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日中韓シンポジウム 紛争回避のため、対応は冷静に 民間の交流活性化を

2013年5月6日

 領土をめぐる争いや歴史認識問題で悪化する日中、日韓関係をどう打開するのか。日本、中国、韓国の研究者やジャーナリストらが参加して、国際シンポジウム「朴槿恵・習近平・安倍晋三政権の時代における3国の協力は?」が5月6日、ソウルで開かれた。紛争回避のための冷静な対応と、民間ルートでの交流活性化を求める意見が相次いだ。

 シンポジウムは、朝日新聞AJWフォーラム、東亜日報化汀平和財団、中国現代国際関係研究院が共催した。

 尖閣諸島や竹島をめぐる争い、日中韓の歴史認識問題などで関係が冷え込むなか、5月下旬にソウルで予定されていた日中韓首脳会談が先送りされるなど、3国の公的な対話ルートが狭まっている。シンポジウムは、知識人らが意見を交わす貴重な場となり、日中韓の歴史認識をめぐり活発な意見が交わされた。

村山談話や河野談話で認識共有

 三船恵美・駒澤大教授は、「日中韓が歴史観や歴史認識の『共有』を目指すのは、ハードルが高い。『相違点』を認識することから始めるべきだ」と述べた。

 これに対し、若宮啓文・日本国際交流センターシニアフェロー(朝日新聞前主筆)は、戦後50年の村山首相談話や、日本軍慰安婦に関する河野官房長官談話が、歴史認識共有のための枠組みになるとし、「ある程度、歴史認識を共有しなければ東アジアで未来を語れない」と主張。一方で、中国や韓国が、「村山談話や河野談話を変えるなと言うなら、それらの談話を出した日本のことをきちんと評価して欲しかった」と述べた。

 三船教授は、昨年の李明博・韓国大統領(当時)の竹島上陸を念頭に、「日中韓の政治家は国内向けの政治パフォーマンスや権力闘争を外交に持ち込むことは慎むべきだ」と提案した。これに対し、韓国の李信和・高麗大教授は「私は安倍首相こそが、反中カードを日本の政治の安定に使っていると考える。中韓は反日カードを使わない方がいいというのは、火に油を注ぐようなものだ」と反論。朴摧ΑΕ愁Ε訛膓擬も、「安倍首相こそが、民族主義、国粋主義を掲げ、世論を揺さぶり、周辺国との摩擦を引き起こしている」と批判した。

 河野談話の見直しなどが日本で論じられていることに関連し、中国現代国際関係研究院の馬俊威・日本研究所副所長が「中国や韓国と比べ、日本は歴史認識について国内の意見が一致していない。国会決議や政府声明でもう一度はっきりさせるべきだ」と述べた。韓国の朴教授は、「韓国と中国では、『親日』という言葉は禁句になっている。堂々と親日を名乗ることができるような環境をつくって欲しい」と語った。

 悪化している日中、日韓の関係改善のためにはどうしたらいいか。

 丹羽宇一郎・元中国大使は、早く年内に日中韓首脳会談を開き、首脳たちが「不戦の約束」をすることを提案。「時間が経てば経つほど交渉の入り口を開けるのが難しくなる。その結果、双方で合理的でない対応につながる恐れがある」と述べた。一方、中国の馬副所長は、「日本では対話をすること自体が大事かもしれないが、中国では、会談しても成果が出なければ、国内の世論を説得できない」と、早期開催に否定的な見方を示した。

文化交流や市場の連携

 韓国の徐鎮英・高麗大名誉教授も「政府はどうしても国民感情を意識するので、問題を解決しづらい」、と首脳会談など政府間での交渉は限界があるとの見方を示した。その上で「双方の民間協力を進め、国の行動を縛ればいい。政府と民間の『ツートラック・アプローチ』が必要」と提案した。

 民間交流については具体的な提案が相次いだ。朴教授は「日中韓の文化交流の、より一層の開放」を提唱。マスコミや学者を通じてではなく、文化交流により日中韓の人々が互いの生の声を直接、聞くことで、相互理解が深まるとした。

 日中韓の市場の連携に触れた劉軍紅・中国現代国際関係研究院グローバル化研究センター主任研究員は、「日中韓の共同の経済市場を建設する方向で話をすべきだ。時期尚早かもしれないが、3カ国の市場の成熟度が一定レベルになれば可能になる」と述べた。

 文化や経済の交流の大切さ、なかでも青少年の交流についての活発化については、多くの参加者の意見が一致した。(ソウル=福田直之、久土地亮)