思う。
【兵庫県の50代女性】 謝罪会見についての記事を紙面で読んだが、あまり謝っていると感じなかった。中身が多過ぎてちょっとわかりにくかったこともある。また、「皆様におわびいたします」などと書いてあったが、皆様って誰かと感じた。
【京都府の20代男性】 誰にでも間違えることはある。吉田調書報道についての経緯が詳細に分析され、反省されている記事が載っていたことについては誠実な対応だと肯定的に評価している。
【大阪府の60代男性】 昨日(10月7日)の国会論戦の記事が、今朝の朝刊できちんと取り上げられていなかった。原発の再稼働や女性の活躍についてなどの論戦が報じられていない。テレビニュースでは取り上げていた。新聞は読者の知りたいこと、あるいは読者に伝えないといけないことを記事にしてほしい。
【大阪府の20代男性】 新聞が速報性をテレビやネットと競っても、負けるに決まっている。新聞がグローバル化すると、読者が見たいことしか見なくなる。ハリウッド映画みたいにせず、芸術的でちょっと大衆受けしないが価値があるフランス映画のような存在であってほしい。
【兵庫県の50代女性】 新聞にはもっといろんな記事があっていいと思う。最近、ちょっと、夕刊がさみしいかなと思う。
【大阪府の60代男性】 夕刊のトップが街角記事になっている。違うのではないかと思う。ワイドショーではないのだから、伝えるべきことを伝えてほしい。読者に媚びた記事はいらない。
【兵庫県の50代女性】 中身も軽いというか、わざわざ新聞で読まなくてもいい記事がある。
【京都府の20代男性】 夕刊をやめようかと考えてもいる。広告とかで、実際には読めるところが少ない。読者目線を意識しているのだろうが、人の情に訴えるタイプの記事は大事ではあるのだろうが、多すぎるとどうか。例えば御嶽山噴火の報道でも、もっと問題提起をしてほしい。
【京都府の20代男性】 現場目線の記事を書いてほしいという意見を書いたときに、後からそういう趣旨の記事が出たことがあった。
【兵庫県の50代女性】 反映されているかどうかはわからないが、意見をていねいに聞いてくれているとは感じる。
【大阪府の20代男性】 モニターとして何度か意見を出しているが、中でも大学改革についてはぜひもっと記事でとりあげてほしい。
【大阪府の60代男性】 掲載された記事に対して、意見を書いているが、たとえば続報などの際に、モニターからこういう意見が寄せられてこの記事を出した、というような企画があっていいかもしれない。
【京都府の20代男性】 双方向の紙面は重要だと思う。紙面に、より色々な視点が入る。それがまた紙面につながれば、読者に耳を傾けるという企画になると思う。
【京都府の20代男性】 あえて言えば、読者にはわからないだろうという予見をもたれているような感じが記事から伝わってくることもある。やはり記者が遠い存在になっている。先ほども話したが、一般の方との車座集会的なものがあるといいのでは。
【大阪府の60代男性】 メディアは第4の権力である以上、それなりの誇りや矜持を持ってほしい。そういうことを求められてもいる。本質を見据えて取り組んでほしい。政権批判についても昔に比べれば弱腰になった。ジャーナリズムとしての役割を果たしてほしい。民主主義社会と平和を次世代にいかに伝えていくかということ。それが仕事ではないか。戦争中のことを反省して掲げた信念があるはず。それを誇りとして貫いてほしい。
【兵庫県の50代女性】 記者の方は、朝日新聞社員である前に、ジャーナリストを目指して入られたはず。何をする仕事なのかを忘れず、しっかりやっていただきたい。権力を監視する知識、気持ちを持った人が集まっているはずだから。
【京都府の20代男性】 人を見下したような記事はいやだが、ある意味、新聞は権力をしっかり批判しなければならない。むしろ、最近は取材源と距離が近すぎているようにみえる。情に流されない視点が必要だと思う。
【大阪府の20代男性】 朝日新聞は、「国益」のためにというようなこととは違う立場で書いてほしい。